AMDが先日リリースした一般ユーザー向けクアッドコアCPU「Phenom」は、動作クロックの一番低い「Phenom 9500」から「同9600」と順次発売された。普通こういう“分かっている人向け”の製品はハイエンドから出すだろう、と考える人にとってはちょっと残念な出だしだったが、AMDは来年第1四半期に上位版の「Phenom 9700」および「同9900」の市場投入を明言している。今回は最上位版である「Phenom 9900」のエンジニアリングサンプル(以下、ES)が入手できたので、ベンチマークを通じて来年登場するハイエンドPhenomの実力をチェックしてみたい。
動作クロックは2.6GHzに
今回入手できた「Phenom 9900」は、2次・3次キャッシュの量は従来製品から据置きのまま、動作クロックが2.6GHzに引き上げられたものだ。コア電圧は「9600」の1.23Vから1.28Vへ若干の引き上げが行なわれている。そのせいかTDPは140Wに到達してしまったが、これは後ほど消費電力と発熱の検証で見ていくことにしよう。
Phenom 9900 | Phenom 9700 | Phenom 9600 | Phenom 9500 | |
---|---|---|---|---|
動作クロック | 2.6GHz | 2.4GHz | 2.3GHz | 2.2GHz |
コア数 | 4 | 4 | 4 | 4 |
2次キャッシュ | 512KBx4 | 512KBx4 | 512KBx4 | 512KBx4 |
3次キャッシュ | 2MB共有 | 2MB共有 | 2MB共有 | 2MB共有 |
HyperTransport3.0 | 4GHz | 4GHz | 3.6GHz | 3.6GHz |
TDP | 140W | 125W | 95W | 95W |
このままだと単なる公式オーバークロック版のようだが、CPUインタフェースとなるHyperTransport3.0(以下、HT3.0)の動作クロックは従来の3.6GHzから4GHzに引き上げられている点にも注目したい。メモリから多量のデータをグラフィックボードへ転送するようなシチュエーションでの性能向上が期待できそうだ。
ステッピングをCPU-Zで確認したところ、現状の9600と同じB2ステッピング(TLB周りのエラッタあり)だった。もっとも実際の製品がリリースされる頃にはエラッタ問題を解決したB3ステッピングが採用されることが予想されるため、エラッタの有無は気にしなくても済みそうだ。
テスト環境は?
それでは早速ベンチマークを通じて性能の評価を行なってみたい。今回はテストの時間も限られていたため、「9900」と「9600」で比較することにした。テストマシンの構成は以下の通りだ。マザーは評価キットに同梱されていたものを利用している。エラッタ対策済みのBIOS入り、とのことだ。
テスト環境を調えるにあたって困ったのはメモリーだ。PhenomはDDR2-1066に対応しているのが売りの1つだが、12月中旬の時点でJEDEC準拠のDDR2-1066メモリーは存在しない。評価キット内のメモには「4GHzのHT3.0を評価する場合はJEDEC準拠のDDR2-1066メモリーを使うように」(意訳)とあったが、ないものはないのだ。
そこで今回はTranscendのDDR2-1066メモリを使い、BIOS上でメモリクロックを手動設定した状態でDDR2-1066に設定した状態と、DDR2-800に設定した2パターンでテストを行なった。なお、メモリーのパラメーターはDDR2-800が「5-5-5-18」、DDR2-1066が「5-6-6-15」である。
さらに前述のHT3.0のクロック上昇分の性能比較も行なうため、「9900」にBIOS上でHT3.0を1.8GHz(=3.6GHz)に設定した条件も追加している。
ちなみに、予備検証で「9900」の発熱が高めであることが判明(後述)したため、テストは全てケース側面から送風機で風を当て、CPUクーラーを強制的に冷却している。
テスト環境 |
---|
CPU:AMD「AMD Phenom 9900」(2.6GHz) |
マザーボード:ASUSTeK M3A32-MVP Deluxe(AMD 790FX) |
メモリ:Transcend TX1066QLJ-2GK(DDR2 1066 1GBx2) |
ビデオカード:GeForce 8800GTX |
HDD:Seagate「ST3500630AS」(500GB SerialATA) |
光学ドライブ:DVD-ROM |
電源:Seasonic SS-600HM |
OS:Windows Vista Ultimate |
グラフィックドライバ:ForceWare 169.92 |
それでは次ページ以降のベンチマークテストで、その秘めたるパフォーマンスを見ていこう。
(次ページへ続く)
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