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Receiver担当者に聞いた新機能とデスクトップ仮想化の現状

シトリックス曰く「デスクトップ仮想化はPCより優れている」

2011年09月22日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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現在のクラウドを支える仮想化技術が、サーバー側からデスクトップ仮想化にフォーカスを変えているのは明らかだ。このデスクトップ仮想化分野での最大手シトリックス・システムズ(以下、シトリックス)でクライアントのCitrix Receiverを担当するスミット・ダーワン氏に最新技術や製品を紹介してもらった

端末や場所パーソナルクラウドを目指す

 デスクトップ仮想化の分野で次々と新しい製品を投入し続けるシトリックスだが、サーバーベースコンピューティングの元祖たる同社の方向性は変わらない。ローカルと同じエクスペリエンスを、いかにネットワーク経由、仮想化環境で提供できるかという点だ。

 

シトリックスシステムズ レシーバーアンドゲートウェイグループ グループバイスプレジデント&ゼネラルマネージャー スミット・ダーワン氏

 シトリックスのレシーバーアンドゲートウェイグループのスミット・ダーワン氏は、昨今のクライアント分野でのトレンドとして、コンシューマデバイスをビジネスで活用する「コンシューマライゼーション」を挙げる。自己所有のデバイスを私用だけではなく、業務用に持ち込もうという「BYOD(Bring Your Own Device)」という用語も少しずつ聞かれるようになった。「ガートナーは、今後10年でIT分野でコンシューマライゼーションの大きな変革が起こると予想している。実際、情報をつかめるスマートフォン、大画面で情報を楽しむタブレット、そしてコンテンツを作るのに最適なノートPCという3つのスクリーンが業務で利用されるようになっている」と述べる。

 

 一方で、こうした状況はIT部門にとっては悪夢になる可能性もある。「インターネットに接続している50%以上は、すでにWindows PCではないという調査もある。IT部門は、今までのようにWindowsのプラットフォームだけ管理していればよいわけではない」とのことで、さまざまなデバイスを管理する必要があるからだ。単に持ち込むだけでは公私混同に過ぎないので、私用と業務用のデスクトップをきちんと分けて利用できるようなデスクトップ仮想化環境を構築しようというのが、シトリックスの主張だ。

 

 こうしたクラウドの時代を見据え、シトリックスは幅広い端末に対して快適な操作性を実現するための製品やテクノロジーを投入している。その1つがソフトウェア型のクライアントであるCitrix Receiverである。「この数年で7つの異なるプラットフォームに対応し、すでに10億台を超えるデバイスをサポートしている」(スミット氏)とのことで、あらゆるデバイスでデスクトップ仮想化の恩恵を受けられるという。

 

 Citrix Receiverは、対応プラットフォームの拡張とともに機能も向上させている。管理者が設定したWebポータルからアプリケーションを追加したり、HDXを使って高品質なグラフィックスをネットワーク経由でも実現したり、「フォローミーデバイス」や「フォローミーデータ」という機能で、最新のドキュメントをクラウドから利用できる。Citrix Receiverを使うことで、端末や場所を選ばず、自らの仕事環境にアクセスできる「パーソナルクラウド」を実現できるという。

 

iPadを使って、自らのデスクトップを簡単に呼び出せる

 さらにエクスペリエンスを向上するには、クライアントだけではなく、クラウド側やネットワーク面での工夫も必要になる。その点、同社は6月にクラウドからのアプリケーション配信を効率的に行なう「NetScaler Cloud Gateway」や、社内システムやクラウド同士をシームレスに接続する「NetScaler Cloud Bridge」などの新製品も投入している。

 

デスクトップ仮想化は飛躍の年へ

 こうしたデスクトップ仮想化は、従来コンプライアンスへの配慮が必須の金融機関や保険会社、医療機関、あるいはさまざまなデバイスを利用する教育関係などで関心が高かったが、政府系や製造業などへも拡がっている。「米国でも、当初小さいグループでの導入が多かったが、この2年で急激に市場が膨らんでおり、しかも数千~数万単位のユーザー数も珍しくなくなってきた」(スミット氏)というのが最新動向だという。

 

 保守的な日本でも、銀行や保険会社などで数万ユーザー規模の導入事例が次々と発表されている。こうしたデスクトップ仮想化普及のきっかけとして、スミット氏は「まずはデバイスが増え、iPadなどのデバイスで仕事が変わってきたこと。Windows XPのPCの入れ替え時期にさしかかり、デスクトップ仮想化が遡上に上がってきたこと。あとは日本では震災のような事情がある」と分析する。今年が日本でのデスクトップ仮想化元年であることは間違いないだろう。

   

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