このページの本文へ

創立50周年を迎えたKORG新製品の内覧会レポート

KORGが作っているのはメディアなのかもしれない

2013年04月23日 12時00分更新

文● 四本淑三

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

電池駆動・スピーカー内蔵のアナログシンセ「volcaシリーズ」

 さて、今回の目玉はなんと言ってもこれでしょう。ミュージックメッセ直前に、いかのものリーク画像が流れた、あの「Volka(ヴォルカ)」シリーズであります。

volcaシリーズのKORG公式デモムービー

 前回は「KingKORG」という、部長のギャグを部下が渋々のんだとしか思えない名前のおかげで「どうせネタだろう」と、誰も信用しなかったわけですが、本当に、そのままの名前で出てしまいました。あれには唖然としたものです。その経験のせいで、今回のリーク画像は、もう誰も疑っていませんでした。この会社、お金を使わない宣伝うますぎる。

 開発したのは「monotron」、そして「monotribe」という、KORGネオアナログシリーズの立役者である高橋達也さん、企画はKAOSSILATORその他たくさんでおなじみ坂巻匡彦さん……のはずですが、お二人とも海外出張やら他の仕事やらで姿なし。このあたりも何か余裕であります。

 シリーズは3機種。すべて電池駆動・スピーカー内蔵で、シーケンサープレイを前提とした、アナログ音源のグルーヴマシン。SYNC端子やMIDI IN端子で、VolcaシリーズやDAWとの同期演奏を可能としております。きっと果てしなく何台もつないで、変態ビートを刻む強者がYouTubeあたりに現れるでしょう。

 まず上モノ担当「volca keys」は、3音ポリフォニックのループシーケンサー。もちろん音源はアナログシンセで、ディレイ回路も内蔵。モジュレーションをかけた金属的なノイズから、ディレイとフィルターの開閉を併せたスペーシーなループまでホイホイと出ます。おまけにkeysというくらいで、普通にシンセとしても弾けます。格安アナログシンセとして、まず初心者にオススメしたいです。初心者でない人は、放っておいても妄想が膨らんでいることでしょう。

volca keys近影

デモ演奏を控えてウォームアップ中のYasushi.Kさん。画面上3台ある一番奥がVolca Keys。手弾き音色のカッコよさに注目

 ベース担当は「volca bass」。3オシレーターのアナログシンセで、端的に言って、非常に分厚い音が出ます。volca bassのフィルターはこれ専用のチューニングが施され、レゾナンスを上げてカットオフを振り回すと、ギュョワーンと歪んだ、わるーい(いい意味で)音が出ます。ステップシーケンサーも、往年の他社製ベース特化型シーケンサーで作られるベースラインを意識して、短いポルタメントがかかるSLIDE機能も付いています。

 いまちょっと口幅ったい言い方をしましたが、他社製ベースシンセとは、1982年に発売されたローランドの大発明品「TB-303」のことです。この製品があったからアシッド・ハウスなんていう音楽も生まれたわけです。そしてもっとはっきり言いますと、TB-303がなかったら、Volca Bassもこういうインターフェイスになっていない。この斜めに切り落とされた、つまみの形をよーく見てください。一体これはどういうメッセージなのか。

 ですからローランドの皆さん、いろいろお察ししてはおりますが、ホント頑張ってください。

あなたはこのツマミの形を覚えているかしら

 そして最後にリズム担当「volca beats」。これはカラーリングからして、モロにあのリズムマシンの名機「TR-808」を彷彿とさせます。スネアのパラメーターに「SNAPPY」なんて書いてあるのが泣かせます。そして、この機種のみ、Clap、Claves、Agogo、ClashにPCM音源が使われていまして、80年代のビット数が足りないローファイな感じを意識したということです。この辺は金物にPCMを使った「TR-909」を狙ったのでしょうか。アナログ音源部も、メインで使えそうな低くて重いビートが出るのはさすがです。

黒地にばっちりオレンジが配色されてしまっているvolca beats

 現代的な要素としては、STUTTER(スタッター)ツマミが付いていること。文字通り、スタタタターッ!とトリガーを連打する機能で、シーケンスを回している最中に、リアルタイムでリズムに変化を与えられます。もうひとつ、これはvolcaシリーズに共通して、シーケンスの流れを捕まえリピートさせる「Active Step」という機能があります。この辺りはライブでのリアルタイム性を重視した、Electribeの流れを汲むものでしょう。

シーケンスが走っている最中に押さえたステップがリピートする「Active Step」

 さて、volcaシリーズの大きさは幅193mm、奥行き115mm、高さは46mm(beatsのみ45mm)で、机の上に置くとiPad mini程度の面積。いずれもパネル面以外はスモークカラーの半透明樹脂で覆われ、側面から中のLEDが透けて見えるようになっていました。

 全く関係ない話ですが、LEDでピンクに染まったつまみを見る度、映画「続・猿の惑星」のラストに登場する、コバルト爆弾 "アルファオメガ" の起爆装置を思い出し、なんとも言えないアシッドな気分に浸っていた私でした。やっぱりアプリより実体のあるマシーンは全然楽しい。

volcaシリーズ揃い踏み。できれば3つ全部欲しいところ

 お値段は一律1万8900円。通販店などではおおむね1万4900円で予約を取っているようです。発売予定はbeatsとbassが6月23日、keysが7月13日と発表されています。

volcaシリーズはすべて単3電池6本仕様。ACアダプターは別売り

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン