ディスプレーのリフレッシュレートを
オーバークロック
画面出力機能は、そもそもTesla系は画面出力が不要なので、K20X/K20共に出力機能を持っていないが、TITANではリファレンスの場合、DVI×2+HDMI+DisplayPortの4画面同時出力機能が搭載されている。これはTITANで追加されたというよりもK20X/K20で削られたものを復活したかたちだ。
これに絡んで、TITANで搭載されたものにDisplay Overclockingがある。液晶ディスプレーのリフレッシュレートは60Hzが上限である。ただFPSゲームなどでは、もっとフレームレートが上がったほうが操作感が良好になる。そこで、強引にディスプレーのリフレッシュレートを60Hzより上げることで操作感を改善しよう、という機能だ。
ディスプレーの仕様上、これは可能である。例えばデュアルリンクDVIの場合、最大ピクセルクロック(信号の転送速度)そのものの規定がない。最近普及を始めた解像度2560×1440ドットのディスプレーを60Hzで駆動する場合、DVI-Dのデュアルリンクでピクセルクロックは157MHz程度で対応できる計算だ。DVIの信号は200MHzあたりまで引き上げることが可能であり、その場合には、おおよそ80Hzのリフレッシュレートとなる。
もっともこのDisplay Overclockingは、どんな液晶ディスプレーでも可能というわけではない。これを可能とするツール自体がNVIDIAではなくカードベンダーから提供されるうえ、「すべてのモニターでオーバークロックできるわけではないので、出来るかどうかは自分で試さないといけない」という注釈がついているような機能である。おそらくカードベンダーが「このディスプレーならオーバークロック動作可能」といったリストを出すことになるであろう。
より高い電圧まで引き上げ可能になった
新GPU Boost
次はTDPとGPU Boost 2.0を説明しよう。TDPは、K20Xが235W、K20が225W、対してTITANでは250Wとされているが、これはコアやメモリークロックの違いを考えれば妥当な数字だ。加えてTITANではGPU Boost 2.0が実装されている。
GeForce GTX 680に搭載されたGPU Boostは、消費電力およびコア温度にゆとりがあれば、その分動作周波数を引き上げる(図1、2)。インテルのTurbo BoostやAMDのTurbo Coreなどと同等の仕組みであるが、GPU Boost 2.0ではここにさらなる上乗せを積んだかたちだ(図3)。
GPU Boost 2.0をどのように実現したかというと、1つはより電圧を引き上げたことだ。GPU Boost 1.0では、電圧の選択範囲はVrelと呼ばれる範囲に留められている(図4)。ところがGPU Boost 2.0では、このVrelを超えてVrelnewと呼ばれるより高い電圧まで引き上げが可能になっている(図5)。さらにユーザーが望めばこのVrelnewを超えた電圧まで引き上げることも可能だ(図6)。
結果として、動作周波数の分布も変わってくることになる。例えばGPU Boost 1.0における動作周波数分布が図7のような構図だとする。すると、GPU Boost 2.0ではより高い周波数での頻度が高くなる(図8)。さらにOver Voltageをユーザーが設定すると、より高い周波数まで引っ張れるようになる(図9)。
これを可能にするのは、より攻めた温度管理である。GPU Boost 1.0での温度分布は図10のようになっている。GPU Boostを使うと、これが図11のようになる。GPU Boost 2.0では、ターゲット温度を図12のように80度からさらに上げることも可能である。
結果として、温度を10度上げればその分動作周波数の頻度分布もより高いほうにシフトする(図13)。ファンの制御も、ターゲット温度にあわせて動的にシフトする(図14、15)。
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