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ASCII.jpヘッドホン研究所 第11回

音質?静寂さ?使い心地?

対決!ノイズキャンセリングイヤホン 4製品

2008年07月11日 19時30分更新

文● 高橋 敦

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Audio Check!

 音質は連載で常用している再生環境(第3世代iPod nano)に接続して試聴。試聴アルバムは上原ひろみ「Beyond Standard」とJacintha「Autumn Leaves」。


ATH-ANC3の装着状態

ATH-ANC3の装着状態

ATH-ANC3

 まずATH-ANC3は、上原ひろみの曲のエレクトリックベースの音色が分厚く、ベースラインに重量感がある。輪郭を崩して音程を曖昧にさせることもない。

 シンバルやピアノの右手など高音域は、同社のノイズキャンセルなし上位機種と比べると少し荒く感じる。スネアのアタックはバシッと決まり抜けがいい。バランスとしては低域寄りの印象。高域が出ていないということではなく、低域が強いのだ。

 Jacinthaのウッドベースのラインも、やはり重く、輪郭は明瞭。ハイテンポの曲の細かなリズムワークも明確に伝える。ボーカルはやや細身ではあるが、すっとした佇まいで力強さもある。

 音場全体の見通しのよさは、同社のノイズキャンセルなし上級機種には及ばないが、今回取り上げた製品の中では一歩抜け出る。


HP-NCX77の装着状態

HP-NCX77の装着状態

HP-NCX77

 上原ひろみのベースの輪郭は明確だが、重量感は他機種にやや及ばない。しかし低音の量感に関しては、イヤーピースのフィッティング次第で大きく変わる。特に低反発イヤーピース(1サイズのみ付属)が自分の耳にフィットする方なら、低音の量感は大きく改善されるかもしれない。ギターの音色は厚みよりも軽快さを強める。

 Jacinthaのハイテンポの曲では、ウッドベースの低音域の速いフレーズのひとつひとつの音を立たせ切れない場面もある。スネアの抜け方、シンバルの切れ方は少し抑え気味。リズムをバシバシ決めるというよりは、少し落ち着いた音調にする。主役であるボーカルを引き立たせるまとめ方と言えるかもしれない。


RP-HC55の装着状態

RP-HC55の装着状態

RP-HC55

 エレクトリックベースは音域的に下まで伸びているわけではないが、出ている範囲の音に厚みがあり、量感を感じさせる。しかしATH-ANC3ほどは、低音を強調しない。シンバルは明るいがシャープ過ぎない。

 Jacinthaのハイテンポの曲になると、その低く速いベースラインを完全には追い切れない瞬間も出てくる。ボーカルはサ行や息継ぎなど耳障りになり得る部分をあまり目立たせないようにしつつ、肉声感、生々しさは保つ。

 高域、低域ともに無理に伸ばした感じがせず、耳に痛い成分を適度に控えて聴きやすくしてあるなど、巧妙なチューニングを感じさせる仕上がりだ。


HP-NLF11Kの装着状態

HP-NLF11Kの装着状態

HP-NLF11K

 上原ひろみのエレクトリックベースの重量感は、ATH-ANC3には及ばないが十分。こちらのバランスを気に入る人もいるだろう。輪郭のゴリッとした感触は好ましい。ギターが少し前に出てくる感じもあり、音色的にもディストーションギターの成分がうまく引き出されており、好感触だ。

 Jacinthaでもベースラインの重さは十分に確保。ただし、音程感が少しぼやける。細かなリズムの分離も今ひとつで、解像度という面で評価するならやや劣る。

 全体的にラフさや生地の粗さのようなものを感じるが、そのざっくりとした手応えは悪くない。上原ひろみの中でもロック色の強い曲との相性は良好だった。


総評

 ノイズキャンセル性能は、今回の検証ではATH-ANC3とRP-HC55に優位を感じた。宣伝文句に偽りなしといったところであろうか。

 基本的な音質については、どの製品もエントリークラスのカナル型イヤホンと同等以上だ。実際の利用環境では、そこにノイズキャンセル効果での聴きやすさが加わるのだから、価格に見合った、納得できる性能には達するだろう。

 製品数が増え、音質傾向や使い勝手の選択肢が広がったことは単純に喜ばしい。自分に合う製品を見つけ出してほしい。

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