新型インフルや冷夏など、環境も景気に影響
同じエコポイント制度の対象となる冷蔵庫も大容量モデルが好調だ。家電メーカーや家電量販店が指摘するのは、エコポイント対象機種が集中する401リットル以上の冷蔵庫の好調ぶり。社団法人日本電機工業会(JEMA)によると、今年上期における冷蔵庫の出荷台数は前年同期比2.7%減とマイナス成長だが、401リットル以上の大型冷蔵庫は6.5%増と、前年実績を上回っている。
逆にエコポイント制度の効果が生かされなかったのがエアコンである。これは各社の決算に大きく響いている。
社団法人日本冷凍空調工業会(JRAIA)によると、今年9月における家庭用ルームエアコンの出荷台数は12.5%減の33万7195台。7月も16.8%増の130万8020台、8月は28.9%減の41万8823台に留まった。
冷夏が大きく影響しており、エコポイント制度の効果が発揮されなかったといえる。
エアコン業界内には、「景気、売る気、買う気、人気」よりも「天気」に左右されるという言い方があり、買う気(エコポイント制度)よりも、天気(冷夏)が勝ったという構図だ。
一方、爆発的な売れ行きを見せているのが空気清浄機だ。
JEMAによると、2009年度上期の出荷台数は64.7%増の60万6000台。9月の販売実績は前年同月比105%増の21万台と2倍の出荷台数に達し、実に上期の約1/3の販売数量を、1ヵ月で売り切った。
新型インフルエンザの広がりとともに空質に対する関心が高まり、さらに、湿度コントロールが風邪にも有効であるという認識が浸透してきたことで、高機能モデルや加湿機能搭載モデルが増加。出荷金額では、今年9月の実績で120.3%増、上期でも119.2%増と、さらに高い伸び率となっている。量販店店頭では品薄が懸念される状況となっている。
ちなみに加湿機も上期の販売台数実績で42.0%増と前年実績を大きく上回っている。
PCはWindows 7発売前の9月でも前年を上回る
パソコンについては、JEITAの調べによると、上期実績で前年同期比7.6%減の405万2000台。個人需要は比較的堅調だが、企業におけるIT投資予算の抑制が響いている。
だが、今年の傾向で特筆されるのは、Windows 7発売前の買い控えがほとんど見られなかったことだ。
むしろ10月のWindows 7の発売を控えた今年9月の統計では、前年同月比2.2%増の83万台と前年を上回っているのだ。
「現在、日本国内で利用されている7000万台のPCのうち、3400万台はそのままWindows 7が動作する」(マイクロソフトの樋口泰行社長)というように、既存のPCのスペックでも動作するのがWindows 7の大きな特徴。
そのため、処分価格で販売されていたWindows Vista搭載PCを購入したり、これらモデルのなかでは、Windows XPとWindows Vista、Windows 7を選択できるというオプションが用意されているものもあり、買い得感がさらに高まったことなどが影響している。
Windows 7発売後の売れ行きも順調であり、業界内では、この勢いを年末商戦にまで結びつけることができるかどうかが焦点となっている。
このように、電機大手の決算内容が、回復基調に転じたものの、力強い勢いが感じられないのは、市況の不透明感とともに、製品分野ごとに大きな差があるからだ。
消費が本格的な回復を見せていないなかで、業績の改善に向けては、しばらくは構造改革頼りの状況も浮き彫りになる。構造改革によって、雑巾を絞りきる前に、需要回復に期待したいところだ。
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