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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第35回

AMD版CULV?「Congo」を採用したHP dm3aの魅力は?

2009年11月09日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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性能はいいが「発熱」は大きめ
バッテリー重視ならインテルモデルをお勧め

 さて、性能面はどうだろう? Windowsエクスペリエンスインデックスは3.4。グラフィックがボトルネックとなっているが、低いのはAero用の値であり、ゲーム用は4.1とより高くなっている。9万円のパソコンとしては、相対的に高めであると思ってかまわない。

Windows 7でのWindowsエクスペリエンスインデックスの値

Windows 7でのWindowsエクスペリエンスインデックスの値。まんべんなく十分な性能の値になっているのが印象的。Aero向けの数値のみ低いが、利用時にそれをはっきりと感じることはほとんどない

 なお、Windows 7とVistaでは、エクスペリエンスインデックスの指針が変更になっており、値自体を直接比較することができなくなった。高性能マシンでないと、両OSでのスコアに大きな差は出にくい傾向にあり、このクラスの製品ならば「7の方が少し高めになる」程度の違いではあるようだが、これまで本連載で採り上げたVista搭載機のスコアと比較する場合には、「多少違いがある」ことを頭に置いて、参考程度にとどめていただけるとありがたい。

 バッテリー駆動時間の方は、「性能重視」であるせいか、さほどふるわない。カタログ上は6時間(MobileMark 2007による)となっているが、「BBench」でのテスト結果は2時間半から3時間弱というところ。無線LANでネットをヘビーに使い続けると、3時間前後動作すると思えばいいだろうか。モバイルというにはつらい。

バッテリー駆動時間測定結果

バッテリー駆動時間測定結果。「BBench」にて計測

 なお、デフォルト設定である「HP推奨」設定は、性能・省電力性能の面で、かなりバランスがとれた設定と感じた。「省電力」重視の設定との間にこのくらいの差しかないなら、「推奨」のままで使ってよさそうだ。

 同様に、ソフト面ではいろいろな工夫を感じる。例えば、専用の「HP Advisor」というユーティリティーでは、各種セキュリティーやアップデートの状況、設定などをまとめて見ることができる。ウインドウサイズが大きすぎることをのぞけば、情報もシンプルにまとまっており使いやすい。特に、パソコンに不慣れな人には有用なはずだ。

パソコン内の状況を一括管理する「HP Advisor」

パソコン内の状況を一括管理する「HP Advisor」。アイコンサイズなどが大きく、ちょっと邪魔にも感じるが、表示内容はシンプルでわかりやすい。コントロールパネルの使い方を覚えるよりは楽だろう

 同様のツールは国内パソコンメーカーでも用意しているが、各種アプレットに情報が分散している場合が多く、これほどは見やすくない。ただし、同様にプレインストールされているランチャーソフト「PC Dock」や、AVデータ管理ソフト「MediaSmart」は、OS標準機能より使い勝手が上とは感じがたく、あまりいい印象を持たなかった。

ランチャーソフトの「PC Dock」

ランチャーソフトの「PC Dock」。正直、素直にタスクバーを使った方が便利だと思う。海外メーカーのPCではこの種のソフトがよく導入されているが、海外ではそんなに評価が高いのだろうか?

 発熱はかなり多めだ。気温も下がりだいぶ涼しくなった昨今だが、それでもかなり「熱い」と感じた。アルミのパームレスト天板にはかなりしっかりと熱があった。逆に底面に関しては、実際の温度ほど熱くは感じない。中央部が多少くびれるような構造になっているので、膝の上で使った場合、熱い部分が接する割合が少なめになりやすいからのようだ。

各部の温度 放射温度計による測定、外気温は22℃。フルパワー時のデータはH.264の動画再生時に計測
底面排気口 パームレスト左側 パームレスト右側 キーボード左側 キーボード右側
アイドル時 約40度 約34度 約33度 約33度 約31度
フルパワー時 約42度 約36度 約33度 約34度 約32度

 底面がこのような構造になっているのは、後ろ半分がバッテリーで、前半分がメモリーやHDD、無線系カードなどにアクセスするためのベイになっているためだ。これらにドライバーだけで簡単にアクセスできるのはありがたい。

本体底面

本体底面。手前にパーツ類が集まっており、メンテナンス性は驚くほどよい。メモリーやHDDの交換がすぐに行なえるのは、HP製品の伝統と言えるかもしれない

 一方でこの構造は、発熱も含め「操作感」の点でマイナス要素になっている。利用している際、熱と「振動」をかなり感じるのだ。手の下には、発熱の多いプロセッサーと無線LANカード、そしてCPUの冷却ファンとHDDがある。それらの回転の振動と熱が、はっきりと手に伝わってくる。正直にいえば、筆者には特に振動がかなり気になった。試用機の個体差である可能性もあるが、気になる方は店頭デモなどで確認していただきたい。

 トータルに見ると、dm3aにはあまり高得点をつけにくい。デザインはよく、コストパフォーマンスも良好だが、これまで述べたように、使用感があまりよくないためだ。日本のノートの水準から言うと、この重さ・大きさで光学ドライブが外付けである、という点も気にかかる。

 冒頭で述べたように、dm3にはインテル製CPUを搭載した「dm3i」もある。特にバッテリー駆動時間を気にするなら、そちらを選んだ方がいいだろう。同一サイズ・同一バッテリーを使っていながら、Core 2 Duo/GS45 Expressモデルの場合、カタログ上のバッテリー駆動時間は「10時間」と、dm3aに比べ4時間も長いからだ。

 dm3aの美点は、やはりこの価格にしてはGPU性能が高い、という点にあるだろう。そう考えると、モバイルというよりは「メインマシン」向け。それならば、バッテリー駆動時間はさほど問題ではないだろう。

オススメする人
・デザインの良いノートパソコンを買いたい人
・ハイビジョン対応ビデオカメラの管理を、低価格なパソコンで行ないたい人
HP Pavilion Notebook PC dm3a の主な仕様
CPU Athlon Neo X2 L335(1.6GHz)
メモリー 2GB
グラフィックス AMD M780Gチップセット内蔵
ディスプレー 13.3型ワイド 1366×768ドット
ストレージ HDD 250GB
光学ドライブ なし
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n
カードスロット 5in1メディアスロット(SD/SDHCメモリーカード、メモリースティック/PRO、xDピクチャーカードなどに対応)
インターフェース USB 2.0×4、HDMI出力、アナログRGB出力、有線LANなど
サイズ 幅326×奥行き230×高さ22~29mm
質量 約1.9kg
バッテリー駆動時間 最大約6時間
OS Windows 7 Home Premium
予想実売価格 9万円(11月中旬発売予定)

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」「クラウド・コンピューティング仕事術」(朝日新聞出版)。


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