「たよれーるMNS」はクラウドサービスなのか?
上図にあるとおり、具体的には「ハードウェア・ソフトウェア保守」「テレフォンサポート」「業務支援サービス」「アウトソーシングサービス」がたよれーるに該当する。たとえばMFPの保守、「マネージドネットワークサービス」(MFP以外の機器の保守からITシステムそのものの保守、そしてデータセンター事業も含めたITインフラの提供/運用/管理)、給与明細配信/給与振込代行、振込代行サービスなどの業務支援、さらには基幹業務システム「SMILE」などのソフトウェアの保守、eラーニング、企業研修などの教育サービス、自治体向け、学校向けのソリューション、「たよれーる Office 365」のような他社との連携商品など、非常に多岐にわたっている。
さて、今回の主役である「たよれーるMNS(マネージドネットワークサービス)」であるが、サービス立ち上げの経緯を担当者から取材してまとめると次のようになる。
「『たよれーるMNS』の構想は4年前の2009年だ。市場はリーマンショック(2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻)により、ユーザーの多くが、ITコスト削減のために機器の保守サービス契約をやめてしまった。たとえばサーバーの多くは、大塚商会のサービスメニューに加入してもらっていたが、サーバーメーカーが提供する保守パックなどへ切り替えたり、保守サービスそのものをやめてしまったりするケースが見られた。そこで大塚商会では、回線を含めた対象の拡大、サービス内容の見直しと改善、価格の見直しを含めた改革を行い、ユーザーにとって魅力のあるメニューを構築した」
これが、たよれーるMNS事業立ち上げのきっかけだった。他社が提供するクラウドサービス、SaaSやデータセンターサービスとはかなり位相の異なるものであることが見て取れる。
2009年の立ち上げ以降、たよれーるMNSではユーザーニーズとシーズとを勘案し、サービスライン各種を付加しながら充実を図ってきた。何を充実させるかのポイントは、同社の実際の営業活動、提案活動から選定されているので、ユーザーニーズと合致する確率は高くなる。
まず、サーバーやネットワークについては、元々あった電話/訪問による機器サポートに加えて、リモートサポートにも対応した。ユーザーからの連絡を受ける前に障害を検知することができるようになり、逆に大塚商会からエンドユーザーに連絡することも可能になった。
さらにデータセンターを活用して、機器の管理だけでなく設定情報やデータのバックアップサービス、HaaS、IaaSまで幅広いITサービスを提供するようになっている。細かなサービスは別表を参照されたい。
このように、たよれーるMNSは多数のサービス/商品をラインアップしているが、筆者の推定ではたよれーる全体の売上(約950億円)に占める割合はまだまだ小さいものと見られる。それでも、たよれーるMNSの契約企業数は数万件以上になっていると推定され、ストック型であることに加え、企業数が多ければ同社得意のアップセル、クロスセルにおける大きな武器となるのは言うまでもない。
大塚商会によれば、たよれーるMNSの個別サービスの中で、ここ最近で評価が高いのはパブリックデータセンターサービスである「どこでもキャビネット」、プライベートデータセンターサービスである「2Uハウジングサービス」とのことだ。
「どこでもキャビネット」は、スマートデバイスを含むあらゆる機器からデータにアクセスすることができ、編集も可能なサービスである。スマートデバイスの普及により、今後も利用拡大が見込まれる。
具体的な事例は同社のWebに多数掲載されているが、中でも羽田空港(日本空港ビルデング)の事例はタイムリ―だ。空港内の情報共有システムを構築するために、どこでもキャビネットを中核としてクラウド上でデータ保有/共有を行い、アプリケーション開発はサイボウズのPaaS「kintone」で、またモバイルデバイスには「iPad」を活用するというケースだ。これまで膨大な紙書類で処理してきた業務情報を、クラウド上の電子情報として共有し、リアルタイムに処理できる。最新のIT要素を盛り込んだ、効果のわかりやすい事例と言えるだろう。
■大塚商会:日本空港ビルデング株式会社 導入事例
http://www.otsuka-shokai.co.jp/products/case/tokyoairport-bldg.html
2Uハウジングサービスは、共有ラックをサーバ1台から、もしくは仮想化されたゲストOS1台から利用できるサービス。安心なデータセンターが安価に活用できるため、大企業だけでなく中堅・中小企業にも人気のサービスだ。なお、契約形態は購入&ハウジングでもレンタルでも可能であり、ユーザーのニーズに幅広く対応する。さらにはDRサービスとして、首都圏から約800キロ離れた石狩データセンターへのデータバックアップもできる。同社が提供する基幹業務システム「SMILE」シリーズの導入時に、このサービスが活用されるケースが増えているという。
(→次ページ、大塚商会の“実質的な”クラウドサービスの強み)
この連載の記事
-
第9回
ビジネス
スマイルワークス「ClearWorks」が描く中小企業のクラウドの世界 -
第8回
ビジネス
圧倒的に便利で安い!クラウド会計ソフト freeeが目指す高みとは? -
第7回
ビジネス
情シス仕事を肩代わり!NTT東日本の「オフィスまるごとサポート」 -
第6回
ビジネス
ソフトバンクテレコムの「かんたんオフィス」はなにがかんたん? -
第5回
ビジネス
アナログな中小企業攻略が新鮮なKDDIまとめてオフィス -
第4回
ビジネス
サポートやPBXの実績を元に中小企業を攻めるNTT Com -
第2回
ビジネス
中堅・中小企業需要を狙う富士通マーケティング「AZSERVICE」 -
第1回
ビジネス
NECが満を持して投入したSMB向けクラウド「N-town」 -
ビジネス
ノーク伊嶋のIT商材品評会 - この連載の一覧へ