myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第26回
東方Projectはニコニコ動画での再生数24億、pixivでは2番目の大規模タグ
10年を超えた東方人気をニコ動とpixivのデータで確認!
2014年05月22日 18時00分更新
pixiv第二の規模のタグ「東方」
東方Projectの二次創作活動はpixivにおいても非常に盛んで、「東方」タグはpixivでも「オリジナル」タグに次いで2番目にイラストの多いタグです。これまでに約11万4000名の投稿者によって約162万件以上のイラストが投稿されています。
なお東方関連のイラストはpixivでは「東方」、まれに「東方Project」のタグで投稿されており、最近は「東方Project」での投稿が若干増えているため、今回はこのいずれかを含むイラストを調査対象としています。
東方のイラストはpixivが公開された2007年9月当初からよく投稿されており、2008年頃から急速に増加、第7回博麗神社例大祭が開催された2010年3月には約3万件が投稿、この2010年から2011年頃に投稿数がピークに達します。
その後2012年から2013年前半は投稿数はやや減少、2013年9月以降は急激に投稿数が減り、現在は月に1万6000前後が投稿されています。閲覧数の中央値は423、評価点中央値は130。1万閲覧以上が5%ほどです。
ちなみにちょうどこの2013年8月・9月頃から艦隊これくしょんのイラストの投稿がpixivで急増しています。もともと東方イラストの投稿数が減少気味だったこと、8月にコミケがありその翌月の9月は例年減少することなどの要素もありますが、後述のとおり東方と艦これでは作者の性別・年齢等も類似しており、やはり艦これ人気によって東方のイラスト・漫画が描かれなくなった、というよく言われる見解はある程度事実と思われます。
こうしたpixivでの東方のイラスト投稿者は6割が男性です。投稿者の7割が性別の情報を公開、3割が性別と年齢の両方を公開しています。両方を公開しているユーザー約3万3700名について見てみると、20代前半の男性の投稿者が多く、以下上下の年代に向かってなだらかな山を作っています。女性の投稿者についても20代前後が多いです。
第24回の艦これの同様のグラフと比較すると、2歳ほど上側にずれている他はよく似ていることが分かります。東方のイラストも主に男性で20代の若者を中心に広い世代で描かれているようです。
霊夢、魔理沙、チルノ、レミリア、フランドールが5強
東方のキャラ人気は保守性と裾野の広さが特徴
グラフ6では東方のイラストのなかで投稿数の多いキャラクターを並べてみました。こうしてみると分かりますが、艦これやカゲプロなどと比べて、東方のキャラクター人気はそれほど目まぐるしく変わってはいません。
現在の東方ブームは最初のWindows版である2002年頒布の「東方紅魔郷」がきっかけとなっていますが、その自機キャラで東方シリーズに継続して登場する博麗霊夢と霧雨魔理沙、2面ボスで2008年頃からニコ動などで独特の人気が盛り上がったチルノ、およびレミリア、フランドールらの東方紅魔郷のボスキャラがこの7年間を通じて継続して上位にいます。このうち、フランドールとルーミアについては年々投稿の比率が高くなっており、人気が高まっていったキャラクターと言えるでしょう。
それ以外では「東方妖々夢」の魂魄妖夢は初期から人気があります。また「東方風神録」の東風谷早苗は2009年に「東方星蓮船」で自機キャラとなったきっかけで投稿数が急増しました。「東方地霊殿」ボスで関連ゲームの「東方心綺楼」にも参戦の古明地こいしも年々投稿数を増しています。
pixivがスタートした2007年9月にはすでに「東方風神録」までの作品が発表されていますので、2014年1-5月のトップ20のうち「古明地こいし」以外のキャラクターは当時すでに登場していました。その後に多数のキャラクターが増えていくなかでも、初期作品のキャラクターが継続して人気が高いのは、ある面で東方のキャラクター人気の保守性が伺われます。あるいは、人気の高いキャラクターが関連作品でも再度登場しやすい同人的なフィードバックもあり、新しいキャラクターが描かれにくいという部分でもあるのかもしれません。
もっともキャラ人気自体は多様で、最も比率の高い2007年頃の魔理沙でも東方イラストの1割に満たない程度しか描かれていませんでした。東方は規模が大きいため、こうしたリストに上がってこないキャラクターについても多数のクリエイターがイラストを描いています。主要部分の保守性と裾野の広さが東方のキャラクター人気の特徴でもあるでしょう。
以下のグラフ7にpixivの東方イラストのR-18・漫画タグの比率の推移を示しました。
東方イラストはpixiv初期からR-18タグの比率は小さく、2008年頃は4%近くまで落ちていました。その後年々R-18の比率は高くなっており、現在は8%ほどがR-18イラストとなっています。この点、初期に非常に高かった艦これのR-18イラストが比率を落としていったのと対照的となっています。現在の両群のR-18イラストの比率はいずれも8%前後と同程度です。
漫画タグは初期は少ないですが、これは2009年9月にマンガ投稿・マンガビューア機能が実装されて以降、マンガ投稿機能を使うと自動的に「漫画」タグが付くようになったため(タグ自体はこの機能を使わない1ページものの漫画にも付けられている)。実装後の2010年に4%、以降漫画タグの比率は増加し、現在は約6%の新規投稿される東方イラストにこのタグが付いています。これも現在は艦これと同程度です。
2004年4月に開催された「第一回博麗神社例大祭」から10年が経ちました。この間、東方は同人誌即売会のなかで有力な二次創作ジャンルに成長、やがてニコニコ動画やpixivの登場と関連してさらに成長し、ニコ動では御三家、pixivでも有数のタグとなっています。
その一方で投稿数は2010年頃にはピークに達して減少、クリエイター層の類似した艦隊これくしょんの人気の加熱とともに2013年から投稿数を大きく落としています「博麗神社例大祭」でも今回初めて参加サークル数が前回を下回りました。
ジャンル人気の移り変わりを感じますが、この10年ものあいだ拡大を続け、コミックマーケットやニコ動、pixivなどで有数のジャンルであり続けたこと自体が歴史的な存在であると言えるでしょう。東方によって切り開かれた東方アレンジやさまざまなグッズ製作、東方手書き劇場のような創作の広がりは、良くも悪くも艦これをはじめとしたさまざまなジャンルに引き継がれていっています。
現在でもpixivの東方イラストの投稿規模は二次創作イラストのなかでは艦隊これくしょんと並び最大です。来年、さ来年と例大祭は開催され、新作も出るでしょう。東方は今後やや規模を落としながらも続いていくと思われます。10年続いた東方人気、もう10年も続くのではないでしょうか。
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