日本で成功する余地はあるか?
── 正直、日本の企業からは、この種の試聴サービスがあまり出てきない気がしますが……。
津田 日本では、レコード会社の方針もあって試聴サービスの提供が難しいんです。
ソニー・ミュージックエンターテインメント(SME)など、大手のレコード会社は、自社以外のサイトに音源を提供するのをとても嫌がる傾向にあります。自社のサイト内でストリーミングするにしても、フルではなく30秒以内と限定的になってしまう。
レコード会社にプロモーション効果が高いと働きかけても、「それは規定にないから」という一点張りで、取り付く島もない。だからSME系の公式な楽曲は、MySpaceではほとんど見つからなかったりもします。
── なんとか状況を変えられないでしょうかね?
津田 Last.fmのようなサービスを目指すために、今レコード会社を回って、自社サービス内で音楽の無料視聴を実現しようとしているネット企業もあると聞きました。
ただ、実際にうまくいくかどうかは微妙ですね。再生順がランダムなネットラジオサービスならYahoo!サウンドステーションのような前例もありますし、可能性はゼロではないでしょうが、オンデマンドで楽曲が聴けるとなるとかなりハードルが高いだろうなという気はします。
ネットの無料視聴サービスは、今まで知らなかったアーティストを自分で探して、その曲をすぐに聴けるという点で、音楽ファンにとって大きな存在なんですよね。ネットなら、視聴ページからiTunes StoreやAmazon.co.jpに飛ばせるので、購買にも結びつきやすい。
本当は早く日本でもLast.fmのようなサービスが実現することを大きく期待しているんですけど……。
筆者紹介──津田大介
インターネットやビジネス誌を中心に、幅広いジャンルの記事を執筆するジャーナリスト。音楽配信、ファイル交換ソフト、 CCCDなどのデジタル著作権問題などに造詣が深い。「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」や「インターネット先進ユーザーの会」(MiAU)といった団体の発起人としても知られる。近著に、小寺信良氏との共著 で「CONTENT'S FUTURE」。自身のウェブサイトは「音楽配信メモ。
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