このあたりは、ムービーをチェックしていただけるとわかりやすいかもしれない。Duo 11の「Surf Slider」は、閉じる時に「ガチャッ」とは閉まらず、ゆっくりと閉まる。全体の動きはスムーズだが、品位を持った閉まり方・開き方を演出している。重量が大きいものを動かすため、バネとカムの力はとても強く、パーツ単位では指では操作しにくいほどだ。だがそれがうまく組み合わさって、全体では「快適でスムーズな動作」を実現している。
このように複雑な機構を搭載しているにも関わらず、Duo 11は製造面での配慮により、かなり「作りやすく」なっているという。
鈴木(一)「実はDuo 11は、弊社の『VAIO Z』よりも組み立て工数が少ないんですよ。社内では『上流設計』と言っているのですが、私どもは設計の初期から、製造の現場とやりとりをしながら進めています。その成果と言えるでしょう」
製造技術担当の、ソニーイーエムシーエス 堀田佳生氏は、その様子を次のように説明する。
堀田「組み立てについても特殊な治具が必要となるので、当初から開発陣と一体になって取り組んできました。ヒンジ構造がいままでにないものなので、正直に言えば……。最初に設計データを見せられた時には、もちろん頭の中で組み立て手順を考えながら見るわけですが、『やべえ、組めねえ……』と思いました」(笑)
堀田「例えば通常は、作業性を考えたハーネスの取り回しができるようになっているのですが、この変わったヒンジ構造でしかも薄型なので、どう考えても(ハーネスを)通すスペースがない。長さもない。そこで、専用の治具を作り、すっと組み立てられるようにしました」
木村「そこは相当話し合いましたね」
堀田「実際に簡易的に設備を組みながら、どう組み立てるかを考えつつ、設計に反映していきました」
実際写真を見ていただければわかるが、ディスプレー部と本体を結ぶケーブルはとにかく短い。これを効率的に複雑な構造の中に組み入れるのは、かなり大変なことではある。
堀田「正直、これを手で挿すのは大変です。普通ならばこれはNGになるところで、最初の試作の時には『これをつけられる職人さんは1人しかいない。どうしよう』と思いました(笑) これを特別な治具によって、つけられるようにしたわけです」
ちなみに、そのための治具は、社内では通称「堀田治具」と呼ばれているという。
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