2050年の地球の問題に、NECはどう取り組むか
遠藤社長は、これからの35年後の2050年の地球が大きな問題を抱えていることを指摘する。
世界人口は90億人を突破。それにより、エネルギー需要は現在の1.8倍必要となり、食糧需要が1.7倍、水需要が1.6倍になる一方で、温室効果ガスは1.5倍になるという。とくに都市部の人口は、現在の35億人から63億人と1.8倍に拡大。世界全体の人口は1.3倍の増加だが、都市人口の拡大が様々な課題を引き起こすと指摘する。
「このままでいけば、わずか35年間で、地球がもうひとつ必要なほどの資源が求められることになる。限りある資源を生かすには、効率的なインフラを活用しなくてはならない。一方で少子化が進む日本は、現在の60%の人口で、経済活動や社会生活を支えることができる効率的なインフラが求められている。そこに我々のICTがどう貢献できるかが鍵となる」と語る。
NECでは、社会価値創造のテーマとして、
- 地球との共生を目指す「Sustainable Earth」
- 安全・安心な都市を行政基盤を作る「Safer Cities & Public Services」
- 安全・高効率なライフラインを実現する「Lifeline Infrastructure」
- 豊かな社会を支える「Communication」
- 産業とICTが新結合する「Industry Eco-System」
- 枠を超えた多様な働き方を創造する「Work Style」
- 個々人が躍動する公平な社会を実現する「Quality of Life」
の7つを掲げており、その上で、「安全」「安心」「効率」「公平」という価値が実現された社会を目指す方針を示している。
「1899年の創業以来、数々の日本初や世界初の技術革新やイノベーションの歴史を積み重ねてきたNECが、最先端のネットワーク技術や高性能・高信頼なコンピューティング技術、先進的なセンサー技術、高度なデータ解析技術などを活用。これに製品、システム、ICTサービス、知見、アイデアを融合して新たなサービスを創造し、磨き上げた高いインテグレーション力を提供。そこに知見を融合することで、新興国での人口爆発や先進国での少子高齢化、エネルギーや食糧、水などの資源問題、気候変動などに伴う自然災害の激甚化、都市人口の増大や地域格差の拡大、日々の暮らしを脅かすテロやサイバー犯罪の増加といった地球規模の多くの課題を解決し、安全、安心、効率、公平な社会を実現していく。それによって、世界の国々や地域の人々と協奏しながら、明るく希望に満ちた暮らしと社会を実現し、未来につなげていく」
それが、NECの社会ソリューション事業であり、「Orchestrating a brighter world」というメッセージに込めた思いというわけだ。
現在、NECのコーポレートロゴには、Empowered by Innovationというタグラインが記されているが、同社の経営トップから、最近、この言葉が聞かれることはない。むしろ、社会ソリューション事業のメッセージとする「Orchestrating a brighter world」が、今後のコーポレートメッセージへと昇格していく可能性もありそうだ。
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