小規模オフィスに特化したOSを採用
プリインストールされるOSにも注目したい。Windows Server 2008 R2には、ミッションクリティカル用途に向けたDatacenter版、大企業に向けたEnterprise版やStandard版といったエディションがある。TS200vではこれらと異なる、Windows Server 2008 R2 Foundation(以下、Foundation版)となっている。市販はされず、サーバーにプリインストールされる形で提供されるエディションだ。
Foundation版のメリットは、他のエディションと比べてもっとも低価格な点にあるだろう。BTOが可能な各メーカーのWebサイトで、Foundation版を付けない場合とプリインストールした場合の金額差を平均すると、実質の単体価格はおおよそ3万円前後であることが分かる。Standard版(5CAL付属)の実勢価格は約10万円で、金額差はおおよそ7万円前後になる。
この価格差には、CALが大きく関係している。CALとは「クライアント・アクセス・ライセンス」の略で、Windowsサーバーにアクセスするために購入するライセンスのことだ。社員やPCの台数が多いほど、当然購入数が増えて金額は高くなる。しかし、Foundation版でCALは必要ない。
CALには大きく分けて2種類があり、サーバーにアクセスするユーザー(人間)単位で購入する「ユーザーCAL」と、PCなどのデバイス単位購入する「デバイスCAL」がある。前者はユーザーごとのライセンスとなるので、一人で複数台のPCを使用している場合に用いることが多い。後者はデバイスに対するライセンスとなるので、共有PCに用いることが多い。
このCALの種類に加えて「CALのモード」というものが存在する。簡単に言えば、CALをサーバーに持たせる「同時使用ユーザー数モード」、もしくはクライアントPCなどのデバイスに持たせる「接続デバイス数または接続ユーザー数モード」のいずれかを選択する。これらを組み合わせることで、4パターンの運用と購入方法が可能になる。
そしてWindowsサーバーを導入する際は、PCやサーバーの台数、社員の人数、PCの利用用途、社員1人が使うPCの台数などを考慮して、無駄なCALが発生しないような、効率的かつ低コストなCALの購入方法を考えなければならない。こうした手間が、そもそもCALが不要なFoundation版では発生しない。
では、CALが不要なFoundation版のアクセスライセンスはどこに与えられているかというと、サーバー上で作成した“ユーザーアカウント”に対してだ。ライセンス的には「ユーザーCALをサーバーに持たせる」という考え方に近く、各社員は好きなPCから、Foundation版を搭載したサーバーにのみアクセスできる。
ライセンス形態のほかに機能的な違いもある。Standard版と比較した場合は、下記の機能が省略されている。
- Hyper-Vによる仮想化
- Windowsサーバーの中核機能のみをインストールすることで、GUIを持たせず、コマンドプロンプトで操作するServer Coreインストール
- VPNのような機能で、社外からサーバーにアクセスしても、社内からアクセスしているような環境を構築するDirectAccess
- 一度アクセスしたデータをWindows 7 Enterprise版もしくはUltimate版、あるいはサーバーにキャッシュとして保存し、同じデータにアクセスする際に高速でデータを提供するBranchCache Hosted Server
また、ユーザー登録できるのは15ユーザーまで、Active Directoryで管理できるのも登録した15アカウントまで。さらにサポートするCPU数も1つまでに制限されている(ただしマルチコアCPUでも1基ならば問題ない)。メモリー容量は最大で8GB。そのほかにも、Foundation版が稼働しているサーバーはルートドメインに追加できるが、子ドメインに追加したり、子ドメインを作成することはできない。
一方、Standard版ではユーザー数に制限はなく、4CPUサーバーまで対応し、Hyper-Vでの仮想化も可能となっている。
ただ、Foundation版は以上のような機能やライセンス制限はあるものの、インターフェースは同じ作りになっている。たとえば、Windows Server 2008 R2は「ファイル サービス」などの「役割」の追加・設定に、ウィザード形式を取り入れることで、従来に比べれば手軽な設定が可能になっており、これはFoundation版も同じになっている。
こうして15人以下で利用する用途に限定し、低価格化を図っているのがFoundation版だ。同OSを採用したサーバーの導入にあたっては、基本的に
- サーバーを利用する社員またはPCが15を超えるかどうか
- 登録ユーザーが15までなので、他サーバーとの共存は難しい
という2点にだけ気を付ければよく、CALの購入方法を試行錯誤する手間が省ける点は手軽な印象を受けた。
また、登録ユーザー数が15を超えたり、子ドメインに追加してしまったなど、ライセンス制限を超えてしまった場合には警告画面を表示してくれるので、他のエディションよりはライセンス管理に神経質にならなくて済みそうだ。
この連載の記事
-
第39回
デジタル
堅牢性に自信あり! 「HP EliteBook 2560p」 -
第38回
ビジネス
タブレットでもCore i5搭載、「Eee Slate B121」の実力は? -
第37回
デジタル
高質感・高拡張性のプロ仕様、「HP ProBook 6560b」 -
第36回
ビジネス
パナソニックの「TOUGHBOOK CF-31」を試す -
第35回
デジタル
顔認証と省電力「HP 8200 Elite All-in-One」の実力検証 -
第34回
デジタル
薄さ10mm、HPの持ち運べる液晶「L2201x」を試す -
第33回
ビジネス
デルの「OptiPlex 990」を試す -
第32回
ビジネス
ピークシフト対応機の本当のところ -
第31回
デジタル
ついに第2世代Core i搭載した「ThinkCentre M91p」 -
第30回
ビジネス
富士通、次世代Atom搭載の全部入りスレートPC「STYLISTIC」 -
第29回
デジタル
マウスコンピューターの「MPro-iS210B」を試す - この連載の一覧へ