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KDDI「手のひらAR」はARの限界を突破するか?

2011年05月07日 12時00分更新

文● 近江 忠

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 2月28日に開催された「au コンテンツフォーラム 2011」(関連記事)。その会場でひときわ異彩を放つデモが行なわれていた。スマートフォンのカメラで自分の手を写すと手の上に3Dキャラクタが登場し、音楽に合わせて踊るのである。

 開発したのはKDDI研究所。ARで必須と思われていたマーカーがない上に、「手」という機械には非常に処理しにくい物体を非力なスマートフォン端末で認識させて、さらに3Dのキャラクターがランダムに動くさまは、今までのARを知っている人間からすれば驚きの一言。物珍しさからブースに人だかりができていたのも頷ける。

 一体どんなブレイクスルーがあったのか。もしかしてARの転換期に来ているのではないか。そんな興味を覚えKDDI研究所に取材を申込んだ。対応していただいたのは工学博士の加藤晴久さん――手のひらARの生みの親である。

 この手のひらARの登場によりどのような世界が開けるのか、そしてKDDIはどのようなサービスを提供していくのか、お話を伺った。


われわれならもっと凄いことができる


―― 「手のひらAR」は、従来のARマーカーを使う技術とはかなり違うんですか?

加藤 ちょうどARが盛り上がり始めたころ、白黒のマーカーを読みこませているのを見て、「やってる処理としては、技術的にそれほどすごいことはやっていないな、その割に反応が大きいな」という感想だったんです。だったら、われわれならもっと凄いことができるよな、というのがきっかけです。

KDDI研究所 工学博士の加藤晴久さん


―― やっぱりマーカーも進化しているんですか?

加藤 そうですね、今のトレンドはあからさまな白黒マーカーではなくて、もっと一般的なものを認識しようという流れに移りつつあります。

 白黒のマーカーは、それ自体学会レベルでは研究が進んでいて、たとえばパチンコ玉を真ん中に置いて、現実空間にこういう光が当たっているから、表示する映像にも同じような形で光を当てよう、といった研究もあるんですけどね。

 でも、白黒マーカーを認識して3D映像を出すというところから、いろいろな方向に広がってきていると思っています。われわれがやりたいと思っているのは、それのさらに発展版というか、白黒のマーカーではなく、写真であるとかカタログ、本とかパンフレット、さらにそれを超えて、立体物の認識までできるように対象を増やしたいと。


―― そこで「手」が発想に上がった?

加藤 そうですね。最初の発想にあったのは、ケータイで使えないと普及はしないだろうなというところだったんです。パソコンにカメラをつないでやるというのはギークな人なら付いてくるかもしれないけど、普通の人は使わないだろうと。ケータイならディスプレーもあってカメラもある。そこで動かせないとARは普及しない。それが課題だと思っていました。ユーザーがケータイでカメラに映すのは何かと考えたら、真っ先に思い浮かんだのは「顔」なんですが、街中で他人にカメラをかざして見るというシチュエーションはちょっと想定できないですよね。そこで、自分の「手のひら」だったらいいかもしれない、と。

「街中で人の顔にカメラをかざすのは難しいが、自分の手のひらならいいかもしれない」そこから手のひらARの発想が生まれた

(次ページに続く)

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