大連のFab建設が与えるインパクト
中国でのIDF開催と前後する形で、インテルの工場(Fab)を中国の大連に建設するという話も発表になった。
さかのぼること1996年に上海に、2003年に西部大開発の中心的都市の成都にパッケージング工場を建設しており、それら工場の運営は今回の大連のFab建設のためのテスト運営的なものもあったことを中国メディアは報じている。この工場建設の発表とIDFの開催がほぼ同時期に行なわれたインパクトは大きく、消費者に訴えるものもあるだろう。
大連でのFab建設には「政治的な要素が強い」気がしてならない。中国ではもうけの少ない“世界の工場”という立場を脱却しようと躍起になっている。最新技術を開発し、特許などをライセンスする立場になろうとしているのである。
IT関連でも国家的プロジェクトがいくつもあり、例えば3GのTD-SCDMA、次世代光ディスクのEVD、無線LANのセキュリティ規格のWAPI、RISC CPUの龍芯、鳳芯などがある。
中国政府の思惑、インテルの思惑
WAPIとIEEE 802.11iはライバル関係にある。インテルはIEEE 802.11iをサポートし、WAPIを採用していないが、2008年には北京五輪、2010年には上海万博が控えており、中国の顔色次第では五輪会場や万博会場などのインフラにはIEEE 802.11iを採用しないことだってありうるだろう。
実際、五輪会場のネットインフラのひとつとしてWAPIを導入するという話は中国メディアから出ていた。ところが、Fab建設決定後の先週末に、北京五輪会場では150ヵ所のWiMAXのアクセスポイントを建設することが発表された。Fab建設が決まったから、インテルが推すWiMAXのインフラ敷設も決まった、と断定できないが、それにしてもタイミングのいい発表だと思う。
中国メディアは「大連のFabにより、中国の半導体産業の技術は底上げされるだろう」と報じている。実際、現在性能が伸び悩んでいる中国独自CPUの龍芯にしても、米インテル社のCTO(技術最高責任者)、Justin Rattner氏がIDFで来中した際に、龍芯の担当者と会って、龍芯のメニイコア(Many-core)化など、龍芯のさまざまな問題について話し合い、アドバイスする予定があることを明らかにしている。
いずれにしろ、現在インテルにとって中国は軽視できない状況にある。それどころか、中国とは切っても切れない状況にあるのは確かなようだ。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。