インターフェースアップデートの最後はThunderboltをお届けしよう。Thunderbolt 2のアナウンスがすでにあり、また拡張カードの話もちらほら聞こえてくる。そこで、Thunderboltの現状をまとめて説明しよう。
そもそもThunderboltが登場したのは2011年2月のこと。アップルが発表したMacBook Proに搭載したのが初めてである。その後、Thunderboltコントローラーを搭載したマザーボードが発表されたり、Ultrabookに搭載したりと努力はしているものの、MacはともかくWindowsプラットフォームでの盛り上がりは今ふたつみっつ欠けている、というのが正確なところ。
それでもMac用には確実にThunderbolt対応デバイスは増えており、その意味では一過性のものではなく、ある程度の市場は確実に立ち上がった。このあたりは、結局立ち上がらなかったWireless USBなどに比べるとずっと順調である。
Thunderboltの元になったLightPeakに
アップルが既存のI/Fとの互換性を要求
Thunderboltの元になった規格はLightPeakである。LightPeakは2009年の秋に公開された技術であり、この当時はまだ光ケーブルを念頭に置いたものだった。
元々LightPeakは「複数のI/Oプロトコルを中継するだけ」の技術であり、理論上はPCIだろうがRS232CだろうがEthernetだろうが、どんなプロトコルでもLightpeak経由で通すことが可能である。
もっとも実際にはどこかでプロトコルを変換する必要があるため、そこまで無尽蔵になんでもサポートすると、変換チップが大変なことになる。そこで当時はDisplayPortとPCI Express、それにEthernetがターゲットとなっていた。
このLight PeakはQoS(Quality of Service)、ホットプラグ、複数プロトコルサポートなどが特徴でもあった。QoSというのは、例えばディスプレーとI/Oデバイスをいくつか繋ぐケースで、もしディスプレーとデバイスすべてに均等に帯域を割り振ると、画面表示が間に合わない可能性がある。そこで、I/Oの種類によって優先度を変えようというものだ。
上の画像のケースだと、液晶に8Gbpsを最優先で割り当て、残りの2Gbpsは他のデバイスに割り当てるという形になる。このあたりの調整をLight Peakが行なえるというものだった。
もっとも発表当時、インテルは具体的にLight Peakを使うあてがなかった。下の画像は2010年のIDFで示されたコンセプト図であるが、確かにPCからは1本しか配線が出ていないが、その先が複雑になるわけで、果たしてこれに意味があるのか? という感じであった。
これが一転するのは、アップルがちょうど新しいインターフェースを探していたことに起因する。おそらくLight Peakの開発初期からアップルとのコンタクトはあったはずだが、ディスプレーと周辺I/Oを1本のケーブルでまとめられるというアイディアは、アップルのコンセプトにジャストフィットしたのであろう。
ただここでアップルが求めたのは、既存のインターフェースとの互換性である。つまり、Light Peakのために専用のI/Fポートを用意するのではなく、既存のI/Fポートをそのまま流用し、従来のインターフェースとLight Peakのどちらも動くような仕組みが求められた。
このあたりはすでに技術的にどうこうというよりは、アップルの美意識的な要求がベースだと思われる。したがって、現実問題としてどうにかできるのはDisplayPortしかない。そこでDisplayPortを共用する形で、Light Peakを実装したのがThunderboltというわけだ。
この連載の記事
-
第763回
PC
FDD/HDDをつなぐため急速に普及したSASI 消え去ったI/F史 -
第762回
PC
測定器やFDDなどどんな機器も接続できたGPIB 消え去ったI/F史 -
第761回
PC
Intel 14Aの量産は2年遅れの2028年? 半導体生産2位を目指すインテル インテル CPUロードマップ -
第760回
PC
14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ -
第759回
PC
プリンター接続で業界標準になったセントロニクスI/F 消え去ったI/F史 -
第758回
PC
モデムをつなぐのに必要だったRS-232-CというシリアルI/F 消え去ったI/F史 -
第757回
PC
「RISC-VはArmに劣る」と主張し猛烈な批判にあうArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第756回
PC
RISC-Vにとって最大の競合となるArm RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第755回
PC
RISC-Vの転機となった中立国への組織移転 RISC-Vプロセッサー遍歴 -
第754回
PC
インテルがCPUの最低価格を82ドルに引き上げ、もう50ドルでは売れない製造コスト問題 インテル CPUロードマップ -
第753回
PC
早期からRISC-Vの開発に着手した中国企業 RISC-Vプロセッサー遍歴 - この連載の一覧へ