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16PBまでOK!アイブリックスのソフトウェアを汎用サーバーに搭載

HPのスケールアウトNAS「X9000」はほしい機能が標準搭載!

2009年12月10日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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12月9日、日本ヒューレット・パッカードはペタバイトの拡張性を持つハイエンドNAS製品「HP StorageWorks X9000 Network Storage System」(以下、X9000)を発表した。スケールアウトNASの投入により、データ容量自体の増大やファイルストレージの管理負荷の軽減を進める。

ノンストップで容量と性能を拡張できるスケールアウトNAS

 HPは12月3日にサーバー、ストレージ、ネットワーク、管理ソフトウェア、電力・冷却インフラなどを統合する「Converged Infrastracture Architecture」を発表している。今回発表されるX9000もこのConverged Infrastructure Architectureでのストレージの一角をなす製品で、ファイルストレージ製品であるXシリーズのハイエンドモデルにあたる。

HP StorageWorksのポートフォリオ。ファイル系のストレージではX9000がハイエンドにあたる

日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージワークス事業本部 事業本部長の富岡徹郎氏

 X9000は同社が2009年8月に買収したアイブリックス(IBRIX)の製品をベースにしている。挨拶に立ったストレージワークス事業本部 事業本部長の富岡徹郎氏は「買収直後から問い合わせをいただいており、米国ではすでに大手の導入事例を持っている」と述べ、iSCSI対応のLefthandシリーズとともに、拡張性や統合化を求めるユーザーに向けたHPの新しいストレージ戦略の重要な製品であることをアピールした。

米ヒューレット・パッカード ストレージワークスディビジョン ユニファイドストレージ ディビジョン ワールドワイド ビジネスデベロップメント マネージャー ピート・ブレイ氏

 続いて米HPのピート・ブレイ氏が現在企業が抱えているストレージにまつわる課題について説明。「多くのユーザーはIT予算の70パーセントが運用や保守に使われているという課題に直面している。また、18ヶ月で倍増するデータの氾濫も大きな悩みとなっている」(ピート氏)。実際、HP自体もSnapfishという写真共有サイトを運用しているが、2007年6PBだった容量が、2009年には15PBに拡大しているという。

 こうした課題に解決するのが、容量と性能をノンストップで拡張できるスケールアウトNASだ。スケールアウトNASは単一のネームスペースでペタバイトクラスまでの容量に対応できるストレージで、複数のストレージをクラスタ化して仮想化したボリュームを構築するため、クラスタ型ストレージとも呼ばれる。X9000はアイブリックスの「IBRIX Fusion」という高性能並列ファイルシステムをHPの汎用ハードウェアに搭載し、アプライアンス化したもの。「もはや、容量拡張のために箱を買い換えるというフォークリフトアップグレードは必要ない」(ピート氏)とスケールアウトのメリットをこう表現する。

最大16PBまで拡張可能!豊富な機能を標準搭載

 X9000は単一のネームスペースで最大16PBまでの拡張性を持っており、容量と性能をリニアに拡張できる。また、ポリシーに従いデータの異なるストレージに保存し直す「データの階層化管理」、特定ノードへのアクセス集中を回避するためにデータを再配置する「リバランシング」、プライマリサイトからリモートサイトへのデータの複製を並列的に行なえる「リモートレプリケーション」などの機能も搭載されている。

X9000では、シングルネームスペースでペタバイトクラスまで拡張できる

ゲートウェイ、スケールアウトアプライアンスモデル、大容量ストレージモデルの3製品が提供

 製品は管理サーバー(ゲートウェイ)と複数のストレージ(SANやNAS)を組み合わせることで構成され、ゲートウェイのみのX9300も提供される。製品の仕様と希望小売価格は以下のとおり。

HP StorageWorks X9300 Network Storage Gateway
HP StorageWorks MSA/EVA/P4000などのSANストレージとともにスケールアウトNASを構成する2Uのゲートウェイ。1/10Gbps Ethernet、Infinibandなどがサポートされる。
HP StorageWorks X9320 Network Storage System
X9300のゲートウェイ2台とストレージをパッケージにしたモデルで、2モデルが用意されている。SASドライブを採用し、パフォーマンスを重視した「HP X9320 Performance Model」が2181万9000円(税込)から。SATAドライブ採用で容量重視の「HP X9320 Capacity Model」が1887万9000円(税込)からとなっている。
HP StorageWorks X9720 Network Storage System
大容量ストレージを必要とするユーザー向けで、ゲートウェイに加え、2台のブレードサーバー、82TBのストレージを最小構成とする。1694万7000円(税込)からで、12月下旬から出荷開始。

日本ヒューレット・パッカード ストレージワークス事業本部 ビジネス開発担当マネージャーの高橋宏人氏

他社でオプションの機能もすべて標準搭載する

 X9000の機能について説明したストレージワークス事業本部 ビジネス開発担当マネージャーの高橋宏人氏は「個々のハードウェアで容量の限界を気にすることはありません。ファイルサーバーを統合管理することも可能で、オンラインでのアーカイブも実現します」とX9000のメリットをアピールした。また、他社でオプションとなることの多い、階層化管理やレプリケーション、リバランシングなどの機能をすべて標準搭載しているのも大きなメリット。「高価な古いシステムからX9000に移行するためのマイグレーションも合理的な価格で提供する」(ピート氏)とのことで、他社製品からのマイグレーションソフトをアプライアンスに同梱する形で提供することを検討している。

 スケールアウトNAS自体は決して新しい概念ではないが、X9000ではHPならではの汎用サーバーやディスクアレイ装置をスケールアウトNASに仕立て上げた点、さまざまなインターフェイスが選択できる点、そして豊富な機能を標準搭載している点などが、競合と比べた優位点となる。大手のHPが参入したことで、スケールアウトNASの市場がさらに活気づくと予想される。

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