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Apple in Education : Hello Again! ― 第1回

米国にiBooks 2が必要だった理由

2012年01月27日 13時00分更新

文● 前田 稔

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iBooks 2やiBooks Author、iTunes Uが米国の学生や教員に及ぼす影響は、教育体制の異なる日本人には、少しわかりにくいかもしれない。その背景にある米国の教科書事情を知れば、アップルの発表が意味するところを理解しやすいだろう。日本の教育の現場の最新事情と併せて見ていこう。

アップルの発表の背景にある
米国の教育現場が抱える事情

 初等・中等教育の例を挙げよう。各生徒が1人1冊の教科書を持つ日本と違って、米国では生徒の教科書は無償・貸与制度をとっている。教科書はクラスなどの単位で共有するものであり、仕様も5~7年程度の耐久性があるハードカバーだ。付随する資料も多く、非常に大きくて重い。

 教科書の検定制度がない点も、日本と大きく異なる。誰でも教科書を発行でき、州や学区が採択したリストの中から学校が購入する。教室内に備え付けの場合はもちろん、個人に貸し出される場合でも、とても家には持ち帰れない。一部の裕福な家庭の子どものみ例外的に自分専用の教科書を買ってもらえるが、大半の生徒は高価な教科書を個人で購入することはない。

 そうした背景を考慮すると、今回アップルが発表したプロダクトの意義がわかってくる。自分専用の教科書を何冊でもiPadに入れて持ち運べ、書き込みなども自由にできるという効用は大きい。価格面でも、今回の発表と同時にiBookstoreでリリースされた高校生向けの教科書は、14.99ドル以下に抑えられている。これには、各出版社による価格の上限内で教科書の品質を上げる競争を引き起こす効果がある。米国では、英語を母語としない移民の教育も社会問題化しており、そうした状況にも一石を投じるものだ。

 また、日本では教科書“を”教える側面が強い一方で、米国では教科書“で”教えるという違いがある。実は、米国では教科書を使う義務がない。補助的な教材も用いながら、分厚い教科書の中から事例解決に役立つ部分を参照するという使い方が中心だ。したがって、教える側が教材を利用/作成する力量次第で、学校や教員の教育水準も、大きく変わってくる。教える内容に関する制約が日本よりも弱く、教科書や教材の手段性が強い米国だからこそ、iBooks Authorを使って教材が大量に供給される意味は大きい。


1月28日発売の「Mac People 2012年3月号」では、iBooks 2、iBooks Author、iTunes Uについて、さらに詳しく紹介されている。そちらもぜひチェックいただきたい。

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