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ノーク伊嶋のIT商材品評会 第3回

強力な営業/サポート力を生かし、“頼れる”クラウドサービスへ

「たよれーる」で狙う実質的なクラウドでの勝負、大塚商会

2013年10月30日 08時00分更新

文● 伊嶋謙二(ノークリサーチ シニアアナリスト)

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「たよれーるMNS」はクラウドサービスなのか?

 上図にあるとおり、具体的には「ハードウェア・ソフトウェア保守」「テレフォンサポート」「業務支援サービス」「アウトソーシングサービス」がたよれーるに該当する。たとえばMFPの保守、「マネージドネットワークサービス」(MFP以外の機器の保守からITシステムそのものの保守、そしてデータセンター事業も含めたITインフラの提供/運用/管理)、給与明細配信/給与振込代行、振込代行サービスなどの業務支援、さらには基幹業務システム「SMILE」などのソフトウェアの保守、eラーニング、企業研修などの教育サービス、自治体向け、学校向けのソリューション、「たよれーる Office 365」のような他社との連携商品など、非常に多岐にわたっている。

 さて、今回の主役である「たよれーるMNS(マネージドネットワークサービス)」であるが、サービス立ち上げの経緯を担当者から取材してまとめると次のようになる。

 「『たよれーるMNS』の構想は4年前の2009年だ。市場はリーマンショック(2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻)により、ユーザーの多くが、ITコスト削減のために機器の保守サービス契約をやめてしまった。たとえばサーバーの多くは、大塚商会のサービスメニューに加入してもらっていたが、サーバーメーカーが提供する保守パックなどへ切り替えたり、保守サービスそのものをやめてしまったりするケースが見られた。そこで大塚商会では、回線を含めた対象の拡大、サービス内容の見直しと改善、価格の見直しを含めた改革を行い、ユーザーにとって魅力のあるメニューを構築した」

 これが、たよれーるMNS事業立ち上げのきっかけだった。他社が提供するクラウドサービス、SaaSやデータセンターサービスとはかなり位相の異なるものであることが見て取れる。

 2009年の立ち上げ以降、たよれーるMNSではユーザーニーズとシーズとを勘案し、サービスライン各種を付加しながら充実を図ってきた。何を充実させるかのポイントは、同社の実際の営業活動、提案活動から選定されているので、ユーザーニーズと合致する確率は高くなる。

 まず、サーバーやネットワークについては、元々あった電話/訪問による機器サポートに加えて、リモートサポートにも対応した。ユーザーからの連絡を受ける前に障害を検知することができるようになり、逆に大塚商会からエンドユーザーに連絡することも可能になった。

 さらにデータセンターを活用して、機器の管理だけでなく設定情報やデータのバックアップサービス、HaaS、IaaSまで幅広いITサービスを提供するようになっている。細かなサービスは別表を参照されたい。

「たよれーるMNS」の商品一覧。ユーザー企業のニーズに応じて幅広いラインアップ

 このように、たよれーるMNSは多数のサービス/商品をラインアップしているが、筆者の推定ではたよれーる全体の売上(約950億円)に占める割合はまだまだ小さいものと見られる。それでも、たよれーるMNSの契約企業数は数万件以上になっていると推定され、ストック型であることに加え、企業数が多ければ同社得意のアップセル、クロスセルにおける大きな武器となるのは言うまでもない。

 大塚商会によれば、たよれーるMNSの個別サービスの中で、ここ最近で評価が高いのはパブリックデータセンターサービスである「どこでもキャビネット」、プライベートデータセンターサービスである「2Uハウジングサービス」とのことだ。

 「どこでもキャビネット」は、スマートデバイスを含むあらゆる機器からデータにアクセスすることができ、編集も可能なサービスである。スマートデバイスの普及により、今後も利用拡大が見込まれる。

 具体的な事例は同社のWebに多数掲載されているが、中でも羽田空港(日本空港ビルデング)の事例はタイムリ―だ。空港内の情報共有システムを構築するために、どこでもキャビネットを中核としてクラウド上でデータ保有/共有を行い、アプリケーション開発はサイボウズのPaaS「kintone」で、またモバイルデバイスには「iPad」を活用するというケースだ。これまで膨大な紙書類で処理してきた業務情報を、クラウド上の電子情報として共有し、リアルタイムに処理できる。最新のIT要素を盛り込んだ、効果のわかりやすい事例と言えるだろう。

■大塚商会:日本空港ビルデング株式会社 導入事例
http://www.otsuka-shokai.co.jp/products/case/tokyoairport-bldg.html

 2Uハウジングサービスは、共有ラックをサーバ1台から、もしくは仮想化されたゲストOS1台から利用できるサービス。安心なデータセンターが安価に活用できるため、大企業だけでなく中堅・中小企業にも人気のサービスだ。なお、契約形態は購入&ハウジングでもレンタルでも可能であり、ユーザーのニーズに幅広く対応する。さらにはDRサービスとして、首都圏から約800キロ離れた石狩データセンターへのデータバックアップもできる。同社が提供する基幹業務システム「SMILE」シリーズの導入時に、このサービスが活用されるケースが増えているという。

(→次ページ、大塚商会の“実質的な”クラウドサービスの強み)

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