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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第224回

Radeon R9/R7に刷新するAMDの2013年GPUロードマップ

2013年10月14日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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 今回は久々のAMD GPUのロードマップ更新をお送りしよう。前回のロードマップは2012年11月だったから、1年とは言わないまでもかなり放置していたことになる。そこで、2012年中の製品からアップデートをしていきたい。

2011~2013年のAMD GPUロードマップ

Sea Islandsシリーズのおさらい
Radeon HD 7990から7730まで

 まずはSea Islandsシリーズのアップデートからだ。当初2012年中に発表されると思われていたNew Zealand。これはTahitiをベースにやや動作周波数を下げる形でデュアル構成になると思われていた。ところが、Fire Pro S10000として2012年11月に発表されたものの、Radeon向けにはついにリリースされることはなかった。

Fire Pro S10000

 この製品は最終的に、ほぼRadeon HD 7970 GHz Editionを2つ搭載した、Maltaに切り替わり、Radeon HD 7990として2013年4月に発表されている。TDPは非公開ながら750W以上の電源が必要、補助電源コネクターが8ピン×2、といろいろな意味で無茶な製品に仕上がった。

Radeon HD 7990

 一方ハイエンド向けとしては、まずRadeon HD 7950のスペックを少しだけアップデートしたRadeon HD 7950 Boostが2012年8月に、そこからややシェーダなどを無効化したRadeon HD 7870 XTが2012年11月に投入されている。

 7800シリーズにも関わらずPitcairnではなくTahitiを使ったのは、Radeon HD 7950 BoostとRadeon HD 7870 GHz Editionの間に大きな性能差がありすぎて、Pitcairnベースではカバー仕切れなかったためと思われる。

 メインストリーム向けは、Radeon HD 7870 GHz EditionとRadeon HD 7850の2つで長らく構成されてきたが、2013年3月にはRadeon HD 7790が投入されている。

Radeon HD 7790

 おもしろいのは、これがPitcairn XTベースではなく、新コアであるBonaire XTが投入されていることだ。シェーダー構成はPitcairnというよりもCape Cerdeに近い(ラスタライザーが16基というあたりがこれを物語っている)が、シェーダー/テクスチャーユニットやメモリーバスがCape Verdeより強化されているのがポイントである。

 最後がローエンド。ここは長らくRadeon HD 7770 GHz EditionとRadeon HD 7750が利用されてきたが、2013年4月にさらにシェーダー類を無効化したRadeon HD 7730が投入されている。

OEM向けには存在した
Radeon HD 8000シリーズ

 さて、一般のリテール市場向けということであればこれが最新の状況なのであるが、OEM向けは少し話が変わってくる。2013年1月に開催されたCESで、AMDはRadeon HD 8000Mシリーズを発表した。ただこれは既存のRadeon HD 7000Mシリーズのリネーム品で、基本的な構成は全然変わらないものである。

CES 2013で、AMDはノートPC向けのRadeon HD 8000Mシリーズを発表した

 ではデスクトップ向けはというと、2月にAMDのDevon Nekechuk氏が以下のように述べている。「2013年は今の製品、Radeon HD 7000シリーズをずっと売り続けます。2013年内にチャネル向けとしてRadeon HD 8000シリーズを出すことはありません。Radeon HD 7000シリーズのパフォーマンスは、競合製品に対して十分なアドバンテージがあります。競合メーカーから新製品が登場したとしても、今のRadeon HD 7000シリーズで十分対抗できると考えております」(関連記事

Radeon HDシリーズのロードマップ。図でわかるように、現行のRadeon HD 7000シリーズがそのまま2013年中は継続販売される。図は2013年第3四半期までとなっているが、実際は第4四半期までとのことだ

 これを裏付けるようにリテール向けには一切Radeon HD 8000シリーズは流れてこなかった。ところがOEM向けには、Sea IslandsファミリーとしてRadeon HD 8990/8970/8950/8870/8770/8760/8730の各製品が、2013年の比較的早い時期から供給が開始されていた。

 これらはいずれもリネーム品で、スペックそのものには一切変更がない。ただ、全部が全部リネーム品かというと、それも違い、ローエンド向けに新しくOlandと呼ばれるコアがこっそり投入されている。

 上位モデルがRadeon HD 8670で、スペック的にはRadeon HD 8730(元はRadeon HD 7730)をやや上回る性能を出すもの。下位モデルがRadeon HD 8570で、こちらは名実共にローエンド構成になっている。

 このOlandを投入した理由は、ローエンドにGCNを導入するためである。2012年~2013年というタイムフレームで見ると、OEM向けに投入されていたRadeon HD 7510~7670(Turksベース)やRadeon HD 4350/7450(Caicosベース)は、いずれも40nmプロセスを使ったVILW4ベースの製品で、型番はともかく実体はRadeon HD 6000のNorthen Islandsのリネーム品である。

 AMDとしては上から下までGCNを展開していくことがMANTLEの導入などには不可欠であり、しかしながら既存のCape Verdeではややダイが大きい(123mm2/15億トランジスター)こともあり、より小さなダイ(90mm2/10.4億トランジスター)にしたのがこのOlandである。

 ちなみに図には出てこないが、このSea Islands世代でも一応CaicosベースのRadeon HD 8450~8490や、CedarベースのRadeon HD 8350がラインナップはされているが、もはや性能ベースでは非常に低く、AMDの提供するAPUに比べても見劣りする程度のものでしかない。

 「なんでもいいから安いディスクリートGPUが欲しい」というケースでしか選ばれなくなっていたため、事実上Sea Islands世代は40nmから28nmに切り替えを行ない、ローエンドまでGCNを展開した世代と考えていいだろう。

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