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6年目を迎えたSkyDream Shonan Beach Loungeを平成最後の夏休みに体験!

昭和な海の家体験を塗り替える元祖IT海の家に行ってきた

2018年08月28日 10時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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 平成最後の夏休みの最後の日曜日、IT海の家としてすっかりおなじみになったセカンドファクトリーの「SkyDream Shonan Beach Lounge」にお邪魔した。プレミアムな食事、便利なキャッシュレス決済、洗練された店頭オペレーションなどなど、運営側のホスピタリティとそれを支えるITの可能性を感じることができた。

片瀬江ノ島にある「SkyDream Shonan Beach Lounge」

「IT海の家」だけど売りはITじゃなかった

 「海の家」と聞き、みなさんはどんなイメージを抱くだろうか? 木造のバラックに、砂がジャリジャリの畳敷きで、トイレもシャワーも汚い。カレーや焼きそばなどの食べ物は、レトルトにも関わらず高いし、パラソルや浮き輪を借りるだけで、お札はどんどん飛んでいく。もちろんクレジットカードなんて論外で、現金しか使えない。そんなイメージではないだろうか? 実際、この数年で訪れた海水浴場では、「観光地だから」という理由だけで高くて、イマイチなサービスを強いられる昭和な商売の風景があった。

 そんな海の家のイメージを大きく変えてくれるのが、IT企業のセカンドファクトリーがさまざまなパートナーとともに運営している江ノ島の「SkyDream Shonan Beach Lounge」だ。

カウンターだけ見ればいたって普通の海の家

 IT海の家としてすでに多くのメディアに取り上げられているSkyDream Shonan Beach Lounge。基本的には休憩スペースやシャワー、更衣室の提供、浮き輪やハンモックのレンタル、そして食事など普通の海の家としてのサービスを提供しているが、特徴的なのはまず食事が美味しいところだ。焼きそば、唐揚げ、カレー、ラーメン、丼モノなど、メニュー自体はありふれているのだが、厳選素材を用いており、ここでしか食べられないものも多い。

 取材時には徳島産のわかめサラダをいただいたのだが、近くの海からそのままもいできたのではないかという生食感に感動する。阿波金時豚のハム、ベーコンや八幡平ポークを使ったソーセージも、いかにもな人工的な調味が完全に排除されており、肉の味が伝わる。どちらもセカンドファクトリーが運営に関わる地域密着型飲食店舗のノウハウを活かした素材とメニューで、お客さんの胃袋をがっちりつかみに来ている感じ。昼時を外して取材すべく、ランチを食べて現地に赴いたのだが、もっと空腹で店に行くべきだったと後悔する。

わかめサラダを堪能中の記者。急速冷凍で実現した生食感に感動

 もちろん、飲み物やデザートも無添加素材のフルーツカクテルやコラボメニューなど数多く用意されており、毎日来ても飽きなそう。「シャワーや着替えはほかのお店でも、食べ物はうちまで食べに来られる方も多いんです」というセカンドファクトリー 大関興治社長のコメントには思わず納得だ。これだけでも、レガシーな海の家体験を大きく書き換えてくれると思う。

味も見た目も半端ないかき氷。いちごはともかく、でこぽんなんてこんなのできひんやん普通!

キャッシュレス、IoT、データ分析を現場で使える

 IT企業であるセカンドファクトリーがSkyDream Shonan Beach Loungeとなる海の家プロジェクトをスタートさせたのは、今から6年前。自社開発となるクラウド型のオーダーシステム「QOOpa」を用いた飲食店を自前で展開する手前で、期間限定でIT海の家を作ったのがきっかけだ。昨年、今年はビーチハッカソンなども実施したほか、取材日前日はライブや新宿さぼてんとのコラボも行なわれ、海の家のビジネスプラットフォームとしてすっかり定着した感がある。レノボや楽天などIT企業の海の家は一時期ブームとなったが、今も続いているのはSkyDream Shonan Beach Loungeくらいではないだろうか。

電源やWiFiも用意されているので、海を見ながら仕事もできる。パートナーや業界関係者も来店していた

 当初セカンドファクトリーだけでスタートしたプロジェクトだが、2年目以降からはさまざまなパートナーがスポンサーとして名乗りを上げ、最新ITの実験場となっている。もちろん、Wi-Fiは完備だし、過酷な温湿度の利用でも耐えうるハードウェアやセンサーなどのIoTデバイス、データ分析、キャッシュレス決済などを実現するさまざまなクラウドサービスがてんこ盛り。バックエンドのシステムも成熟しており、売り上げやオーダーの状況はスマホからリアルタイムに参照でき、閉店後の締め処理もボタン一発で終了するという。

 昨年、スタートしたのはテーブルにいながら、オーダーでき、そのまま決済まで実現するキャッシュレス決済だ。SkyDream Shonan Beach Loungeでは利用時に渡されるバンドや各席にQRコードが用意されており、スマートフォンで読み取る「注文」と「アンケート」のメニューに飛び、そのまま商品がオーダーできる。

セカンドファクトリー 代表取締役CEO 大関興治氏

 今年は決済プラットフォームとしてStripeを採用しており、クレジットカードを登録すれば、そのまま現金を出さずに決済まで済んでしまう。オーダーした商品ができたら、SMSでメッセージが送られてくるので、店頭で呼び出しを待つ必要もない。あまりにも簡単なので、どんどん頼んでしまいそう。実際、昨年2%だったキャッシュレス決済比率も、今年は若者を中心に10%にまで拡大したという。胃袋だけではなく、お財布もがっちりつかまれてしまったようだ。

QRコードでのジャンプした先のメニューはきわめてシンプル

商品ができたらSMSでメッセージが来る

 その他、忘れ物やゴミをチェックすべく、ロッカーにセンサーを設置したり、ウェアラブルセンサーでスタッフのストレスまで測るといった取り組みも実施。トイレやシャワー室にもセンサーを設置し、空き状況チェックや清掃タイミングの把握に使ったという。「最新の使い方は追っていない」と大関氏は語るが、6年目なだけにITの使い方も現場にあわせて洗練されていると感じられた。

ロッカーに設置されたセンサーは忘れ物をチェックできる

台風がなければ今年の売り上げは過去最高だった

 SkyDream Shonan Beach Loungeで面白いのは、とにかく運営が本気なこと。IT企業が片手間で始めた「なんちゃって海の家」ではないのだ。大関氏や今年現場を任された千葉隆一氏も、スタッフとともに積極的に店頭に立ち、店舗のオペレーションを日々体験している。

現場を切り盛りする千葉隆一氏も、すっかり黒くなり、スタッフに溶け込んでいた

 大関氏も千葉氏も、台風が来たら悔しがり、がんばっているスタッフをSNS上でつねに讃え続ける。運営側と現場ではなく、あくまで1つのチームとして接客やサービスを日々改善し、売り上げの拡大を目指しているわけだ。「台風で数百万円の欠損金額が出るとAIに予想されたんです。台風がなければ、過去最高の売り上げだったのに(笑)」と悔しそうに語る大関氏は、IT企業の社長と言うより、完全に飲食店のオーナーに見える(実際、そうなのだが)。

スマホチェックする大関氏を隠し撮り。SNSに積極的に投稿したり、来客したパートナーと話したり、ずっと忙しそうだった

 ここまでガチ経営しているSkyDream Shonan Beach LoungeにおけるITは、顧客と従業員の満足度を向上するための縁の下の力持ち的な存在と言える。顧客満足度のため、トイレやシャワー室がきれいなのは当たり前。その上で美味しい食事、キャッシュレス決済などの付加価値を提供しつつ、多忙な店舗オペレーションの手間を徹底的に省いていく。一見不可能に思えるこの2つの満足度を同時に向上させる魔法がまさにITの真骨頂だ。「本来は10人必要なのに、うちなら7人で済む。この人数でこれだけのオーダーをさばけるのはすごい。スタッフも『うちの厨房は楽』と言ってくれている」と大関氏は語る。

 海水浴の町で10代を過ごしてきた育った記者が持つ昭和な海の家のイメージを変えてくれたSkyDream Shonan Beach Lounge。長年の苦労あってか、きちんと案件にもつながっているとのことで、今後こうした新しい体験がどんどん増えてくればいいなと思う。少なくとも来年はもう少しお腹を減らして行くことにする。

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