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“JAXAの真田ぁ~ず”に総力インタビュー!第6回

祝帰還!「はやぶさ」7年50億kmのミッション完全解説【完結編】

「はやぶさ」の夢は続く、開発者が考えるその先にあるもの

2010年06月17日 12時00分更新

文● 秋山文野 撮影●小林伸ほか イラスト●shigezoh 協力●JAXA/ジャンプトゥスペース

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「はやぶさ」後継機の開発にはおよそ170億円かかるといわれている。「はやぶさ」帰還とカプセル回収成功を受けて、政府が予算拡充に乗り出す旨の報道は見かけるものの、正式には未だ予算獲得のめどは立っていない

「はやぶさ」を継ぐもの

 「はやぶさ」のミッションは、探査機から小惑星サンプルの研究へ移行していく。探査機としては、後継機「はやぶさ2」構想がある。イトカワとは組成が異なるタイプの小惑星「1999JU3」からのサンプルリターンを目指して、2014年打ち上げが目標だ。


吉川 1999JU3は、地球と火星の間にあり、ほとんどイトカワと同じ軌道。地球に接近する小惑星です。「はやぶさ2」は探査機の規模がほとんど「はやぶさ」と同じなので、あまり遠くへはいけません。

 打ち上げはH2ロケットなので、搭載量は大きくなりますが、そのぶんの開発をやっている時間がもうないですし、ターゲットマーカとか、「はやぶさ」で培った経験はそのまま活かしたほうがいい。観測装置などは若干変わりますし、アンテナがおわん形からフラットになって見掛けも少し変わってますけど、その程度です。「はやぶさ」で問題があった点を直し、より確実なミッションにするということですね。


生命の起源に迫る、「はやぶさ2」

 イトカワのS型、1999JU3のC型など、目的の小惑星にはいくつかタイプがある。組成によって分けられ、C型は炭素を含んでいる。

JAXAで検討中の「はやぶさ2」では、イトカワより有機物や含水鉱物を含むと考えられるC型小惑星を目指す

吉川 「はやぶさ」のときは、目的地は必ずしもイトカワでなくてもよくて、何かの天体に行って戻ってくればよかった。しかし「はやぶさ2」では、科学的に行く意味のある天体を選びたい。小惑星探査の一番大きな目標は、太陽系誕生時の状況を知りたいということですし、生命の起源も知りたい。

 太陽系が生まれるときには原始太陽系成分というガス――ほとんどは水素とヘリウムです――が太陽になった。そして、残った岩石などの物質から惑星ができた。そこにはすでに有機物があったのですね。その有機物が生命を作る元になったわけです。それを調べ、生命の起源に迫ろうというのが「はやぶさ2」の目的。C型小惑星は有機物をたくさん含んでいる小惑星ですから、目的地として選ばれたわけです。

 「ミネルバ2」もぜひやりたいですね。「はやぶさ」のとき、ミネルバが表面に落ちなかったことが唯一残念なことでしたから。さらに、「はやぶさ」にはなかった衝突機というのも持っていきます。

 「はやぶさ2」ももちろん表面物質のサンプルは取るのですが、さらにそのあと、衝突機という機構を切り離します。降下している間に「はやぶさ」は退避。衝突機で人工的なクレーターを作るんです。まずはそのクレーターを観測し、そしてクレーターの中、地下のサンプルを採ります。これが新しい点ですね。小惑星の表面も、太陽の光や隕石の衝突で変質しているので、地下の変質していない物質を取りたいと。


期日が迫る「はやぶさ2」計画

 「はやぶさ」が築いた、探査機開発・運用の世界トップレベル技術。これを散逸させないためにも「はやぶさ2」の開発開始が必要だ。デッドラインはもう今年に迫っている。


吉川 「はやぶさ2」は、2014年、遅くとも2015年に打ち上げる必要があります。いずれにしても、今年から開発を始めないと間に合わない。残念ながら今年は予算がつかなかったので、制作には入れず、ごく小さな予算で研究的に始めています。

 少なくとも来年度からは本格的に制作に入りたいし、今年中に先行して時間のかかる部品は発注しないといけない。来年度の概算要求に向けて、「はやぶさ2」プロジェクトを入れてほしいと思っています。せっかく探査機の分野では世界最先端をいっているわけですから、これをぜひ日本の特徴として育てていきたいですよね。そのためには次に伝えないと。

プロジェクトサイエンティスト 吉川真准教授

 アメリカもヨーロッパも同じようなミッションを考えています。アメリカは大きな天体にばかり行っていた。

 ところが、日本がイトカワのような小さな小惑星に行ってみたら、非常に面白かった。そのことがわかっちゃったわけです。ここで日本が「はやぶさ2」をやらなかったら、アメリカがやってしまいますよ。

 せっかく日本が最先端を行ったのに、アメリカに追い越されてしまう。別に競争だけが大事ではないですが、最先端のことをやっている、というのはとても大事なことです。やっぱり一番じゃないとだめなことはあるんですよ。

 皆さんが興味を持ってくれれば、予算を付ける側も検討に入ってくれると思うのです。「はやぶさ」が受けた理由は誰も行ったこと、見たことがない天体に行ったというのが大きいと思うんですよ。こういう、行ったことのない天体というのは、本当の冒険ですよね。冒険をぜひ失わないでいたいですね。

NASA相手でも“ある分野では勝っている”が重要

 アメリカに比べたら、日本の宇宙予算は1/20くらいしかありませんから、すべての分野でアメリカに勝たなくてもいい。ただ、ある分野では勝っている、ということが重要。「はやぶさ」の予算は、探査機が約120億で、後は90~100億ほど。「はやぶさ2」でも、衝突機の部分でプラスアルファくらいです。

 それに比べて、アメリカやヨーロッパの予算では、人件費込みとか計算の基準が違う部分はあるにせよ、日本円で7~800億です。探査機本体の部分だけでも2、3倍ではないでしょうか。いかに日本の計画は格安かということですよね。

 さらにそのヨーロッパと共同で、「はやぶさマークII(マルコポーロ)」という計画もあります。「はやぶさ」の3倍くらいある大型の探査機で、イオンエンジンを6基積み、さらにそのひとつひとつが「はやぶさ」のイオンエンジンの4倍くらいあります。

 こうした探査機で、より遠くの天体からサンプルリターンを行ない、太陽系誕生時の物質をさらに調査しようと。もっと大型のローバもやりたい。これは、「はやぶさ2」の次にやりたいミッションなんです。そのためにも、まず「はやぶさ2」を実現したいですね。

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