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Apple in Education : Hello Again! ― 第2回

電子教科書、iPadでいいのでしょうか?

2012年01月28日 12時00分更新

文● 藤原和博

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日本で電子教科書プラットフォームが公式に採用されるには、超えなければならない障壁がいくつもある。電子教科書の必要性の切実さが、教育現場の関係者以外に理解されていないことも、その障壁のひとつなのではないだろうか。そこで、現在も東京学芸大学の客員教授であり、過去に民間企業出身者として初めて公立中学校の校長を務めた経験を持つ藤原和博氏に、日本の学校教育の現状を聞いた。

電子教材の標準化は
日本の教育の喫緊の課題

藤原和博氏

 率直に言って、教材のデジタル化とその指導方法の標準化を急がないと、現在50代のベテラン教員がいなくなる10年後から、授業や生活指導の技術の継承は大変難しくなると思われます。

 一般にはあまり知られていないことですが、都市部、特に東京や大阪では、50代の教員の数が多く、30代、40代が少ないというアンバランスな成員比になっており、それを補うために20代の教員を大量採用せざるを得なくなっている現状があります。「ワイングラス型」の年齢構成と呼ばれるものですが、いま50代の教員が、今後10年で大量に定年退職すると、そのワインを注ぐ「器」の部分がなくなってしまうわけです。つまり、後輩に知識やノウハウを伝授する人がいなくなる。

 板書やノート作成の細かいノウハウ、生徒ひとりひとりへの学習フォローの仕方、複雑化する家庭の事情を背景にした親や地域との付き合い方、軽度発達障害の生徒への対応、イジメや事件など多様な局面での生活指導の機微──など、ベテランから若手に自然に引き継がれていたノウハウが途切れてしまうだけでなく、若手がやらなければならない仕事が、劇的に膨れ上がることになります。

 だからこそ、20代、30代の教員にデジタルツールという武器を持たせて送り出すことが必須なのです。授業のクオリティーをできるだけ均一化し、しかもひとりひとりに合わせて指導しやすいように。情報処理的な仕事は可能な限りデジタルツールに移行して、若手教員の人間としてのキャラクターがより発揮されやすい環境を整える必要があります。指導のデジタル化と生徒1人1台のモバイル端末による授業スタイルに早急に切り替えなければ、この変化の波を乗り切れないでしょう。

理想的な教育環境の実現には
現行iPadではまだ不十分

 そういうデジタルツールとして、いま最も使いやすいのはiPadだと思います。実際に、私が校長を務めた杉並区立和田中学校では、現校長の代田昭久氏の指導のもとに、「よのなか科NEXT」というプログラムでiPadを使用しています。

 しかし私は、そのiPadでさえも、過渡期の機器だと思っています。初等教育の低学年の生徒にとっては、iPad 2ですら重すぎるのです。私が教育現場にぜひ欲しいと思うのは、1枚の紙のような、折り曲げても大丈夫なB4サイズのディスプレーです。ちなみに、薄くて折り曲げ可能なディスプレーは、モノクロならもう実現できていますから、カラー化も時間の問題でしょう。ディスプレーの表面は、光沢のあるものよりも、アマゾンの「Kindle」のようなマットな質感のものがいいですね。これを、全生徒に配ります。

 もちろん、入力機能付きです。キーボードだけでなく、手書きの文字入力機能も必要です。漢字や英単語をかなり乱れた字でペン入力しても認識できるように。というのは、ドリルで計算したり漢字を書いたりしたら、「◯」とか「100点!」とか瞬時に答え合わせもしたいからです。こういう技術では、ニンテンドーDSなどが先行していますね。

1月28日発売の「Mac People 2012年3月号」では、iBooks 2、iBooks Author、iTunes Uについて、さらに詳しく紹介されている。そちらもぜひチェックいただきたい。

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