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デスクトップ仮想化のすべて 第9回

ターミナルサービスの元祖は多彩な方式を提供

ネットブート型も網羅するシトリックスのデスクトップ仮想化

2010年09月30日 06時00分更新

文● 渡邉利和

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シトリックスは、Windows環境でのサーバーサイドコンピューティングに古くから取り組んでいる、この分野を代表する企業だ。Windows Terminal Server用に基本技術を提供していた経緯もあり、Windows環境でのアプリケーション層の仮想化や画面転送技術についてはトップレベルにある。

 シトリックスは、古くからWindowsアプリケーションのリモート実行環境の提供に取り組んできた。日本では、1998年にリリースされた「MetaFrame」が最初の製品となる。以後、Windowsプラットフォームの進化に併せて順次バージョンアップを繰り返すとともに製品名称も細かく変更され、現在は「XenApp」となっている。

図1 2010年4月に発表された「XenApp 6」。Windows Server 2008 R2で動作する

 ざっと流れを挙げると、「MetaFrame XP」「MetaFrame Presentation Server」「Citrix Presentation Server」「XenApp」という具合だ。現在は、仮想化プラットフォームであるハイパーバイザ製品「XenServer」に合わせる形で、同社の製品名は「Xen」で始まる名前が付けられるようになっている。XenAppという名前だけからは、何をする製品かがわかりにくい。アプリケーションを仮想化し、クライアントに配信するための基盤製品だと位置づければよいだろう。

画面1 XenAppの祖先の1つ「MetaFrame XP」

 また、シトリックスのデスクトップ仮想化製品の特徴の1つに、クライアントソフトウェアである「Citrix Receiver」の対応範囲が広い点がある。Windows Server上で実行するWindowsアプリケーションをWindowsクライアントからリモートで利用できるのは当然として、Citrix Receiverさえインストールしておけば、MacOS XやiPhoneのようなスマートフォンからでもWindowsアプリケーションをリモートから利用できるようになる。同社は今後もビジネスユーザーが業務で活用する可能性のある端末であれば、どんな機種でもReceiverを提供していくという方針を掲げている。

画面2 Citrix Receiver for iPad。シトリックスのサーバー上で動くPowerPointのプレゼンテーションを開いている

様々なデスクトップ仮想化を提供するXenDesktop

 XenAppと並び、同社のVDI製品として提供されているのが「Citrix XenDesktop」だ。XenAppが確立した画面転送技術の上に成り立っている製品だといえるが、VDI製品としてさまざまな種類の接続/アプリケーションの実行形態を広範にサポートし、ユーザーのどのような要求にも対応できるように構成されている点が特徴だ。

画面3 シトリックスのVDIソリューション「Citrix XenDesktop」

 XenDesktopの中核と位置づけられている技術が、「FlexCastデリバリテクノロジ」だ。これは、MetaFrame時代からの長い歴史と実績を誇る画面転送技術であるICA(Independent Computing Architecture)プロトコルをベースにしているが、さまざまな形で仮想化された要素を組み合わせてユーザーのデスクトップを構成できる柔軟性を確保している。

図2 XenDesktopが搭載するFlexCastデリバリテクノロジによる機能

 XenDesktopで配信可能なデスクトップは、大きく分類すると「Hosted Shared Desktops(ホステッド共有デスクトップ)」「Hosted VM-based VDI Desktops(ホステッドVDIデスクトップ)」「Hosted Blade PC Desktops(ホステッドブレードPCデスクトップ)」の3種類となる。

デスクトップイメージを配信するHosted Shared Desktops

 Hosted Shared Desktopsは、いわばサーバーの画面をそのまま各クライアントに配信するイメージだ。これは、多数のユーザーが共通のデスクトップを使って作業する場合に向く方法である。標準化され、使用するアプリケーションなどをあらかじめインストールしたデスクトップのイメージをサーバー上に用意しておき、ログインしたユーザーがこのイメージを共通に利用する。

 もちろん、実行中の各ユーザーの環境はセキュアに分離されており、他のユーザーの作業の影響を受けることはない。とはいえ、個人レベルでカスタマイズされた環境ではない。多数のユーザーを最小限の運用管理負担でサポートしたい場合に有効な手法だ。この場合、1台のサーバーで最大500ユーザーをサポートすることも可能だという。

サーバーで仮想クライアントを実行するHosted VM-based VDI Desktop

 Hosted VM-based VDI Desktopは、サーバー側の仮想化プラットフォームを活用し、ユーザーごとにカスタマイズされたデスクトップを提供できる手法だ。前パートで紹介したVDIそのもので、サーバーのVM上でユーザーごとのデスクトップ仮想化を実行する。

 ユーザーがそれぞれ専用のVMイメージを占有する形となるため、作業環境をそれぞれカスタマイズしたいユーザーにも対応できる。1台のサーバーでサポートできるデスクトップ数は60~70台だという。

実際のPCを利用するHosted Blade PC Desktop

 Hosted Blade PC Desktopは、サーバーとしてブレードサーバーを用意し、1台のブレードPCをユーザーに占有させる方式だ。ハードウェアライアンナップとしてブレードサーバーとシンクライアントの両方を提供しているHPが展開していることでもよく知られる方式だ。

写真1 クライアントPCの機能をブレードに搭載した日本ヒューレット・パッカードのブレードPC「HP bc2000 Blade PC」

 一方、シトリックスではこの手法をソフトウェアでサポートしている。クライアントハードウェアをマシンルームに設置し、手元の端末(PCまたはシンクライアント)から接続するのだ。各ユーザーはそれぞれ1台のハードウェアを占有できるため、パフォーマンスを重視する用途にも対応できる。ただし、1ユーザー1ブレードという割り当てになるため、コスト面でももっとも贅沢な構成だといえる。

(次ページ、「まだあるデスクトップ仮想化の実現方法」に続く)


 

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