アジアの国々ではいよいよスマートフォンが普及しようとしているが、中国ではスマートフォン以前にPCが都市部で普及している。
これがほかのアジア諸国と違う点だ。現在のPCがはじめて買ったものから数えて3台目、4台目という家庭も普通にある。
PCの普及に加え、中国のモノ作り力と中国的事情から、過去にさまざまな変わった中国限定のPC用拡張ボードがリリースされてきた。おそらく他国では、その国独自の拡張ボードというのはあまりつくられていないのではないだろうか。
今回は日本のメディアでも、外国のメディアでも語られていない、中国らしい拡張ボードについて紹介しよう。
「漢字ROM」の文化は日本だけじゃない!
日本における過去の独自PC製品を振り返るに、まず思い出すのはNECの「PC-9801」ではなかろうか。その特徴のひとつは2バイト文字のひらがな/カタカナ/漢字を格納した漢字ROMだろう。
文字数の多さから2バイト文字を利用していたのは、漢字の国 中国もしかり。中国でも当然文字処理のニーズはあるものの、日本のように独自のPCを出してはおらず、PC/AT互換機が普及していた。そこで中国版の「漢字ROMカード」が、中国メーカー各社から売られていた。
IBMのPC部門とx86サーバー部門を買収したレノボも、当初はPCを製造しておらず、1985年に輸入PCにISAバス用の漢字ROMカード「聯想漢カード(“カード”は漢字で上と下を合わせた文字)」を添付して発売。業績を伸ばし、PCに関心がある人々の間で聯想の認知度が向上した。日本同様、漢字ROMカードは今となっては骨董品だ。
ソフトを買うという概念がない時代の
「アンチウィルスカード」
今となってはかわいいものだが、DOSの時代もコンピューターウィルスはあった。脅威に対抗するため、中国メーカーはアンチウィルス製品の販売を検討するが「ソフトを買う」という概念が今以上になかったユーザーに向けて、物理的に見えるかたちでISAバス向けの“アンチウィルスカード”をリリースした。
結局、外資系メーカーらによる“アンチウィルスソフト”はメジャーにはならず、アンチウィルスカードがデフォルトになったのだとか。
さすがにDOSの時代でPCにリソースがなく、また資金力のある役所や大学などが主なPCユーザーだったので、アンチウイルスカードは売れ、リリースした「瑞星」「江民」といったベンダーは中国で定番のセキュリティベンダーとなっている。
(次ページに続く、「情報漏えい対策やHDDリストアが可能な製品も」)
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