心霊を見る目が、怖さから悲しさに変化
── 路地裏の心霊スポットレポートを読むと、読者の恐怖心を煽る方向ではなく、現場で起きた事件や事故などの背景を解説することに重点を置いている気がします。この体裁は意図的にやっているんですか。
Tokyo-Power おっしゃるとおりです。サイトを立ち上げる前は「オバケを見たい」「心霊写真を撮りたい」という気持ちでスポットに行っていました。ですが、読者に読んでもらうことを考えたら、ただ「行って怖かった」では終われません。そこで情報に厚みを持たせようとしたら、おのずと事前調査することが増えたわけです。
心霊スポットについて色々調べていくと、そこで起こった事件や事故に触れることになります。その知識を持って現場に行くと哀しい気持ちになるじゃないですか。そこで自分の感情を交えて「知っていること」と「感じたこと」をそのまま書こうという気持ちになったんです。こうなるともう、恐怖という感情から離れていきますよね。
例えば、ある心霊スポットで人を恨んでいる霊がいるとしても、その背景には実は悲しい事件があったんだとか。そういった部分を伝えていきたいというのがありますね。ただ、悲しい事実を前面に出すことで「偽善者」と言われるのは嫌なんですけど(笑)
── そこが上手いと思いました。「悲しかった、だからお前らも同情しろ」と自分の感情を押し付けているわけでなく、「僕は悲しかった」と主観は主観としてまとめているから、読んでいてうるささがないんです。
Tokyo-Power ありがとうございます。同じコンセプトで、霊の存在も押しつけないようにしています。そもそも霊というのも、信じている人もそうじゃない人もいる微妙な存在じゃないですか。僕は「霊はいる」と想定してやっているわけですが、だからといって「霊は存在するんだから、読者もそう信じてよ」なんて書けません。
── 実際のところ僕も霊を信じていませんが、抵抗なく読めるのはそこなんですよね。でも、そういった意味でクレームのお便りも多いんじゃないですか。
Tokyo-Power 最近は減っていますけど、ないわけではないですね。特に「ウソをつくな」といったお便りが多いです。要は「取り上げた場所がウソの心霊スポットだから、それを載せているのは偽り」というわけなんです。でも、そうおっしゃる人も基本的には誰かの体験に基づいて主張しているわけですよね。僕は僕の感じたことを書いているだけだから、あまり気にしません。
……というのは嘘です、すいません。毎回(クレームをもらうと)結構凹みます(笑) 感情に素直なので、指摘されるとどっぷり落ち込むんですよ。
── それでも8年以上サイトを続けているというのは、どんな気持ちが支えになっているのですか。
Tokyo-Power 怖いもの見たさから始めたサイトですが、心霊スポットが心霊スポットになった背景を知ると、行かなきゃいけないという気持ちになってくるんです。
別に僕が行かなくてもいいんですが、皆がそういうスポットを紹介している中で「自分の言葉でその場所を紹介しなきゃな」という気持ちがあるんですよ。ひとつの心霊スポットについて色々な解釈とか色々な表現の仕方があっていいはずだと。それがモチベーションになっていますね。
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