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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第99回

日本のネットシーンに天才現る――M.Kitasonoの衝撃

2012年07月07日 12時00分更新

文● 四本淑三

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映像と音楽の組み合わせが好き

サクランボ漬けの日々(鍵盤ハーモニカ曲集より) by M.Kitasono

―― どういうスタイルの活動が理想ですか?

M.Kitasono 映像と音楽の組み合わせというものがすごく好きなので、行く行くはそういうものにも手を出せたら。

絵画も描く。映像、音楽、詩と、ジャンルを組み合わせた表現も視野に入れているという

―― 映像というのは?

M.Kitasono 映画です。昨日リストアップした作品が20くらいあるんですけど。

―― どうぞ、言ってみてください。

M.Kitasono まず「ひまわり」ですね、ヘンリー・マンシーニの。それから「ラスト・タンゴ・イン・パリ」。そして私が世界一好きな映画なんですが、ボブ・フォッシーの「オール・ザット・ジャズ」。音楽と映像と時代の雰囲気、すべてに胸を打たれました。特にダンスの練習シーンなんですけど、とても音が安っぽいにも関わらず、ボイシングがビッグバンドアレンジのものを演奏しているので、そのアンバランスさにとても惹かれたんです。

―― また細かいところをチェックしていますね。

M.Kitasono その映画で女の子(アン・ラインキングとエリザベート・フォルディ)が2人で踊るシーンがあるんですけど、そこでピーター・アレンの曲が流れるんです。"Everything Old Is New Again"という。サントラの中で浮いている1曲なんですが、それに胸をえぐられました。あとは「酒とバラの日々」「雨に唄えば」「カジノ・ロワイヤル」「明日に向って撃て!」。

Image from Amazon.co.jp
ヴァージン・スーサイズ [DVD]

―― やっぱりフックになるのは音楽なんですね。最近のもので好きなものってないですか?

M.Kitasono 映画だったらいいものがあると思います。「ヴァージン・スーサイズ」とか。70年代のヒットソングがたくさん使われている映画なんですけど。あと映像の質感とか。何だか胸を締め付けられますね、女の子がいっぱい出てくるんですけど。

※ ヴァージン・スーサイズ : 1999年公開。映画監督フランシス・コッポラの娘、ソフィア・コッポラの初監督作品。原作はジェフリー・ユージェニデスの「ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹」。

ネットよりも現実世界のパトロン

七拍子のエレクトロニカ(少しゲーム音楽ぽい) by M.Kitasono

―― ネットを足がかりに音楽をやっている人たちは、ある程度戦略的にやっていますが。

M.Kitasono 私はあまり考えていないですね。むしろ現実世界にパトロンがいたらいいなと思います。それはジャズミュージシャン時代から思っていたことなんですけど。

―― 普通にやればブレイクしそうですけど。

M.Kitasono それは実感がないというか。ただ私が怠惰な生活を送ることなく、このままやっていけたら、きっと何かができるという確信はあります。

―― たとえばM3と呼ばれるような、音源の即売会があったりするのですが、御存知ですか?

M.Kitasono いいえ、まったく。ミュージシャン直々に売るということですか? 顔を出して売るんですか?

―― そうです。音源を売ってどうこうしようとかは?

M.Kitasono 想像もしていませんでした。安定した暮らしがしたかったら他の仕事をすれば良いので、考えたことはありません。創作を続けていけるだけは稼ぎたい。そうなれば幸せだなと。欲を言えば軽井沢にレンガの家を建てたい。まあ、それは欲なんですけど。



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。

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