「中央ヒンジ」への変更で構造は大幅に変わる
パワーの面でいえば、VAIO Duo 13で重要だったのは「Configurable TDP」(CTDP)である。CTDPは、利用状況に応じて熱設計許容量を変える仕組みであり、VAIO Duo 11も対応している。VAIO Duo 13では、キーボードを出した構造の時にTDPを25Wまで上げる。それによって、VAIO Duo 13のパワーは、VAIO Zに「PowerMediaDock」を接続して外付けGPUで動かした時よりも、さらに高い性能を得ることができた。
だが一方で、それは「放熱」との戦いでもある。
VAIO Duo 13は、VAIO Duo 11から大幅にヒンジ構造を変えている。VAIO Duo 11は本体横幅に近い、かなり大きなヒンジが採用されていたが、VAIO Duo 13のヒンジは中央にだけある。機構のシンプル化はもちろん、軽量化にプラスに働くが、すべてがプラスに働くわけではない。元々VAIO Duoシリーズは、ディスプレイの裏にある「空間」を生かすことでエアフローを得る構造であり、だからこそCTDPが実現できているのだが、軽量化を求められたVAIO Duo 13では、色々と苦難が存在した。
笠井:私がプロジェクトリーダーに依頼したのは、「11インチの筐体で必ず13インチを入れてくれ」ということです。あとは、タッチパッドを入れること。
それに「WAN」を載せ、「Allways On、Always Connected」を実現することです。元々我々は、PCにタッチを載せることで相乗効果を生み出そうとしていました。でもVAIO Duo 11では、ヒンジがサイドまで広がった構造だったので、どうしてもWANが搭載できなかったんです。なので最初から「ヒンジをセンター化する」ことは大命題として決まっていたんです。
花塚:VAIO Duo 11ではヒンジにマグネシウムを使っていました。13ではアルミ合金になり、肉厚は上がり、サイズも3分の1くらいになっていますが、結果的に30gくらい軽量化しつつ、さらに強度も維持されています。
WANは結局上(ディスプレイ上部)に入っています。無線LANは左右ですね。VAIO Duo 13ではヒンジが真ん中にあるので、必然的に基板はこの面積に収めるしかないんですね。今まではヒンジが左右にあった分大きくて良かったんですが、今度は内部が小さい分、非効率になってしまったんです。ですが今回はこのサイズに基板を収めることができたので、実現しました。
笠井:このデザインの特徴は「薄い板が宙に浮いてる」感じなんです。従来のVAIO Duo 11に比べると、C面(角のカット分)の取り量が広いんですよ。面が浅いと浮いているように見えないんです。こういう構造にしているのが、薄く・未来感があるように見せている秘訣なんです。
このデザインを実現するため、そもそも面の取り量が規程されているので、さらに狭い。その中で作る、というのが厳しかったんです。
花塚:バッテリーもConnected Standbyに対応するため、容量が必要です。VAIO Duo 11以上になっていますから、体積としても半分以上がバッテリーということになります。
笠井:CTDPで25Wを実現すると、放熱的に当然厳しくなります。これも最初に決めていましたので。しかも、センターヒンジで構造をわけています。本来はCPUの一番近くにファンを置くのが熱的には有利なんですが、長いヒートパイプで伝導するしかありません。その分、熱量を逃がせるファン性能が必要になります。だからファンのサイズも最初から決まっていました。その上で、残った領域にすべてを入れなければならなかった、ということです。
ちなみに、薄く見せるために「C面」を大きく採った結果、背面で「ビス留め」できる場所も限られてきた。もちろんキレイに見せなくていいならいくらでも方法はあるが、キレイな背面を実現するには、ビスを打てる場所は限られる。
花塚:ビスは斜めに打つことになったんです。斜めに打つ場合にも、斜めに打てるようにパーツを作るとケースが金型から抜けなくなるので、ビスを打つための基部だけを別に作って貼り付けています。
ビスが斜めだとビスがきちんと打てませんから、治具によって本体を受けて、本体を斜めに回転させながらビスを打っています。
笠井:ビス留めのパーツは強い強度で止まっている必要があります。二色のエポキシボンドでつけているんですが、適正になるよう、その混ざり具合は画像認識で判別してやってます(笑)。
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