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これからの電源ユニットのトレンド「80PLUS認証電源」とはなにか?

2009年06月30日 20時00分更新

文● 宇野 貴教

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 パソコンの電源ユニットは、今さら言うまでもなくCPU、マザーボード、ビデオカード、HDDなどの内部周辺機器に電力を供給するためのものである。日本の家庭用コンセントは交流(AC)100Vが供給されているが、PCのパーツは直流(DC)3.3/5/12Vを用いており、電源ユニットはこの交流から直流へ変換、および電圧の降下調整を行なっている。

 パソコンは使用される電力量が一定の範囲内で変動するため、電圧が落ちないよう一定の電圧を確保する必要がある。これが電源ユニットの出力電力のスペックで、大ざっぱではあるが、パソコンの使用電力が電源ユニットの規定出力を超えると、規定電圧を確保できなくなる。つまり、電源ユニットは組み上げるパーツの総電力量を考慮した上でチョイスする必要があるわけだ。

80PLUSのロゴ。対応製品のパッケージにはこのロゴが大きく印刷されているので、店頭でチェックする際もわかりやすい

 電源ユニットのスペックで見るべきポイントは総出力電力、3.3/5/12Vの各ラインの出力電流だが、最近はこれに加え「80PLUS」というキーワードが登場している。80PLUSとは、80PLUSプログラム(http://www.80plus.org) が推進する電気機器の省電力化プログラムで、要約すると「交流から直流に変換する際の変換効率が80%以上」ということを表わしている。

 交直変換回路はコイルやコンデンサなどのパーツから構成されているが、当然これらは電力を消費しているため、変換効率は通常の電源ユニットだと70%未満ぐらいが平均だ。つまり、電源ユニットを除いたパソコンのパーツが100Wの電力を消費する場合、実際の消費電力は約143W(70%の場合)というわけだ。合計143W-パーツ100W=43Wが電源ユニットの消費電力だが、これはすべて熱に変換される。電源ユニットの多くが口径12cmの大型ファンを搭載しているのは、この熱を逃がすためだ。

 先ほど例として出したパソコンパーツの総電力100Wという数値は、自作ユーザーにとってはかなり少なめなもの。クアッドコアCPUとハイエンドビデオカードのような構成だと300W超えが当たり前なので、変換効率70%の場合は電源ユニットだけで100W以上の熱を出すことになる。電源ユニットの出す熱がいかに大きいかわかるだろう。

左は80PLUS認証のENERMAX「EES500AWT」、右は 某社製500W電源をサーモグラフィで見たところ。ファンを停止して10分通電後の温度分布を表示しているのだが明るいほど熱を発している。これを見れば変換効率の大切さを痛感できるはずだ

電気代削減だけじゃない!
静音効果も大いにアリ

 80PLUS認証製品は、その名のとおり変換効率80%以上を実現している製品だ。無視できない数値に達した電源ユニットの消費電力をある程度抑えることに成功した製品と理解すればいいだろう。通常の電源ユニットの変換効率を70%とした場合、これを80PLUSの最低基準となる80%にすれば損失分は30%から20%へ、つまり電源ユニットの消費電力を1/3も減らすことができる。

 先ほどのパーツ電力100Wの例なら、電源ユニットによる損失分が43Wから25W、つまり18Wの電力削減だ。電力が減れば電気代の節約、そして冷却に必要なパワーも軽くて済む。電気代を抑えたい人だけでなく、静音志向の人にも魅力的なものと言えるだろう。

 ここで、通常の電源から80PLUSの電源に交換した場合の電気代削減を数値化してみよう。ミドルスペッククラスのパソコンを想定し、変換損失の軽減を25W、パソコンの使用時間を1日5時間、2年間使った場合と仮定。電気代を1000Whにつき23円として計算すると、2年で約2100円の電気代削減となる。もちろんハイエンドユーザーや、2年以上使い続けるならこの数値はアップするので、今の電源を80PLUS認証電源へ買い換えるのは大いにありと言えるだろう。常時稼動が前提のパソコンならばなおさらだ。
 現在、 80PLUSには以下に挙げる4段階のランクが用意されている。
 その違いは表の通りだ。

変換効率と80PLUS認証ランクの関係

 
負荷率 80PLUS
(スタンダード)
80PLUS BRONZE 80PLUS SILVER 80PLUS GOLD
負荷20%のとき80%82%85%87%
負荷50%のとき80%85%88%90%
負荷100%のとき80%82%85%87%

 電源ユニットに使われている素子の特性上、変換効率がもっとも高くなるのはおよそ負荷45%~70%くらいまでの間にもかかわらず、負荷20%や100%の状態でも変換効率80%以上を求められるという、かなり厳しい規格であることがわかる。ちなみに80PLUS GOLDを取得するのは極めて難しく、今のところコンシューマ向けの製品は登場していない。ただし、80PLUS GOLDの認証を受けた製品自体は各社に存在する。(『「80PLUS GOLD」認証の電源を各社が展示!』を参照)。

「80PLUS」の認証を受けたことを示すロゴマーク。4段階のランクがある

 このようなランク分けがある以上、上位ランクの製品を狙いたくなるが、当然ながら製造コストが上がるので、その分価格に跳ね返ってくる。実際の購買時には、予算との兼ね合いが必要になるだろう。コスト重視ならスタンダード、効率重視ならBRONZE、予算が許すならSILVERも視野に入れるのがベターと言えそうだ。

(次ページへ続く)

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