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世界企業パナソニック 90年目の決断 第13回

日本企業は世界でどう戦うべきか?

中国でのパナソニックの成長を下支えする中国生活研究センターとは

2008年12月24日 12時00分更新

文● 大河原克行

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成果を上げる中国生活研究センター(中国生活研究中心)

 パナソニックは、中期経営計画「GP3」において、BRICs+V(プラジル、ロシア、インド、中国およびベトナム)市場での増販を重点課題に掲げ、新興国におけるビジネスを加速しようとしている。

 前回の記事でも紹介したように、これら市場に向けて、新たにEM-WIN商品を開発。それぞれの地域特性に合致した商品づくりで成果を上げ始めている。

 EM-WIN商品開発に向けた最前線基地として、すでに成果をあげ始めているのが、中国・上海に設置されている中国生活研究センター(中国生活研究中心)だ。

中国生活研究センター(中国生活研究中心)

 同センターは、中国で生活する人たちに関する研究、調査を行ない、それを商品企画の開発に結びつけるのが役割となる。

 所長の三善徹氏以外の8人の研究員はすべて中国人。つまり、中国人の感性で、研究、調査を実施する体制となっているのだ。

 また、パナソニックの社内的事情から見れば、パナソニック、パナソニック電工、パナソニックエコシステムズの3社共用のセンターとなっている珍しいケースである点も見逃せない。この点でも、「ワン・パナソニック」としての先進的事例だといえる。

 同センターが設置されたのは、2005年4月。ホームアプライアンス技術本部の管轄のもと、松下電器(中国)有限公司の分公司として設立されたものの、センターそのものは、上海市内のパナソニック電工の上海分公司内に設置されている。

三善徹所長

中国生活研究センター 三善徹所長

 「日本の商品企画チームが数週間滞在し、市場を調査し、それをもとに商品企画を行なっても、市場に合致した商品を開発できるわけがない。中国市場に常駐し、中国人の感性と責任で市場調査を行ない、中国全土の地域差を理解し、そこから求められる中国に根ざした商品の開発につなげるのが中国生活研究センターの役割」と、同センター唯一の日本人である三善徹所長は語る。

 所員は、仮説を起案したのちに、デジカメや巻き尺などを持って、年間400件の家庭を訪問。さらに、年間20回140人を対象にしたグループインタビュー、年5回約800人を対象にした街頭インタビューにより、仮説の評価、絞り込みを行い、商品企画に生かす。これまでの日本の企業では考えられないような大規模な調査を行なっているのだ。

 ひとつの調査は、最低でも北京、上海、広州の3カ所で実施。大規模調査では、大連、廈門、成都、西安を加えた7カ所で調査を実施。内陸部を含め、中国の地域ごとの特性も提案に反映できるようにしている。

 さらに、商品化に向けての作業についても、実際の市場調査をもとにフォローを行なう体制を整えている。

 調査で得た情報は、データベース化して蓄積されていることで、日本からの問い合わせに対しても、大規模調査を背景に、迅速に回答することもできるという。

 「直接見る、直接聞くことで、変化の激しい中国消費者のニーズをダイレクトに吸収し、商品化に反映している。食器洗い乾燥機の商品企画では、中国の年間10万元以上の所得がある世帯で使用している食器の種類、数、大きさはどうか、電子レンジをシステムキッチンにビルトイン化したいニーズはどれぐらいかという情報も蓄積している。こうした調査をもとに、2007年度実績では、V商品候補やEM-WIN商品候補を中心に、約50の具体的商品提案を実施した」(三善所長)。

 先に触れたように、3つの会社の共通センターでもあることから、パソナニックの家電事業部門、パナソニック電工の理美容機器部門、パナソニックエコシステムズの環境技術研究部門にも、それぞれ商品提案を行なっている。

次ページ「中国市場に根差した商品開発」に続く

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