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“JAXAの真田ぁ~ず”に総力インタビュー! 第6回

祝帰還!「はやぶさ」7年50億kmのミッション完全解説【完結編】

「はやぶさ」の夢は続く、開発者が考えるその先にあるもの

2010年06月17日 12時00分更新

文● 秋山文野 撮影●小林伸ほか イラスト●shigezoh 協力●JAXA/ジャンプトゥスペース

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「はやぶさ」プロジェクトマネージャ 川口淳一郎教授

■前回までのあらすじ

 イオンエンジン累積運転4万時間の旅を終え、「はやぶさ」は還ってきた。記事掲載時には結果が出ている、再突入とカプセル回収だが、直前の段階では、関係者も準備に追われていた。回収に協力するNASA SETIグループの担当者が「リングサイドで見物する」と楽しみにしていた再突入の裏側には、宇宙を経由する輸出入手続きがあったのだ。


 2010年6月13日、「はやぶさ」は再突入カプセルを分離し、その後大気圏で燃え尽きる。幾多の困難に見舞われトラブル続きのようにも見えたが、下記の表を見る限り、それでも「はやぶさ」は(記事作成時点では再突入前だが)ミッションをほぼすべてこなしていることがわかるだろう(表の点数は川口PMの採点)。


「はやぶさ」のミッション達成度

達成/イオンエンジン稼動開始(3台同時は世界初) 50点
達成/電気推進エンジン1000時間稼働 100点
達成/地球スイングバイ成功 150点
達成/自律航法にてイトカワとランデブー成功 200点
達成/イトカワの科学観測成功 250点
達成/イトカワにタッチダウンしてサンプル採取 275点
達成/カプセルが地球に帰還、大気圏に再突入して回収 400点
イトカワのサンプル入手 500点

「はやぶさ」ミッションの終わりはどこ?

 人によっては、それは帰還と再突入になるだろう。しかし、そこから小惑星のサンプル分析、研究がスタートする人もいる。


吉川 本当に「はやぶさ」は世界初なんですよ。月以外の天体に着陸して、そして離陸して戻ってくるのはアメリカですらやっていない。

 そもそも、何かの天体に行って、戻ってくるということ自体、スターダスト、ジェネシスに続いて「はやぶさ」で史上3例目。2つが着陸せずフライバイで戻ってきただけであるのに対し、「はやぶさ」はあの小さな探査機で着陸・離陸ですから。


サンプルは「ない」ことを確認するのもひと苦労

近赤外分光器開発担当 安部正真准教授

安部 「はやぶさ」ミッションにはいくつもの山があって、私にとっては、観測してひと通りの情報が揃って「イトカワというのはこういうもんですよ」ということを論文としてまとめた、それがひとつの区切りです。

 その後、探査機が実際に小惑星に行って、近赤外線分光器でのデータが取れて、また、まとめの論文が書けたことがもうひとつの大きな区切りでした。それで私はだいぶ満足していますが……。

 しかし、そうは言いながらも今度は「はやぶさ」の帰ってきた後のカプセルを開封して、サンプルを取り出して観察して分析に回す、あるいは保管する。こちらの仕事をやり始めたので、その作業がある程度区切りがつかないと、私としては「はやぶさ」はまだ終わりじゃない。

 サンプルが入っていなければそこで終わってしまうかもしれませんが、「ない」と発表することもなかなか難しい作業で、すぐには言えないんです。本当にないんですか、全部探しましたかということを確認しないといけない。

 あったらあったでそれを、貴重なサンプルが地球の大気に触れないように扱う、なくさないように扱うという非常に重要な作業がありますから、それをきちっとやりこなして、分析する人に渡す。また、そのデータをアーカイブして、世の中の人みんなが理解できるように整理する……1年では済まないような作業があると思っています。


齋藤 もともと東大に入ったのは、惑星探査がやりたかったからなので、研究室で指導教官にすぐ「惑星探査の研究会があったら紹介してください」と言いましたし。

 アポロ11号を生で見て、その後バイキングにも、ボイジャーにも惹かれてましたから、もう惑星探査はライフワークですね。その物語がひと区切りします。もちろん、まだまだ続きますけどね。サンプルのキュレーション結果を受けて、初期論文が出てきて、ミッションの最終報告書が出てきたら、ひとつの終わりと言えるのかな。


藤原 (「はやぶさ」帰還にあたっては)何もないです、というとおかしいですけど、ただ祈るだけです。もう本当に。それ以外ないです。まあ、だけどね、本心を言うと、帰ってくるとは思ってなかったという人が多いんじゃないかな。カプセルを担当していた人あたりは、内心は出番がないかも、と思っていたのでは。そのくらい難しいことに挑戦したと。そういうことですね。


川口 昨年の11月にエンジンが不調になったときには、まあ申し訳ないな、というのがありましたよね。映像作品「はやぶさ Back to the Earth」とか、せっかく作ってもらったのに申し訳ないと。

 もっとも、周りからプレッシャーを感じて運用しているというよりは、自分たち自身への挑戦というんですかね。「惜しくも……」なんて話はしたくもない。何が何でもという風に思わないと。そういう意味の甘さがないようにはしようと思ってますよね。

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