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Apple in Education : Hello Again! ― 第3回

iTunesで教科書を買うことがなぜ「革新的」なのか

2012年01月29日 12時00分更新

文● 飯吉 透

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 「このプレゼンテーションは、ジョブズがやるはずだったに違いない」――

 ニューヨークの観光名所でもあるグッゲンハイム美術館で行われたアップルの教育関連イベントで、同社ワールドワイドマーケティング担当上級副社長であるフィル・シラーが壇上で話す様子をストリーミングビデオで見ながら即座にそう思った。

 さらに言えば、「ジョブズがやるはずだった」というより、「ジョブズにやらせたかった」というほうがより正直な自分の気持ちだったかもしれない。2011年に発売されて世界中でベストセラーとなったジョブズの自伝の中にも書かれているように、ジョブズは教育分野においても大きな変革をもたらしたいと望んでおり、特に「価格の高すぎる学校教科書」を何とかしたいと考えていた。もちろん、「考えていた」だけではないだろう。少なくともその計画立案・実行については、実際にジョブズが存命中に関与していたであろうことは、今回のイベントにおける「iBooks 2」「iBooks Author」「iTunes U」などのアプリを発表したことからもほぼ確実だろう。

 プレゼンテーションの中でシラーは、15世紀半ばに印刷機が発明されて以来使われ続けてきた「紙の教科書」は、その内容は素晴らしくても、「(特に冊数が増えると)持ち運びが大変」「丈夫ではない」「インタラクティブではない」「(内容を)検索できない」「内容が最新ではない」などの問題を抱えているが、特に深刻なのは「価格が高すぎることだ」と指摘し、アップルが紙の教科書が抱えるこれらの問題の解決に、自社の製品とサービスを使って乗り出すことを表明した。


高騰する教科書の価格

 「教科書の価格が高すぎる」と言われても、日本ではピンとこないかもしれないが、米国には「教科書や学術書の高価格化」という大きな問題がある。例えば、大学の講義で使われている教科書を例にとってみれば、日本円に換算して5000円前後するものは当たり前であり、中には1万円以上のものもある。授業料よりも教科書代のほうが高くつくため、日本の公立短期大学に相当する地元のコミュニティーカレッジに通いたくても、経済的な理由で断念せざるを得ない学生が多い、という話もよく聞かれる。

 「日本の大学生に比べ、よく勉強する」と引き合いに出される米国の大学生は、教科書代として1年間に平均して約10万円以上を費やしているといわれ、さらに米国政府の調査によって、2002年から2007年にかけての5年間に、大学の教科書の価格は40%も値上がりしたことが判明している。

 このような状況の中、多くの大学生は大学生協などで売られている中古の教科書を買って利用することを余儀なくされている。このように教科書の再利用が進むことで、「新本」の教科書の売れ行きが停滞し、これがさらなる教科書価格の高騰を招く、という悪循環が続く。さらに、新しい版の教科書が刊行されていても、学生は安価な旧版の中古教科書を使い続けるため、最新の教育コンテンツが学生に届かない、という問題も深刻だ。

1月28日発売の「Mac People 2012年3月号」では、iBooks 2、iBooks Author、iTunes Uについて、さらに詳しく紹介されている。そちらもぜひチェックいただきたい。

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