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“JAXAの真田ぁ~ず”に総力インタビュー! ― 第5回

祝帰還!「はやぶさ」7年50億kmのミッション完全解説【その5】

「はやぶさ」は浦島太郎!? 宇宙経由の輸出入大作戦

2010年06月16日 12時00分更新

文● 秋山文野 撮影●小林伸ほか イラスト●shigezoh 協力●JAXA/ジャンプトゥスペース

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7年前、まさにM-Vロケットに積み込まれようとする「はやぶさ」(提供:JAXA)

■前回までのあらすじ

 「重病人」「満身創痍」「帆掛け舟」……タッチダウン後の通信途絶やイオンエンジンの寿命といった多くのトラブルは、「はやぶさ」にかなりのダメージを与えた。それでも、「はやぶさ」は還ってくる。


「今飛んでいる探査機が最優先」

 前回のイオンエンジントラブルのように、クリティカルな場面を幾度も迎えた「はやぶさ」のミッション。たとえば緊急対策会議ということになれば、各チームの担当者や運用関係者は急遽呼び出しを受け、全力を尽くすことになる。


矢野 スーパーバイザーとして、1運用1日と考えると、この7年間でのべ180日くらい、絶対量で半年くらいは「はやぶさ」と通信している時間をおくったと思いです。あらためて考えると結構長い時間ですね。


安部 スーパーバイザークラスの人、姿勢系や軌道決定、電気推進担当者、そして学生当番さんに、アンテナを見るとかコマンド打つといった運用支援の方を含めて、急に召集がかかることもあります。皆さん都合が合わないにしても、「夜ならなんとか」ということになれば、「今日は夜9時から会議やるよ」とか、土日にも召集されることはありますね。

 クリティカル時になれば、電気推進や軌動の方は自宅呼び出しもあったと思います。携帯電話で呼ばれてすぐ来てくれ、とか。そういう意味で、いつでも戻ってこられるようにしないといけないという気持ちはありましたね。

 電気推進の人たちは、運転中はずっとそうでしたし、我々も探査機がイトカワに滞在している間は、そういう感じでした。それぞれ自分の持ち場があって、自分の責任に関係するときには、常に探査機の情報をチェックして、いつでも駆けつけられるように待機しています。

近赤外分光器開発担当 安部正真准教授

 ただ、どうしても出席が必要な会議や、学会で自分が発表する際には離れざるを得ません。その場合は、何かあったら必ず誰か代わりに出てくれるよう手配したり、学会の発表に代役を立てたりする。さすがにまったく出席できないということはありませんが、うまいやりくりは必要ですね。

 探査機はいつ何が起きるかわからないので、優先順位はやっぱり探査機ですよ。もちろん、次の探査の準備であるとか、ほかの探査機の運用が重なる場合もありますが、今飛んでいる探査機、今クリティカルな探査機、それが一番優先度が高いので。

 ほかの人に「すみません」と言えば皆さん理解してくれる、そういう共通認識はありますね。障害時にしても「今はこういうフェーズなので、何があるかわかりません」とお願いするわけです。

 それでも帰ってこれるという希望がある限り、我々はいつも諦めないという立場でやってますから、日々の生活がタイトになってしまうのはしょうがないと思っています。


プロジェクトサイエンティスト 吉川真准教授

吉川 家族はもうあきらめてるみたいです(笑)。やっぱり、探査機ミッションは生活が不規則になりますしね。

 私はもともと天文学関係にいましたから天体観測をやるのですが、こちらは昼夜が逆転するだけで不規則というわけではない。

 一方、探査機は軌道に応じて運用だけでも昼だったり夜だったり、かなり変わるんですね。何か事が起こればただちに詰める必要もある。

 天文ミッションならば、打ち上げ後は地球の周りを回ってどんどんデータが来るからいいのですが、惑星探査は行くまでも長いし、還りも長い。実際のデータを取っている時間より、往復の時間のほうが長いので運用が大変ではありますね。

吉川氏の研究室には仮眠用の折り畳みベッドが常備されていた

齋藤 タッチダウンフェーズのとき、私は体重が3ヵ月で12kg減りました。食べて、飲んでいてもそうなんですよ。同じような方はほかにもいらっしゃいました。精神的な重圧としか言いようがないですね。

マルチバンド分光カメラ開発担当 齋藤潤氏

NASA時代の同僚は、不可能だと思っていた

矢野 NASAと比べると、日本の惑星探査の世界は絶対数とコミュニティの層の厚さがひと桁以上違います。ですから日本のほうが個人の責任と負荷が高いとは言えるかな。物量で勝てるところもあるから、それがベストのシステムを作ればいいんですけど、日本の惑星探査というのはそういったやり方ではありません。

 NASAができない、怖くて手を出せないようなことにどう切り込んでいくかを考える。NASAがやったことを10年後に後追いするとか、世界で2番目、3番目だけど、そのぶん少し性能がいいとか、そんなことをやっていたらぜんぜん追いつけないですよね。

 「はやぶさ」が世界で評価されてるのはまさにその点で、NASAからすれば『できるわけないだろう』と思っていたわけです。昔の(NASAの)同僚などからも、やんわりとですけどそういう意味のことを言われました。「まあがんばってね。Good Luck」「良い写真ができたら送ってくれよ」なんてね(笑)。

サンプラーホーン開発担当 矢野創准教授

 NASAだったら、深宇宙に行って、小惑星を探査して、物を取って還ってくるなんて、3つか4つのミッションに分けますよ。そしてそのひとつひとつに日本の3倍くらいの予算が付くでしょう。傍から見れば、この人数、この金額で、これだけのことを直列につなぐなんてクレイジーだと。

 大企業とベンチャー企業みたいなものですよね。ベンチャーが大企業のまねしても勝てないし、大企業がベンチャーのまねをする必要もない。目標は同じでも、手法や切り口は変えないと、ということは凄く感じました。

 宇宙研、JAXAのやり方だと、サイエンティストは机に座って論文を書いていればいいというわけにいかない。それだと物は宇宙に飛ばないので。欧米的な科学者の生活にはなかなかなれません(笑)。

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