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サーバー、ストレージ、クライアントまでまとめてパッケージ化

HP、VDIのために作られた“業界初”のソリューション

2010年07月21日 09時00分更新

文● 渡邉利和

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HPは7月20日、サーバ、ストレージ、クライアントを統合した仮想デスクトップソリューション「HP StorageWorks P4800 VDIソリューション」を発表した。既存ストレージからVDIに不要な部分を切り取り、単一のVDIソリューションとして提供する。

VDIの構成要素をワンストップで提供

 今回発表されたのは、VDI用に専用設計されたというSANストレージ「HP StorageWorks P4800 G2 63TB SAS BladeSystem SANソリューション(P4800 VDIソリューション)」と、これを利用した推奨構成となる「HP VDIリファレンス・アーキテクチャー」である。

業界初を謳うVDIソリューションの概要

 P4800 VDIソリューションは、既存のクラスタ型ストレージ「HP P4000 G2 SAN(旧称 Lefthand)」をベースにVDI専用に設計されたストレージとなる。P4000 G2 SANと同等の機能を追加オプションなしで利用できる一方、VDIに不要な部分は思い切って低コスト化を図り、価格をおよそ3割程度引き下げているという。構成としては、ストレージソフトウェア「SAN/iQ 8.5」を搭載した「HP StorageWorks P4800ストレージブレード(P4000sb G6)」×4台、「3G SASスイッチ」×2台、5UサイズのSAS接続型ストレージ「HP StorageWorks Modular Disk System 600(MDS600)」×2台から構成される。MDS600は最大70台のHDDを搭載可能で、450GB SASドライブを140台(MDS600×2台)搭載して総容量63TBとしている。なお、ストレージブレード4台を収容するために10Uサイズのc7000エンクロージャを使用するため、5UサイズのMDS600 2台分と合わせて、設置には20Uのラックスペースを必要とする。

HP VDIリファレンス・アーキテクチャー

 さらに、1000クライアント分を想定して準備された推奨構成である「HP VDIリファレンス・アーキテクチャー」では、P4800 VDIソリューションに加えて、ブレードサーバー「BL465c G7」を、デスクトップ仮想化サーバーとして24台、VMware Viewセッションブローカーとして2台、仮想化およびHPハードウェア管理サーバーとして2台の計28台を追加するため、c7000エンクロージャ×2台にブレードサーバーがフル搭載され、設置スペースは30U分となる。なお、HP VDIリファレンス・アーキテクチャーには、クライアントとして利用するシンクライアント端末1000台も含まれるほか、VDI用ソフトウェアとして「VMware View」、サーバー側で使用する「Windows Server」なども含まれ(クライアント用のOSライセンスは含まない)、価格は1億3490万円(参考見積価格)。クライアント1台当たりで考えると13万4907円になるといい、運用管理コストの軽減効果などを考えれば一般的なPCと比べても競争力のある価格設定だという。

VDIもオールHPで実現

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 事業本部長 富岡 徹郎氏

 発表会において登壇した同社のエンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 事業本部長の富岡 徹郎氏は、HPが全社的に取り組む「Converged Infrastructure」について、「ITの無秩序な拡大(スプロール化)に対して、ストレージ、サーバー、ネットワーク、電力・冷却などのトータルで挑戦していく」取り組みだとし、VDIもその一環と位置づけた。その上で、今回発表のVDIソリューションを「単に組み合わせただけではなく、VDI用に機能と価格の整合性がとれるVDIのためのソリューション」だとした。

日本ヒューレット・パッカード パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション本部 本部長 九嶋 俊一氏

 続いて、パーソナルシステムズ事業統括 クライアントソリューション本部 本部長の九嶋 俊一氏はVDI市場の現状を紹介した。同氏が特に強調したのがIAサーバーに搭載されるプロセッサのコア数の急激な増加。HP ProLiantサーバーの例でいえば、2006年のG5では2コアプロセッサだったのが、2009年のG6では6コアプロセッサ(AMD)へと「3年で1.5倍」になったのに対し、2010年のG7では12コア(AMD)で「1年で2倍」になっているという。この結果、「標準的な見積もりで1コア当たり仮想PCを7.5台ホストできるとすると、これまでの8コアのシステムでは60台のPCを集約できていたのが、G7で実現した24コアのシステムでは180台のPCを集約できる」と説明。運用管理者の負担軽減効果の大きさを強調した。

多コア化により、仮想化ビジネスが現実的に

サーバーやストレージ、クライアントまでVDIでは総合力が問われる

 また、仮想化ソフトウェアの主要ベンダーであるシトリックス、マイクロソフト、ヴイエムウェアのいずれとも長期に渡る戦略的なパートナーシップを確立していることも紹介し、ハードウェア・プラットフォームと仮想化ソフトウェアをワンストップで提供できる体制ができている点もHPの強みだとした。

日本ヒューレット・パッカード エンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 製品マーケティング本部 担当マネージャ 宮坂 美樹氏

 最後に製品の詳細を紹介したエンタープライズストレージ・サーバー・ネットワーク事業統括 ストレージワークス事業本部 製品マーケティング本部 担当マネージャの宮坂 美樹氏は、「VDIの課題とHPの回答」として、「コストと可用性のバランスが取れない」という課題に対して「最適な標準機器で構成し、価格を安価に」「P4000の先進機能、“ネットワークRAID”で可用性向上」、「サイジングができない/運用後の柔軟性がない」という課題に対して、「リファレンス・アーキテクチャーの提供で、サイジングを簡単に」「P4000の先進アーキテクチャーであるクラスタリングで柔軟性向上」という回答が示されたとしている。

P4000 G2 SANのメリットをVDIに活用できる

 VDIのサイジングに関しては、個々のクライアントで必要になる処理能力の見積もりが難しい(コア当たり何台の仮想PCをホストできるか簡単には判断できない)という問題があるが、HP VDIリファレンス・アーキテクチャーでは、「1000クライアントであればこのくらいのリソースを確保しておけば大丈夫」というHPのこれまでの経験に基づく推奨構成として提供されている上、サーバ/ストレージともにスケールアウト型のクラスタ構成となっているため、不足があった場合には柔軟に必要な分だけ追加できるため、「導入前に厳密なサイジングを行なうのではなく、まず導入して使い始めてから、実情に合わせて調整する」(九嶋氏)というアプローチが可能になるという。

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