タブレットを教科書にするなら教室ごと変えるべし
── iPadなどのタプレット端末は、電子教科書として教育関連での導入も期待されています。
遠藤:そうは言われてるけど、現場からは困惑する声も聞こえてくる。ある大学の研究室のお手伝いをさせてもらっていて、電子教科書の導入に関するアンケートを小中学校の先生などに取ったところ、賛成が17%しかなかった。それは当たり前で、先生にしてみれば授業中は自分と黒板の方を見ていてほしいんですよ。あるいはタブレット端末の画面と電子黒板と連動するとかね。
電子教科書にSNS的な機能を付けるという話もあるけど、教室の主導権という表現が適切なのか、先生がそれを確保できるかどうかというという話になってもおかしくないですよね。
松村:僕も大学で教えていますが、ただ講義を聞いているだけの「座学」では、学生はパソコンやスマートフォンを使ってこれから出てくる言葉の意味を調べたりしてます。
遠藤:そういうのもあるかもしれないけど、17%という結果を理解しようとすると、先生はこれから演じようとしているのに、舞台を変えられてしまった気分だと思うんです。だから教科書だけ電子化するんじゃなくて、教え方まで含めて変えていかなきゃいけない。
松村:ただ、僕の授業でも講義中にTwitterで質問を受け付けていますが、うまく使えば効率がいい面もあるんです。
── といわれますと?
松村:今は授業中にTwitterに向けてフリーでしゃべってもらって、僕も講義しながら教壇からそれを見ているんです。例えば、100人が受けている90分の授業で手を挙げて質問してもらうとなると、だいたい1人あたり10分くらいかかってしまうので、最大で9人の質問しか答えられない。それよりは100人全員にTwitterで3回質問を出させて、それをミックスしながら講義に反映していくというやり方のほうが意義があったりします。
質問だけじゃなくて、「部屋が暑い」と書かれたら、じゃあエアコンをつけにいこうかなという(笑)。昔の授業はそれすら言う術がなかったんですよね。今まで一方的だった講義でも、学生も交えたSNSでうまくトークを回していくゼミに近いスタイルに変えていけるかもしれません。
遠藤:それは電子教科書じゃなくて、コンピューター的な使い方ってことじゃないの?
松村:今のところTwitterはスマートフォンでやってもらってます。ともあれ教材じゃなくて、授業スタイルの話ですよね。
遠藤:そうした「電子教室」はカナダの会社が進んでいるなんて話もありますが、日本では教科書をタブレット端末にすることだけが話題になっている。本当は、システムごと、教科書の中身ごと教室ごと変わっていかなければいけない。
しかし、それはコンピュータの歴史を見るとそう簡単なことではないですよね。さっきの不動産屋さんの話じゃないけど便利なので使う、という自然さがないといけないと思うんです。そういうものは、全部一緒ではなくていろいろやっていくんじゃないですかね。
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