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山谷剛史の「アジアIT小話」 第19回

謎の中国カスタム版Windows XPが人気OSである理由

2012年04月17日 12時00分更新

文● 山谷剛史

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各種ソフトからアップデートまで機能てんこ盛りの
「Windows XP非公認チャイナエディション」とは?

海賊版ショップ

海賊版ショップ

 海賊版ユーザーの言い分はこうだ。「海賊版だろうと正規版だろうとデータは同じ。正規版購入者にはサポートがあるといったって、それは満足できるものではない」。

 そんな彼らは別に実売価格が高いソフトを使いたいのではなく、使いやすいソフトを使う傾向があり、フォトレタッチソフトはPhotoshopが定番だったが、中国人のツボを押さえた代替のフリーソフトが登場したことにより、口コミを通じて徐々にフリーソフトに移行しつつある。

海賊版Windowsと一言で言っても、よく見てみるとさまざまなエディションがある

海賊版Windowsと一言で言っても、よく見てみるとさまざまなエディションがある

 OSについてもツボを押さえた代替えソフトがあれば売れる。Windowsの海賊版といっても、そのものではなく、日本では知られていない謎のWindows XPのエディションが人気なのである。

 逆に、海賊版販売店で素のWindows XPは最近あまり見ない。つまり、年に何回も新しいWindows XPがネットや海賊版ショップでひっそりリリースされるのである。ノートPCが人気になって久しいが、Windows 7搭載ノートを購入後、Windows XPの非公認ローカルエディションに交換するユーザーは多い。

非公認チャイナエディションを百度中国で画像検索。左が「雨林木風xp」、右が「深度xp系統」

 かたくなに多くの中国人が選びたがる「Windows XP非公認チャイナエディション」とはどのようなものか。さまざまなバージョンがあるが、多くに共通するのは、最新のパッチがすでにあたっており、システムユーティリティーソフトで高速軽量化され、クラックし正規版化された状態である点。

 加えて、商用ソフトでは最新の状態の海賊版Officeや画像ソフトの「ACDSee」があらかじめインストールされ、さらに「Flashプラグイン」「Direct X」ほか、チャットソフト「QQ」、圧縮率の高い圧縮解凍ソフト「好圧(HaoZip)」 、PDFビューアー「Foxit Reader」、ほか音楽再生ソフト、IMEソフト、タグブラウザー、P2Pダウンローダー、仮想ドライブソフトといった定番のフリーソフトがインストールされている。

 大量のデバイスドライバーが入っていて、マイドキュメントフォルダはDドライブに置かれている。これらをシマンテックの「ノートン・ゴースト」を使ってバックアップしたデータまで用意されている。長々と書いたが、これこそが「Windows XP非公認チャイナエディション」である。

 Windows XP非公認チャイナエディションしかり、中国製のシステムユーティリティーソフトしかり、最新パッチをダウンロードし、本体をアップデートさせる機能を持っている。

 だから、Windows XPのサポートが終了するまでは、ユーティリティーもパッチを出し続ける。しかし、過去の例を見るとWindows 2000に関してはマイクロソフトのサポート期間終了後、独自のパッチを中国ベンダーは出していない。したがってWindows XPについても、マイクロソフトのサポート終了とともに中国版Windows XPのパッチは出ず、ユーザーはようやっと重い腰を上げ、OSの乗り換えに動くのではないか。

 中国でWindows 7はWindows XPに次いで利用されているものの、Windows 7の非公認チャイナエディション(もちろん海賊版)はすでに出ていて成熟しつつあるだけに、Windows 8の中国人ウケがよくないとWindows 7を利用し続ける人が多くなるのではないだろうか。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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