回答編
スパニングツリーの回で話したけど、レイヤ2のネットワークはループした瞬間フレームが無限増殖し始めるのね。送出したパケットをもう一度受け取ってコピー・再送出、それを全ハブが繰り返して通信不能になる。この状態をブロードキャストストームと呼ぶの。
うわぁ、本当に初版だ。すごいなぁ、プレミアとかついてないのかしら。
(ぐさり)
すみません……ちゃんと話を聞きます。
もともと現行のイーサネットというのはスター型といってハブやスイッチを中心に、放射状に線が延びていく想定なのね。だからブロードキャスト(一斉同報)を投げたら末端に向けて次々とコピーしていく。ハブアンドスポーク(*4)の構成なので、いつかは端にたどりついて終わるはず。
ふむふむ。
でもその末端にスイッチが置かれていてまたセンターのハブに接続されると、いつまでたっても一斉同報が終わらないでしょ? 伝言ゲームの最後尾からまた最初の人に戻っていくような感じで。
なるほど、で、その伝言ゲームのループを検出すると自動的にやりとりを禁止するのがスパニングツリーでしたね。
そう。ただスパニングツリーって構成が複雑化するから、それを嫌がるエンジニアも多いのよね。なので別の対策も準備されてる。たとえば一定量のブロードキャストを観測したら当該ポートをシャットダウンしてしまうとか。
伝言の量が増えてきたら『もうやーめた!』と言って以後の伝言を拒否するような感じですか?
そうそう。この機能のことを一般的にはストームコントロールと呼ぶ。私的にはこの単語も中二っぽくて好きなんだけどね。
ストームコントロール……嵐の制御者……。
ね、いいでしょ。
ノーマ・エブラムソ・ロバトメ・トロフ・デビッド・ボーグス……緘黙せよ城門の王、ストームコント=ロー!
おお、いいじゃない。詠唱文にイーサネットの開発者の名前を持ってくるところとか、なかなか憎いわね。
って、この初版本に室見さんの筆跡でメモしてありました。
ふぉー!?(慌てて奪い返す)
いやぁ、室見さんにもそんな時代があったんですねぇ。
嬉しいですよ(ニヤニヤ)。
ち、違うわよ。入手したときにはもう書いてあったの。デフォルトで記載されていた感じよ!
日常会話でデフォルト(*5)とか使うの社二病ですから。
キャー!
(*4)自転車における車輪の軸と、そこから伸びる網線のような構成のこと。
(*5)直訳すると欠席・棄権などの意味だが、IT業界では既定値などの意。
【解説】
ブロードキャストストーム:
L2ネットワークのループによってブロードキャストフレームが無限増殖し通信不能になること。対策としてスパニングツリーやストームコントロール機能の有効化などがある
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