デジタルガレージが、Twitter社とパートナーシップを結ぶことになった背景には、ブログ検索の「テクノラティ」があったという。ブログ検索は便利だが、一方で「検索されるまでには、すでに古くなっている」(林氏)という課題があったからだ。たしかに、チャットやスカイプはリアルタイムだが、ネット全体は時間というものについて、目をつぶっている。
ウェブは本来、リアルタイム性のないメディアのようにも見える。グーグルは、世界中の何十億ものページをクローリングして、それに索引を付けることで価値を生じせしめている。そこで生じる商業的価値のことを「グーグルジュース」(google juice)と呼んだりする。しかし、それはどうも生ジュースと呼べるほど新鮮なものではないようだ。
この静的な「インターネット観」に対して、本当は、ネットはリアルに動いているという意識が強くなってきている。グーグルだって、「Google Wave」はリアルタイムについての彼らなりの答えの1つだろう。グーグルの強烈にパフォーマンスの高いクラスターアーキテクチャも、リアルタイムを指向するものだといえる。ネット自体は自由に世界中で更新されているが、検索エンジンというアクセス手段がリアルタイムではないのだ。
そんな中で、デジタルガレージは「Be part of our DYNAMIC ECOSYSTEM」(動的生態系の中にあれ)ということをうたっている。
林氏によると、Twitterは「リアルタイムウェブへのゲートウェイ」になるという。リアルタイムウェブというのは、まさに動的生態系の中のウェブの側面だろう。Twitterがリアルタイムウェブの始まり、あるいは、リアルタイムウェブの端末(コンソール)のようなイメージだろうか(Twiiter自体をすでに「Real-time web」と呼んでいたりしているわけだが)。
そんな話をしていたときに、林氏の口から出てきたのが、「正しい《原始インターネット》の時代」という言葉だったのだ。
Twitterはネット革命第2ラウンドのゴング?
たとえば、Twitterによって「クリック・アンド・モルタル・パート2」みたいなことが起こる。クリック・アンド・モルタルというのは、ネット通販の初期に、クリック(ネット)とモルタル(店舗)の両方をやるべきだといわれた議論である。そんな話が、Twitterによって(たぶん偶然に)ふたたび見えてきた。
わたしがイメージしたのは、カレー専門店「デリー」だ。有名なインドカレーの老舗がTwitterのIDを持っている(@DELHI_JP)。わたしもフォローしているのだが、「プレミアムカレーセット、残48セットです」などといったつぶやきが飛んでくる。知らないお店ならスパムだろうが、デリー好きにとっては、そりゃ買いにいかなきゃという気分になる。
これがモルタル側の、文字通りリアルタイムで管理されている在庫管理や顧客管理などのデータベースとリンクすれば、さらにいろいろなことが可能だろう。
Web 2.0は、いわばネットバブルの補習問題のようなものだったのだ(事実、ネットバブルを乗り切ったものを整理してみたらこうなったと、ティム・オライリーは言っている)。それまでに積み重ねられたものに、どうしても我々の思考は制限されがちである。それに対してTwitterは、15年ほど前のように、ピュアに、しがらみなく、自由にネットを発想し直してみるべきだと教えてくれている。つまり、「正しい《原始インターネット》の時代」ということなのだろう。
Twittterはコミュニケーション革命もさることながら、ネット革命そのものの、第2ラウンドの開始を告げるゴングのようなものなのではないか。
デジタルガレージ林氏へのインタビューの詳細は、1月25日(月)20時~および2月1日(月)20時~の2回に分けて、TOKYO MX NEWS内の「東京ITニュース」コーナーにて放送されます。また、東京ITニュースは、放送と同日にYouTubeの「TOKYO MXチャンネル」でも公開されます。ぜひご覧ください。