え~!? ボランティア? 面倒だ……とならないための術
CSRは、要は企業が社員や株主、取り引き先、販売先、地域社会に対して負っている責任を指している。その範囲は法令遵守から人権配慮、環境保護など多岐にわたる。企業にとって、CSRと言われても、実施するにあたり障壁はさまざまにあるだろう。例えば、社員にCSR活動を勧めるも、「忙しい」を理由に社員の動きが鈍い場合などだ。
SaaS(Software as a Service)型のビジネスアプリケーションを提供するセールスフォース・ドットコムは、独自に「1%モデル」を掲げ、「就業時間の1%を社会貢献活動にあてる」「製品の1%を非営利団体に無償提供する」「株式の1%を非営利団体への助成金にあてる」「環境との一体化を目指して環境への取り組みをする」といったことを、全社的に取り組んでいる。つまり、社員が無理なく活動ができる体制を会社がきちんと整備しているのだ。これにより、全社員の参加が達成しているという。
背広姿でボランティア(笑)
実際の活動内容もユニークだ。同社が定期的に行なっている活動の1つに NPO法人子供地球基金のボランティアがある。毎週木曜日に社員が活動の手伝いをしていて、取材したこの日(6月12日)には社員の7名が参加した。
具体的な作業内容は、子供地球基金の活動によって世界中から集められた子供たちの絵の管理で、絵の裏に書かれている絵のタイトル、氏名、年齢、国籍を日本語に翻訳するという作業だ。比較的語学には抵抗のない社員達は、自分の特技を活かせることもあり、最初は緊張の面持ちであったが、普段の業務とは一味違う状況を楽しんでいる様子であった。
セールスフォース・ドットコムが考えるCSRの“想像以上の”メリット
前述の活動以外に、1年に2回、全社員が集中してボランティアをする「ボランティアウィーク」や、環境について考える「アースウィーク」を設けているセールスフォース・ドットコム(http://www.salesforcefoundation.org/APAC)。社会貢献専任ポジションの遠藤理恵さんは、自社のCSRを行なうメリットを次のように語った。
「近年、特に20代~30代を中心に、社会貢献に対する意識が高まっているように感じます。企業を選ぶ際、事業内容はもちろん、コミュニティ支援ができる環境かどうかも判断基準になる場合があるようです。1%モデルの実行によって、興味や自社の専門性を生かしてコミュニティを支援することが、結果として優秀な人材の獲得、離職率の低下につながっています」
また、CSRにおける共同作業が、社内のチームワークにも一役買っているという。
「これらの活動は、各社員はボランティアを自分で選び、自分の都合に合うタイミングでやっています。仕事で接点のない社員とコミュニケーションをとる機会にもなったという点は思わぬ効果でした。ボランティアを通して、同僚の新たな一面を見、お互いをより深く知ることができる。それがチームワークの向上にもつながっています」(遠藤さん)
- ■取材協力
セールスフォース・ドットコム
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