プロレーサーまでの道のり
自らをのんびり屋さんという新田氏が、スピードの速さを競う世界にデビューしたのは19歳のとき。今時の多くのF1ドライバーとは異なり、家族はレースの世界と全然関係がなかったという。ただ、ミニカーから始まって、子供の頃から乗り物や運転が好きだった。そこでレーサーを志すも「超マイナス思考なので、最初は俺にできるはずがないと思った」と語る。
新田 とにかく運転することが好きなので1回はやってみないと、なんか落ち着かない。2年やってダメだったらスパッとやめよう、と足を踏み入れたんですよ。
桜子 2年の理由は?
新田 僕、大学生だったんです。だからお金もかかるし。
桜子 大学に行ってたんですか!?
新田 ハハハ。
桜子 だって、新田さんのプロフィールにはなかった。
新田 僕、あんまり(情報を)出さないんですよ。
学業とレーサーの両立の苦労を尋ねたら、学校にはほとんど行かず、富士スピードウェイに毎日通っている状態だったという。
桜子 親御さんは泣きませんでしたか?
新田 早く辞めなさいと言い続けられていましたね。
桜子 でも、デビュー後2戦目に初優勝しましたね、すごいじゃないですか! 感激ですね!
新田 ……あんまり、感激しなかった。
桜子 ええっ(笑)!? 2年というくくりの中で1つの結果を出せたのにうれしくなかったんですか?
新田 優勝したことはうれしいんだけど……うーん。
サーキットに来る大勢の先輩を見るにつれ、上には上がいることを知った。“こんなところで勝ってて喜んでいるんじゃないよ”と先輩からも言われ、確かにそのとおりだと思った。自分は先輩たちを破らないと認められないし、まずプロになるために上るべき階段を一段進んだだけのことと語った。
新田 今思えば優勝さえしなければ、とっくに(レーサーを)辞めて別のことをやってて、もっと幸せだったかもしれないのに……。
一瞬、その場に静かな風が吹いた。私と傍らにいた担当編集は固まってしまった。
桜子 なんという爆弾発言をするんですか!(笑)。
次ページ「レーサーという夢を持ち続けて」に続く
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