価格とバッテリーでスイートスポットを狙う
問題はOSのアップデートか
LifeTouchは安価なモデルの場合、4万円前後の価格で販売されると想定されている。この価格帯も、相当に検討した上でのものであるようだ。
花岡「今回は価格面で相当慎重に検討しました。このくらいの価格でこのくらい持ち歩いて使えるなら、パソコンを持ち出すのをあきらめていた方の需要を喚起するのでは、と考えています」
渡邉「この価格がスイートスポットで、そこから仕様を決定しています。この形やクラムシェルのキーボードで差別化することで、パソコンや他社の端末と使い分けていただけると考えています。タッチスクリーンに抵抗膜式を採用したのも、コストを考えてのものです」
先に「キーボードの品質がもう一声」と書いたが、このあたりは価格に関係している。まず「4万円以下」という価格帯ありきで開発が進んでいたため、これ以上のクオリティーは難しい、という判断がなされたようだ。私としては「あと5000円売価が上がってもキーボードの品質を上げるべきだ」と感じるが、4万円を切るか否かは大きな問題であり、同社としても難しい選択肢だったのは理解できる。
通信方式の選択についても、価格重視の方針が見えてくる。
花岡「元々この製品は、モバイルWiFiルーターを併用することを前提に考えていました。その後、3Gモデルもニーズがあるだろう、ということで用意しました」
他方で、バッテリー駆動時間については妥協していない。
花岡「最初の目標は、ウェブに1分に1度アクセスしながら8時間という駆動時間でした。結果的にこれを超える値(約9時間)を実現できました」
実は今回の取材では、1時間程度のインタビューのメモ取りを、「無線LANオン」状態のLifeTouchで行なってみた。バッテリー残量20%の状態でスタートしたが、終了後のバッテリー残量は10%弱。バッテリー残量警告がギリギリで出た、といった感じだった。この調子ならば、NECが想定しているバッテリー駆動時間は、多くの場合クリアーできそうである。
LifeTouchはAndroidを使うことで、低価格かつ長いバッテリー駆動時間を実現できた。だがAndroidである以上、避けて通れない問題も出てくる。それはもちろん「OSのバージョンアップ」だ。現状では2.2を搭載しているが、今のところLifeTouchでのOSバージョンアップについては、明言されていない。
渡邉「元々の考え方として、『Androidに現状で最適なハードウェア構成で発売する』というものがあります。今回はTegra 250+Android 2.2での最適解を作ったのがコレ、ということです」
花岡「例えばiPod touchも、古い製品ではOSをアップデートすると動かなくなる機能があります。バランスが崩れるとはそういうことです。ちゃんと『Honeycomb』(Android 3.0)を使いこなせるものになるかどうかは、まだコメントできません」
このあたりは、多くのAndroid端末が抱える問題である。特にOSの機能進化が著しい現在、最新のAndroidを使いたいと感じる人は少なくないはずだ。他方で、パソコンのように使うのではなく、ある程度自分の用途やアプリを限定して活用すると考えれば、OSのバージョンにこだわる必然性は薄い、とも考えられる。
だが「パーソナルコンピューティング」を標榜するなら、最新の環境に合わせたいものだ。このあたりの矛盾をどうコントロールするのかが、LifeTouchにとっては重要な戦略となるだろう。
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