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新世代ストレージ戦国時代 第12回

LeftHandの名前が消えるのは寂しいが……

戦略価格でiSCSI市場席巻を目指すHP P4000 G2 SAN

2010年04月06日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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4月5日、日本ヒューレット・パッカード(以下、HP)はiSCSI対応ストレージ「Lefthand」の新製品を発表した。名称は「HP StorageWorks P4000 G2 SANソリューション」に変更になり、戦略的な価格引き下げも実現した。

発売から半年で
急成長したLeftHand

HP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 事業本部長 富岡徹郎氏

 発表会においてHP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 事業本部長 富岡徹郎氏は、まず昨年発表されたHPのインフラ戦略「Converged Infrastructure」について説明した。現在、多くの企業がインフラの刷新をメンテナンスのために多くのコストを費やしているが、これらをConverged Infrastructureによって、統合・シンプル化するという。これを実現するため、Converged Infrastructureのアーキテクチャでは、物理サーバー、仮想マシン、メモリ、ストレージなどのコンピューティングリソースをプール化・共有する「バーチャルリソースプール」を提供している。これを実現するストレージ製品の1つが、「HP LeftHand P4000」になる。

 HP LeftHand P4000は米レフトハンド・ネットワークスのスケールアウト型のストレージ。同社を昨年HPが買収し、ストレージ製品のラインナップに追加している。iSCSIを用いてストレージをクラスタ化することで、容量と性能をリニアに拡大できるのが大きな特徴。デルの「Dell EqualLogic PSシリーズ」はまさに仇敵といった存在だ。

 日本ではiSCSI製品の市場はまだまだ未成長の分野で、昨年は不景気の影響も色濃く残ったが、LeftHand P4000シリーズが快進撃を続けたという。結果として、買収前のレフトハンド・ネットワークスが9年かかって獲得してきた顧客の倍のユーザーを半年で叩き出し、IDC Japanの調べでは、2009年Q4では出荷台数、出荷容量ともに1位になったという。今後もこの勢いを駆り、「iSCSI市場において圧倒的No.1の地位を維持していきたい。iSCSIの市場を後から振り返ったとき、エポックメイキングなストレージになると確信している」(富岡氏)と意気込みを語った。

機能はアップ!価格は大幅ダウン

HP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 製品マーケティング本部 宮坂美樹氏

 続いて製品概要に関して説明したHP エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 製品マーケティング本部 宮坂美樹氏は、2010年の目標としてiSCSI市場の独占を改めて目標に掲げるとともに、「サーバーの仮想化が進みすぎて、ストレージは置いてけぼりになっている。管理性も悪くなっているし、コスト削減の効果が出ないところも多い」(宮坂氏)として、サーバー仮想化を最適化するストレージとして導入を推進していくことをアピールした。筐体またぎでデータを冗長化する「ネットワークRAID」や標準搭載されているスナップショット、シンプロビジョニング、リモートコピーなど、LeftHand P4000の各種機能の概要をおさらいし、続いて新バージョンについて解説した。

HP P4000 G2 SANの各種機能

 まず新バージョンでは名称が変わり、「HP Lefthand P4000」から、「HP StorageWorks P4000 G2 SANソリューション」に変更された(以下、HP P4000 G2 SAN)。名実ともにHP StorageWorksのブランドに取り込まれたわけだが、すでに定着し始めていたLeftHandの名前が消えるのはやや残念だ。

 次にハードウェアに関しては、プラットフォームが最新の「HP ProLiant G6」ベースに一新された。CPUはAMD OpteronからインテルのクアッドコアCPUであるXeon 5520に移行し、ハードディスクもSATA HDDからMid-Line SAS HDDに移行した。ここでいうMid-Line SAS HDDは、SASの冗長化されたインターフェイスを採用しているSATAベースのHDDを指す。

旧モデルからのハードウェアの比較。HP ProLiant G6ベースで、インテルCPUを採用する

 さらに、LeftHand P4000の特徴の1つでもあるネットワークRAIDの機能強化についても説明された。既存のLeftHand P4000のネットワークRAIDでは、いわゆるミラーリングで筐体間をまたいでデータを二重に書き込んでいたが、HP P4000 G2 SANではパリティベースのRAIDがサポートされた。これにより、ミラーリングに比べて、ディスクの利用効率が向上している。

パリティベースのRAIDをサポートしたネットワークRAID

 その他、HP P4000 G2 SANではBest Practice Analyzerによる構成チェックが可能になったほか、スナップショットやキャッシュ機能も強化された。

 とはいえ、HP P4000 G2 SANの最大の特徴は製品の機能や性能強化ではなく、大幅な低価格化だ。HP P4000 G2 SANシリーズは複数ノードをクラスタとしてまとめて購入することになるため、同等ラインナップのTB単価の比較になるが、16TBの「HP StorageWorks P4300 G2 16TB MDL SAS Starter SAN ベースモデル (BK715A)」で46%ダウンの330万円、10.8TBの「HP StorageWorks P4500 G2 10.8TB Virtualization SAN ベースモデル (AX696A)」で40%ダウンの570万円を実現している。

 「買収したレフトハンド社はベンチャーだったが、HP買収後は出荷台数が大幅が上回ったため、スケールメリットが働くようになった。広く中堅中小企業にiSCSIのメリットを訴求していくためにも、コストを大きく下げた」(宮坂氏)と戦略的なプライスダウンであることを明らかにした。今後はパートナー制度も拡充し、ますますの拡販に努めていくという。

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