VAIOが「基板」にこだわる理由
こうしたギリギリの設計は、なぜできたのだろうか? 秘密は「基板」にある。
土田:これがマザーボードです。面積が限られているので、設計の考え方を「三次元的」に変えました。本体のマザーボードに対して基板を重ねて面積を確保しました。ドーターボード上にはオーディオとセンサーの回路、ワイヤレスのインターフェースが載っています。マザーボードの面積はVAIO Duo 11に比べ60%くらい減っているのですが、それでも入りきらなかったので、二階建てになっています。
笠井:基板同士の接続につかっているFPC(フレキシブル基板)を見ていただきたいんですが……。これ、片方、コネクターないですよね? 二階建てにするといっても、普通にコネクターを入れると、その分厚くなってしまうんです。
今、Ultrabook規程の20mmに対して19.5mmという厚さを実現しているんですが、コネクターを入れると1mm増えて、もう入らないんですよ。なので当初より、FPC直づけでいこう、ということになっていました。
コネクターなんて1秒あれば刺さるものです。しかし現状、ラインの中で数十秒かけてつけています。生産性だけを見るとマイナスであるように見えますが、そうして「特徴」を出すことが大切だと考えています。
こうした設計思想は、現在のVAIOにとって重要なものだ。そこで生まれる「手間」は大きいが、それをカバーする方策を使うことで、ソニーは差別化につなげている。
笠井:VAIOは基板の数がものすごく「多い」んですよ。今回のVAIO Duo 13で17種類くらい。他社の多いものの2倍、少ないものの3倍使っています。通常、基板が増えるとコストが上がるので二次元的な設計になるんですが、空いているスペースをすべて埋めてしまおう、というのが今回のアプローチです。
キーボードの部分に沈み込むような「デッドスペース」があるのが分かりますかね? ここも有効活用しています。三次元に空いているところは全部使おう、ということで。
「基板が増えている」と言いましたが、しかし実は、コストが上がっているわけじゃないんです。むしろ安くしながら提供するのが、設計と製造が一体になった我々のやり方の特徴です。
普通は1種類の基板をたくさん集めて、その上にパーツを実装していきます。でも16〜17種類基板があったら、17種の「集合基板」を作ることになってコストが上がるので、基板枚数を増やせません。ですが我々は、基板を分割してしまい、専用の「トレイ」の上に載せてから実装するようにしています。こうすることでセットの特徴を出した上で、結果的にコストも安くなっているんですよ。
なぜそこまでこだわるのか? 笠井氏はこう話した。
笠井:結局、我々の元で、最初から最後まで完結して作れるのは「基板」だけです。そういう部分には徹底して手を入れることで、ソニーにしかできないパソコンを作れるんです。
主なスペック | |
---|---|
製品名 | VAIO Duo 13 |
型番 | SVD13219CJW・B |
価格 | 18万9800円から(ソニーストア価格) |
CPU | Intel Core i5-4200U(1.6GHz) |
チップセット | ― |
メインメモリー | 4GB(最大4GB/VAIOオーナーメードモデルは最大8GB) |
ディスプレー(最大解像度) | 13.3型ワイド(1920×1080ドット) IPS液晶、静電式タッチパネル、LEDバックライト、トリルミナス ディスプレイ for mobile |
グラフィックス機能 | Intel HD Graphics 4400(CPU内蔵) |
ストレージ | 128GB SSD(128GB×1) |
光学式ドライブ | ― |
通信機能 | 無線LAN(IEEE 802.11a/b/g/n) |
インターフェース | USB 3.0端子×2、HDMI端子、Bluetooth 4.0+HS、207万画素フルHDウェブカメラ(フロント)、 800万画素フルHDウェブカメラ(リア)、NFC機能 |
カードスロット | メモリカードスロット(SD/SDHC/SDXC、メモリースティック デュオ) |
テレビ機能 | ― |
サウンド機能 | ステレオスピーカー、マイク、ヘッドホン出力、Dolby Home Theater v4 |
本体サイズ/重量 | 約幅330×奥行き210×高さ9.2(最厚部19.5)mm/約1.325kg |
バッテリー駆動時間 | 約18時間 |
OS | Windows 8(64bit) |
オフィス | Office Home and Business 2013 |
付属品 | デジタイザースタイラス(ペン) |
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