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SAPがサステナビリティ向上・公開ツールをリリース

財務諸表にCO2排出量記載が義務づけられる?

2010年02月04日 06時00分更新

文● 吉川大郎/TECH.ASCII.jp

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鳩山首相の掲げた25%削減策を実行に移す場合には、財務諸表へのCO2排出量記載義務化が行なわれる可能性もある……。そんな話が飛び出したのが、SAPジャパンのサステナビリティサポートソリューション「SAP BusinessObjects Sustainability Performance Management」の発表会だ。

Sustainablilty Map

SAPでは、サステナビリティ支援のためのソリューションを体系づけた「Sustainablilty Map」を作成している。今回発表されたのは、「サステナビリティパフォーマンス管理」の部分に該当する。単に法改正や法規制に対応した製品を出すのではなく、SAPとしてのサステナビリティ全体戦略を基本にした、大きな枠組みの中での製品拡充を図る

 サステナビリティとは、文字通り持続可能性のこと。たとえばCO2の削減をはじめとした地球環境への取り組みなどが、社会のサステナビリティを高めることとなる。近年では企業がCSRの一環としてサステナビリティの向上に取り組んでおり、欧米では企業の評価軸のひとつになっているという。SAPは、サステナビリティに対して、その模範企業として行動するとともに、サステナビリティ関連製品を開発することで、サステナビリティ支援を行なう。

脇阪順雄氏

SAPジャパン バイスプレジデント インダストリー戦略本部 兼 バリューエンジニアリング本部 本部長 脇阪順雄氏

 SAPジャパン バイスプレジデント インダストリー戦略本部 兼 バリューエンジニアリング本部 本部長の脇阪順雄氏はSAPのサステナビリティへの取り組みを紹介したあと、サステナビリティの市場について言及した。

 欧米では投資対象として、またビジネスパートナーとして企業を推し量る評価軸になるサステナビリティは、会計のような客観的な指標が必要だ。そのため、サステナビリティのグローバル標準として、UNEP(国際環境計画)の公認団体であるGRI(グローバル・リポーティング・イニシアチブ)が存在している。世界では1226社、国内では79社がGRI準拠のサステナビリティ報告書を発行しており、「A+」、「A」、「B+」、「B」、「C+」、「C」といった形で“サステナビリティ・パフォーマンス”の格付けを行なっている。AはGRIが設定した項目すべてを満たしているという意味で、“+”の有無は、自己評価か外部保証を受けたかの違いだ。ちなみにSAPはB+で、今後はA+を狙う。

 サステナビリティ・パフォーマンス「A」もしくは「A+」を取得している企業の数を国別にランキングすると、1位はスペインで2位は韓国、3位はブラジルとなっているのだが、日本は32位。A+が1社だけという状況だ。これは、しばしば公害大国と報じられる中国よりも低い順位である。

サステナビリティのマーケット

サステナビリティのマーケット

 しかしそれは、日本の企業が低炭素化をはじめとした環境への取り組みを全くしていないということを表わさない。むしろ日本の工場は環境対策を進めきっており、そのために鳩山首相の表明した25%削減策への対応が難しいといった報道がなされたことも、記憶に新しい。

 つまり、日本企業はサステナビリティ・パフォーマンスの“開示”が遅れているというのが現状で、今後グローバル社会の中で正しく評価されるためにはCSRレポートなどによってサステナビリティ・パフォーマンスを開示していく必要があると脇阪氏は主張する。

 そのためのツールが、SAP BusinessObjects Sustainability Performance Managementである。同製品は、

  1. サステナビリティ戦略の社内コミュニケーションと戦略遂行の管理
  2. 信頼できるデータや情報に基づいた開示
  3. 事務局と現場のコミュニケーションを一元化し、データ収集を効率化

と、大きく分けると以上3つの機能を有している。

 1に関しては、サスティナビリティ目標を戦略マップ上で可視化し、KPIを設定することで目標と活動をリンクさせるというものだ。単にお題目を掲げて絵に描いた餅にするのではなく、実際に行動をしないとアラートを発する仕組み作りができる。なお、KPIにはGRIフレームワークに準拠したものが100以上プリインストールされている。

サステナビリティ目標をマップにして可視化し(左)、続いてKPIを設定して、社員レベルにブレークダウンする(左)。さらに、活動の進捗や改善活動実施のために、KPIの予実確認をして目標未達の活動を特定、さらに“誰が”活動をしていないのかを突き止めて活動の改善を図る

 「CSRは年1回のお祭りになってしまっている」と語るのはSAPジャパン ビジネスユーザー&プラットフォーム事業本部 GRC/EPM事業開発本部 GRCグループマネージャーの中田淳氏。つまり、年に1度CSR報告書を作るために各所から資料を持ち寄って、てんやわんやの大騒ぎになるということだ。SAP BusinessObjects Sustainability Performance Managementであれば、後述するがデータを各システムから自動的に収集し、リアルタイムに状況を確認できる。

 2の、外部への情報開示については、GRIのフレームワークに準拠したコンテンツを作成できるほか、サステナビリティ指標の計算や監査証跡の記録などを実行可能だ。

 3のデータ収集については、SAPの各製品をはじめ、SAP以外のシステムからもデータを収集して分析を行なう。さらにリクエストフォームやアンケートフォームの作成機能も有しているため、たとえば社員の通勤手段を収集してCO2削減の指標に照らし合わせるといった行動も取れる。

 「日本のお客様は、自分たちが損をしていると感づいている」と語る脇阪氏は、日本の企業もサステナビリティに関して敏感になってきている現状を語る。「環境というジャンルは幅が広い。工場の環境対策はそのまま“カイゼン”という形で実行されてきたわけだが、ではオフィス部分はどうか? 照明をLEDにしたらどうなのか? たとえ工場であっても、もっと絞れる部分があるはずで、ERPと同じくらい領域が広いと考えている」と記者団に述べている。

 SAP BusinessObjects Sustainability Performance Managementは、サステナビリティにコミットしている企業を中心にビジネスを開始し、そのバリューチェーンに乗せていくことで拡大を図る。当初の目標は3年間で40社の採用だ。

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