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CES 2016レポート 第2回

CES Unveiled速報:CES2016

Cerevoが攻めまくり、ホームロボや3Dプリントのスマート自転車

2016年01月05日 18時13分更新

文● イトー / Tamotsu Ito/大江戸スタートアップ

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 アメリカのネバダ州ラスベガスで年始に開催される世界最大級のイベントCES 2016が1月6日(現地時間)、開幕する。例年、前夜祭的な除幕イベント”CES Unveiled”で実質始まるのだが、今年は昨年以上に注目プロダクトが多数あった印象だ。まずは、日本の家電ベンチャーCerevoのブッ飛んだプロダクトから。

 昨年のこの場でセンサー内蔵スノーボードバインディング「XON Snow1」を発表したCerevoだが、今年は自走式のロボットプロジェクター「Tipron」(ティプロン)と3Dプリントで作られ各種センサーでIoT化されたレース用自転車「ORBITREC」(オービトレック)を発表。前夜祭会場で注目を集めている。
 それぞれ2016年中の発売を予定していて、後者は2016年春に発売開始予定だ。 

■トランスフォーム!変形するプロジェクターロボ「Tipron」

全高は800mm。変形後の状態ではスタンド付きのブックシェルフスピーカー程度の高さがある。

変形するとアームが前屈して……

プロジェクターのレンズも隠れて、ロボットにも見えない不思議な存在になる。充電ステーションではこの状態で充電されるらしい。

「Tipron」(ティプロン)は台座部分にロボット掃除機のような車輪を搭載。内蔵のセンサーを使って室内での自分の位置を認識し、指定した場所に自走して前後左右あらゆる場所をスクリーンにしてしまうホームロボット・プロジェクターだ。"必要な時・必要な場所に勝手に出てきて、用が済んだら充電ステーションに戻って存在感を消す"という新しい使い方を提案する。

 プロジェクターとしての性能は、最新のDLP方式を採用するAndroid対応720p解像度。外部入力にはHDMIを採用している。専用アプリで手元(スマホ)からの動き制御のほか、リモート操作で本体正面のカメラの映像も見られる。

 変形機構はプロジェクターを内蔵するアーム部分に入っていて、移動時や収納時はアームを折りたたんで全高が低くなる。変形機構の搭載は、移動時に倒れないようにするためなどの実用的な意味あいもありつつも「ロボットいえば変形だろう!と」(Cerevo代表 岩佐氏)という"思い入れ実装"でもあるらしい。 

Tipronのアプリ画面。室内の移動配置や移動ルートを記憶させることができる。

アームの高さ調整、投影部分の上下左右回転のほか、投影画面自体をスイベル回転させて縦長投影もできる。

 Tipronの自己位置認識は、車輪の回転数からの推定に加えて、テキサスインスツルメンツ(TI)のSLAM(自己位置推定)モジュールによる3D空間認識を組み合わせたもの。

 発売は2016年春〜夏ごろを想定。販売価格やその他のビジネスモデルは検討中ながら、10〜20万円程度をターゲットにしているという。

 Tipronの最終組み立ては大手EMS(Electronics Manufacturing Service=電子機器受託生産)工場のFoxconnが担当する。Cerevoの生産規模でFoxconnのような最大手EMSが関わるのはかなりの異例。

■世界初!3DプリントでフルオーダーするIoTロードレーサー「ORBITREC」

広報画像ではフレームも青く光るように見えるが、実機ではフレームに内蔵したセンサーユニットのみが光るようになっていた。

 2015年4月にDMM.makeとデザイナー柳澤郷司氏のTriple Bottom Lineがミラノサローネで共同発表した、3Dプリント自転車「DFM01」。このプロダクトをCerevoが引き取り、各種センサーを埋め込んだスマート自転車として市販化するのが「ORBITREC」(オービトレック)だ。

 Orbitrekは2015のCES Innovation Awardを受賞が決定している。Cerevo製品では昨年のライブ放送スイッチャー「LiveWedge」に引き続き、2年連続の受賞。 
 2016年春の発売を予定し、発表によれば価格は7000ドル以下、最短納期1ヵ月以内。

 DFM01と同様に、チタン素材で3Dプリントされるのはフレームの接合部。パイプ部分はカーボンを使うことで1100gの軽量さを実現している。購入者の手足の長さを計測して出力するフルオーダー製作に対応し、納期は1〜2ヵ月程度。Cerevoによると通常の手作業によるフルオーダーフレームは半年~1年かかることもあるとのことで、CADデータからそのまま出力できるメリットを生かしたフレームに成っている。すでにツールド東北での200km走破の実走もしていて、強度に問題がないことは確認済みという。

 Cerevo独自のプラスアルファの要素となるのが、前側フレームに搭載される各種センサーだ。
加速度、角速度、地磁気の9軸センサーに加え、気圧や気温、湿度、GPSといった8種類のセンサーを詰め込んで、緻密なサイクルログを記録できるようにした。傾きや衝撃などのフレームの状態も取得できる。

 このほか、自転車用のケイデンス(ペダルを漕ぐ速さ)センサーなどのデータを相互通信するサイクルコンピュータ向けの通信規格「ANT+」にも対応しており、後付けしたセンサーの情報も受け取れる。計測したデータはBLEやWiFiを通じてライダーが携行するスマートフォンなど同期する仕組みだ。SIMスロットは搭載していない。 

ORBITRECのセンサーユニット部分。フロントのフレーム部分に埋め込まれる形で実装されている。

製品版でもユニットは単体で取り外し可能になる見込み。

自転車のクランクが入る部分の3Dプリントパーツ。素材は樹脂ではなくチタン。フレームのパイプ部分はカーボン素材になっている。

ORBITRECのアプリ画面。ログを記録する以外にリアルタイムのセンサー情報も表示できる。

 Cerevoの”スマートバイク”のコンセプトを「センサーをとにかく詰め込んでみたら、自転車ファンのライディング、サイクリングがもっと楽しく安全になるんじゃないか」(岩佐氏)と語っている。
 ORBITRECはログデータをクラウド側で統合分析することで、ビッグデータ解析による危険予知などの通知をライダーのスマホに送る仕組みも用意している。たとえば、自車位置の少し先で多くの車両が止まったり微速走行になっていれば「路面工事や何らかのトラブルがあった」と推測できる。自車がそこに差し掛かる前に、専用アプリを通じてアラートを出すようなイメージだ。 

 搭載するセンサー系がCerevoのIoTプロトタイピングボード「BlueNinja」に似ているが、基板は専用におこしていてBlueNinjaとは別物とのこと。
 なお、既存のロードレーサーにORBITRECとほぼ同じ機能を後付けできるユニット「RIDE-1」も併せて発売する。こちらは300ドル以下を予定。

単体発売されるセンサーユニット「RIDE-1」のCADイメージ。展示時点では、ドリンクホルダー用のステーに共締めして利用する形になっている。内蔵するセンサーやWiFi、BLE搭載はORBITRECと共通だが、フレームの歪みセンサーはORBITRECのみに搭載される。

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