fladdict 深津貴之氏
「ToyCamera」や「QuadCamera」など、カメラアプリを中心とした作品を発表するインタラクティブデザイナー。個人で国内カメラアプリのトップシェアの一角を占める。QuadCameraは特に海外での評価も高く、The New York TimesやTime、Hotwiredといったオンラインメディアや多くのブログでも紹介されている。今後は、国内アプリのブランド化や海外展開、アプリケーションユーザインターフェースなどのコンサルティングを始める予定。自身のサイトはこちら。
[注目ポイント]外部機器との連携
プッシュ通知機能やアプリ内課金も魅力ですが、iPhoneをいちばん面白くするのは外部デバイスとの連携が解禁されたことだと思います。
iPhone OS 3.0では、Dockコネクタによる接続か、Bluetoothによって、外部のハードウェアとデータをやりとりできるようになります。この拡張は、iPhoneを2種類の方向に劇的に進化させるでしょう。ひとつは、iPhoneの利便性をハードウェアが拡張する方向。もうひとつは、逆にiPhoneがあらゆるハードウェアを拡張する方向です。
前者としては、iPhoneの持っていない機能、例えば温度や水圧の感知といった特殊なセンサーなども、今後はデバイスにより自由に拡張できるようになります。
これはiPhoneの進化のコンセプトとして、とても優れていると思います。というのも、iPhone本体のシンプルさを保ちながら、病院やダイビングなど用途に応じて、iPhoneを高度にカスタマイズできるからです。例えば、赤外線を発するデバイスを追加するだけで、iPhoneが電化製品の大半を制御できる万能リモコンになるわけです。
後者のハードウェアを拡張させるという点については、iPhoneの操作性と利便性があらゆるデバイスを拡張する、という考え方です。例えば予算の関係でCPUが足りないようなガジェットであっても、Bluetoothさえ積んでおけば、iPhoneのマシンリソースとして扱い、iPhone側で複雑な処理を行なって、その計算結果を受け取ることができます。
安物の電子楽器とiPhoneを接続することで、扱える音色やエフェクトを大幅に拡張したり、録音/編集機能を追加することが可能になるわけです。今後の電子機器は、旧世代だったり低予算だったりで機能的に限界があっても、通信仕様さえ決めておけば、iPhone側でソフトウェア的に機能を拡張できるでしょう。これはとても面白いコンセプトだと思います。
iPhoneと外部デバイスの通信は、電子機器にとって新しいコンセプトをもたらすと思います。ハードウェアとソフトウェアがより分離し、Amazon APIのようなウェブサービスやマッシュアップといった概念が、デバイスレベルに降りてくるわけです。
機能と設計をシンプルにし、仕様をしっかり公開さえすれば、電子機器はユーザーの用途に応じて無限のカスタマイズと進化ができる、というのはとても面白いと思います。このような概念が普及していくと、既存の家電が抱えていた問題点──アレもコレもと機能をゴテゴテと追加する風潮に一石が投じられるのではないかと思います。
パンカク 代表取締役社長 柳沢康弘氏
パンカクはiPhone/Android/Oviなどのプラットフォームを利用して、全世界の携帯電話に対してアプリケーションを開発・提供している企業。代表作である3D対戦ゲーム「LightBike」は今年2月に米AppStoreの有料アプリランキングで1位を獲得し、現在有料版と無料版あわせて150万ユーザにダウンロードされている。企業のサイトはこちら。
[注目ポイント]アプリ内課金
アプリ内課金により、一部のiPhoneアプリケーションデベロッパーの収益性が大幅に向上し、日本のiモード黎明期のように急速に事業を拡大する企業が現れると考えています。
従来、iPhoneアプリは、アプリケーションのダウンロード時に課金する「売り切り」モデルのみで、プロモーションが非常に難しいApp Storeでランキングに入るかどうかにすべてを賭けるという博打的な要素が大きくなり過ぎる傾向にありました。
多くの資金を投入している有力なiPhoneアプリケーションデベロッパーも、継続的にApp Storeでランキングに入れることに苦戦しており、安定的に収益を上げているとは言えない状況です。しかし、今後、アプリ内課金を活用することで安定的に大きな収益を上げるデベロッパーが出てくるでしょう。
例えばパンカクの場合、iPhone OS 3.0のリリースを受け、ゲーム対戦ネットワーク「パンカクネット」を作る計画を立てています。無料または安価なネットワーク対戦ゲームを継続的にリリースし、仮想通貨を用いた小額のアイテム・アバター課金や毎月のプレミア会費での安定的な収益化を狙います。「LightBike」の150万ユーザーを「パンカクネット」の初期ユーザーとして、3年で1000万ユーザーまで拡大させる見込みです。
今後、リリースされるアプリの傾向も変わっていくでしょう。従来はランキング入りを狙って話題性を重視するあまり、インパクトが強い一発ネタアプリが多く存在してきました。
アプリ内課金の登場により、ユーザーからの継続的な支持を集めるアプリのほうがデベロッパーの収益に直結するようになるため、多くのユーザーの需要を満たす健全なアプリが充実していくと見ています。
そして、長期間にわたってアプリが使われて、アクティブユーザーからのアプリ内課金がサポートやサーバの維持管理費に当てられるようになれば、今まで以上に充実した「おもてなし」をユーザーに還元できるはずです。
iモードで成功したビジネスモデルもiPhoneに応用できるようになると思います。iモードの月額課金モデルと異なり、アプリを立ち上げないと課金ができないなど不満がないわけではありませんが、全世界に対してiモードと同様のビジネスを展開できるというのは非常に魅力的でエキサイティングなことだと思います。
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