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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第132回

ハープ業界の今を知り、今後を占うHandy Harp

20年前の紙を基に作られたiPadアプリは革命を起こせるか

2013年10月27日 12時00分更新

文● 四本淑三

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このアプリが架け橋になれば

―― 朝川さんはいつ頃ハープを始められたんですか?

朝川 4歳の頃にエレクトーンを始めて、それからずっとピアノを弾いていたんですが、ハープを始めたのは26歳からです。だからすごく遅いです。

―― それはオケで演奏するためにですか?

朝川 いいえ、オーケストラで弾いたことはないです。学歴がないからまず呼ばれることはありません。

注: 朝川さんは東京藝術大学作曲科卒、別科オルガン専修を首席で卒業。Wikipediaで「ハープ」の項目を引くと堂々「現代の著名なハープ奏者」に名を連ねている。

佐野 えええー!

光田 それホントなんですか?

朝川 受賞歴もないし。そのどっちかがないと、指揮者に失礼なわけですよね。もし気に入っていただけず「あいつは誰だ?」と言われたときに、どこかの作曲出だということになると「えっ、ハープ科出ていないの?」ということになるんです。

―― めんどうくさい世界ですねえ。

朝川 アマオケには何度も呼ばれて行っています。レコーディングだけのスペシャルなオケとか。あとは指揮者から呼ばれたときは行きましたけど、オーケストラから直に呼ばれた仕事はないです。だからもう叩き上げですよ。

佐野 一般的にハーピストの方というのは、コードネームを言われて弾くことはできないんですよね。朝川さんはそれができるから仕事があるんじゃないですか?

朝川 ええ、そうですね。クラシックの方はコードネームは知らないんです。音大ではやらないですから。

光田 最近よくゲーム音楽のコンサートをやるんですけど、渡した譜面にコードネームが書いてあると「何ですかこれ?」って言われちゃう。

佐野 だからHandy Harpはコードネームが入るんですよ。

あらかじめ登録されている540個のコードネーム、336種のスケールのペダル設定を瞬時に表示する

朝川 クラシックをやっている人、特にハーピストはそうなんですけど、コードネームは避けて通れなくなっていますよね。すごく気になっていると思います。

―― だってハープから出る音って、結局コードですもんね。

朝川 そうなんですよ、ハープはコード楽器なんだからコードネームを知らなきゃならないんです。だから、このアプリがその架け橋になれば。

 まさしく必要は発明の母。まったくのノーマーケティングで登場したHandy Harpは、ハープ業界にとって確かに革命的なことかもしれない。すでに作曲家としての光田さんにとって、このアプリは必要不可欠なものになっているようだ。Sibelius、Finaleのようなスコアリングソフトにペダル記号を転送する機能もあるので、朝川さんのようなハープ奏者にも便利な機能に使える。

 しかし私のように、その仕組すらまったく知らない、ただのリスナーにとっては、何よりハープを身近に感じられるようになったことが大きい。次にコンサートに行ったらオケの左手にいるハープ奏者が何をしているのか、ちょっと注目してしまいそうな気がする。

取材後は一転して、朝川さんの心が洗われるような生演奏と共に番組スタート。佐野さんのMCもこうだ

「今宵、皆様如何お過ごしでしょうか。電磁マシマシでございます。本日も素晴らしいハープの調べとともに、ここ九段下のCBCスタジオからお送りします……」 。そして、朝川さんのお父様がEF58形電気機関車の開発に関わられていたこと、若い頃はゲーセンでバイトしていたことなど、あらゆる所に話題の引き出しを持つ朝川さんの奇想天外なトークで土曜の夜は更けていったのでした(写真はCBC中部日本放送東京支社外観)

 CBCラジオ×U-strip夜用スーパー『電磁マシマシ』は毎週土曜21:00からスタート!
http://www.ustream.tv/channel/u-strip



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター、武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。インターネットやデジタル・テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレ。


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