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松村太郎の「ケータイが語る、ミクロな魅力」 第74回

iモードブラウザ2.0は世界のケータイとの融合を進める?

2009年05月26日 12時00分更新

文● 松村太郎/慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

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日本独自のiモードを
いかにウェブ標準と融合させていくか

 さらに新バージョンではUnicodeをサポートし、ドコモが提供する絵文字入力環境である「i絵文字」もUnicodeでの絵文字の記述に対応した。絵文字とUnicodeの話と言えば、2008年11月にGoogleが公開したドキュメント「Proposal for Encoding Emoji Symbols」で、絵文字をUnicodeで定義する提案を、Googleが行なっているのだ。

絵文字の提案

絵文字をUnicodeで定義するための提案。日本の携帯3キャリア間でのやりとりももちろん考慮されている

 日本のケータイで絵文字が流通し始めて10年以上がたつが、ケータイ会社間で絵文字が変換されて極力表現が保持されるようになったのはここ数年の話である。日本国内では、お互いに絵文字の文字セットやテーブルを統一化しよう、という動きではなく、できるだけ伝わるように便宜を図ろう、という対応でここまで来ているのだ。

 一方Googleは、絵文字の標準化を進め、またGmailにも絵文字の機能を実装して、Gmailユーザー間だけでなく、日本のケータイとの間での絵文字のやりとりを可能にしている。またAppleはiPhoneで、ソフトバンクと互換性のある絵文字入力を「日本語のキーボード」として採用した。最近Gmailは、iPhoneに含まれている(ソフトバンクで使える)クールな絵文字を何文字か追加している。このことから、何が起きそうだろう。

 iPhoneは、現在日本のソフトバンクで利用するSMSとEメール(i)でしか有効にならなかった絵文字キーボードをどの言語でも使えるようにし、GoogleはGmailやそのほかのメールサービスUnicodeの絵文字テーブルをAndroidに持たせるだろう。こうして、絵文字をウェブ上で流通可能にする動きで、AppleとGoogle、iPhoneとAndroidが協力し合うことが予想できる。

 Googleのドキュメントでは、絵文字は日本ケータイのコミュニケーションで、幅広い年代が触れている文化だという点を指摘している。にもかかわらず、これの標準化を10年かけてもやってこなかった日本に対して、1年ほどで成果を出してしまいそうなGoogleとの間にあるのは、やはり「標準化」への意識の有無ではないだろうか。

 モバイル向けのブラウザでトップシェアを取っているのは、WebKitだ。世界で最も売れているノキアのケータイが採用しており、iPhoneやAndroidも、WebKitベースのブラウザが動いている。もしドコモが「iモードと世界のケータイを融合させていく」コンセプトをプラットフォームとして進めたければ、新しいiモードブラウザをWebKitで開発するくらい思い切ってもよかったのかもしれない。

 とはいえ、ケータイのブラウザの中でAjaxを活用したウェブアプリが動くようになる点は、ケータイにリーチしてこなかったウェブデザイナーや開発者にとって朗報であることは間違いないし、ウェブのトレンドやテクノロジーで、今までケータイになかったモノが一気に流れ込んでくると、いよいよガラパゴスケータイと呼ばれる時代も変わってくるのではないだろうか。

筆者紹介──松村太郎


ジャーナル・コラムニスト、クリエイティブ・プランナー、DJ。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。ライフスタイルとパーソナルメディア(ウェブ/モバイル)の関係性に付いて探求している。近著に「できるポケット+ iPhoto & iMovieで写真と動画を見る・遊ぶ・共有する本 iLife'08対応」(インプレスジャパン刊)。自身のブログはTAROSITE.NET


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