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世界企業パナソニック 90年目の決断 最終回

パナソニック株式会社 代表取締役社長 大坪文雄氏独占インタビュー

パナソニック――大坪社長が語る“今”とこれから

2009年03月04日 12時00分更新

文● 大河原克行

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衆知を集めた全員経営

――大坪社長は、自らの経営手法として「衆知を集めた全員経営」を掲げています。これはどの程度浸透したと見ていますか。

大坪氏

大坪  社名変更、ブランド統一をきっかけにし、社内の雰囲気は大きく変化しています。こうした経営環境下においても、攻めの姿勢を忘れずに、前向きに取り組んでいる社員が多い。日常の課題を前向きに捉えて、克服し、そこからイノベーションが生まれるという認識が社内に生まれつつある。また、ドメインとビジネスユニットを超えて、お互いに知恵を求めあい、意見を交換して、よりよい結果を求めようという動きが自然発生的に出ている。職能を超え、ドメインを越え、国を超えた知恵の交流が起こり、単なる事業の数字だけではなく、CSRの視点から、環境の視点から、安全の視点から、あらゆることに対して知恵を集めている。私は、社員のこうした活動を力強く思いますし、その成果に手応えを感じている。それをやってくれる人材が、パナソニックにはたくさんいるんだということを、自分自身が感じられるのはうれしいことです。この取り組みは、株主、従業員、取引先、地域社会といった世界中のステイクホルダーに対しても同じです。その点で見て、行動全般については、比較的理解が進んでいるのではないでしょうか。

 パナソニックは、創業以来、社会に貢献するための企業であり、自分たちの利益だけを追求する企業ではないということを言い続けてきました。すべてがイコールパートナーであり、一緒になって社会のために貢献しようということを発信しづつけている。 パナソニックに社名が変わり、情報発信がより積極化し、当社の考え方がより理解され、支持が深いものになりつつある。国内のパートナーだけでなく、海外のパートナーからも、従前以上に強い支持を得られていると感じます。

――「安全、安心」、そして、「環境」についても、大坪社長は重要な指針に掲げていますね。

大坪  パナソニックは、常に「安心、安全」を届ける企業でありたい。ナショナルFF式石油暖房機の問題に関しても、中村会長の社長時代から営々とした努力をし、最後の1台を見つけだすまで探し出すという基本的な考え方は、いまも受け継いでやっています。ナショナルFF式石油暖房機の問題以降、パナソニックという会社は、自分たちの存続をどこに求めているのか、ということを改めて考えています。安全、安心への取り組みが、企業の存続の原点になるんだということを、幹部、従業員が十分に意識している。安心、安全を具現化するための設計手法、品質管理、あるいはアフターマーケットへの対応、コールセンターでの対応に至るまで、ひとつの大きなチームとなって、活動のレベルをあげていく努力を進めていきます。

 一方、 環境活動 についても、重要な取り組みであることはいうまでもありません。パナソニックは、健全な事業活動基盤の確立を目指している。そのなかには、環境への取り組みも含まれます。企業の成長には、売り上げの成長と、利益(ROE)の成長がありますが、これだけではいけない。GP3計画における「成長」という言葉には、数字の成長だけでなく、従業員の成長、経営の質の向上も含まれる。ここに成長の意味があります。GP3計画では、CO2排出量の削減を、売り上げとROEに並ぶ、3つめの大きな柱としている。環境への取り組みも、成長戦略のひとつに位置づけ、世界を代表する環境先進企業になることを目指します。

――三洋電機の子会社化は、パナソニックの成長にどんな効果を発揮しますか。

大坪  三洋電機は、創業60年のモノづくりの歴史を持つ日本の電機産業界における貴重な財産。近い理念を持つ両社が協業していくことで、グローバルな競争力を一層強化することできるでしょう。 ポストGP3 やそれ以降の成長を見据え、グローバルエクセレンスを目指すなかでは、大きな成長を担うエンジンになります。三洋電機の経営理念と、当社の『企業は社会の公器である』という言葉は相通じる考え方であり、同じ地域に立地している会社であること、過半の社員が同じ地域から入社している人であることなどを考えると、会社として本質的なところでは、体質の差はないのではと感じています。パナソニックも大きな構造改革を経験し、三洋電機もそれに取り組んでいる。この点でも、共通の苦労をしている。個人的には、かなりの部分で似た会社だと思っています。

次ページ「愚公、山を移す」に続く

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