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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 ― 第4回

Kindleで英語版コミックスを販売中

個人電子出版の可能性──マンガ家 藤井あや氏に聞く

2010年05月21日 09時00分更新

文● まつもとあつし

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今回は自費出版でKindleに出してみたという話

もう待っていられない! 「出版社がやらないのなら自前でやる。」

 電子書籍を巡る動きが激しさを増している。

 北米ではGoogleの電子書籍サービス「Googleエディション」に対して、和解案への異議申し立てがほとんどなかったと報じられた。一方、国内では電子書籍出版社協会(電書協)が結成されたが、まだ具体的な電子書籍プラットフォーム(Kindleなど)への対応策を表明していない。筆者も含めて「いつになったら日本で電子書籍が読めるようになるのか?」という疑問に誰も答えられないのが実情だ。

 一方、読者の側からは「出揃ってきたデバイスで電子書籍を読みたい」という欲求がマグマのように高まっている。買ってきた本を分解して自らスキャンしたり、その作業を代行するという業者まで登場しているのはその表われだ(関連記事)。


自作品の電子出版に挑むマンガ家

 一方、逡巡するかに見える業界を尻目に、動き始めた著者もいる。

藤井あや氏近影

 藤井あや氏は「コミックJUNE」を中心に活躍している現役マンガ家。アマゾンの電子書籍デバイス「Kindle」に興味を持つ人たちが集まる「日本Kindleの会」の管理人でもある。そんな藤井氏は今年2月、作品を自らの手でKindle向けに電子書籍化し、Amazon.com経由で販売を始めた。

 今回は、既存の商業誌とKindleでのダイレクト電子出版の相違点、なぜiBooksでは作品をリリースしていないのか? 読者からの評判は? など、ひと足先に電子出版の第一線で活躍する藤井氏に「著者のホンネ」を聞いた。

藤井氏が管理人を務める「日本Kindleの会」。「世界中のあらゆる価値観の本を読みたい時に気軽に読める環境になって欲しい」とその設立の意義に記されている藤井あや氏の著作『Peach Boy MOMO&MIKAN』Kindle版の販売画面。当初はフジダシが日本語だったため削除されたが、フキダシ内を英語に差し替えることで対応した

ボーイズラブ作品と電子出版の熱い関係

――商業誌ですでに活躍されていた藤井さんですが、なぜKindleでのダイレクト出版に取り組んでみようと思ったのでしょうか?

藤井 実は1年ほど育児休業中でした。家事の都合もあり、締め切りに追われる商業誌のお仕事をお休みせざるを得ないなか、ちょうど話題になっていたKindle向けの出版であれば、同人誌のような感覚で取り組めるのでは? と考えたのがそもそものきっかけです。

――iPadの国内発売もまもなくです。プラットフォームをKindleにした理由を教えてください。

藤井 やはり、Amazon DTPの存在が大きかったです。HTMLやWordのファイルを用意すれば、誰でもすぐに電子書籍を発行することができます。ISBNも必要ありません。

Amazon.com経由での個人出版を可能とする「Amazon DTP(Digital Text Platform)」。日本からも利用可能でDRM(著作権保護)付与の有無も著者が選択できる

 また、ご存じのようにアマゾンは世界最大のネット書店で、ありとあらゆる本を扱っています。私が展開しているジャンルである「ボーイズラブ」(BL=男性同士の同性愛を扱った女性向け作品)系の書籍もすでにたくさんの品ぞろえがあります。これは魅力的でした。

 実は、最初はiPhone向けの書籍アプリを作り、App Storeに挑戦することも考えてみたのですが、ボーイズラブというだけで取り扱いがNGという様子だったので、見送った経緯があります。

ISBN

International Standard Book Number。世界共通で書籍を特定するための管理番号。日本でコードを取得するには「日本図書コード管理センター」への申し込みと設定管理費として約1万円が必要。一部報道で「Amazon DTPで電子書籍を発行するにはISBNが必要」と紹介されたが、藤井氏によるとAmazon DTPで出版するだけならISBNは必要ないという。ただし、後で出てくるソーシャルメディアでのPR連携の際には、コードを取得しておいた方が有利な場合もある

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