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小島寛明の「規制とテクノロジー」 第33回

N国、れいわ、山田太郎氏が票を集めた「ネット選挙戦」

2019年07月29日 09時00分更新

文● 小島寛明

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 21日に投開票された参院選は、選挙区の投票率が48.80%と5割を切るなど盛り上がらなかった。しかし、ネットを使った選挙としては、いくつかの注目すべき点があった。

 とくに、1議席を獲得した「NHKから国民を守る党」(N国)と2議席を確保した「れいわ新選組」(れいわ)は、TwitterやYouTubeで選挙戦を展開した。

 新しい政党は、既成政党と比較して、資金規模や運動員の数では圧倒的な不利がある。しかし、ネットで特定の層に響く主張を届ければ、短期間で議席確保も可能――。そんな新しい流れを実感させる選挙戦だった。

●YouTubeを活用したN国党

 与野党を問わず、選挙の実務に携わる関係者たちから「できることのほうが少ない」との愚痴も聞こえてくるのが、日本の公職選挙法(公選法)だ。

 6年前の2013年4月、公選法の改正でインターネットを使った選挙運動が解禁された。この改正で、ウェブサイトやSNS、ネット動画などを使って選挙戦が展開できるようになった。

 党の公式サイトによれば、N国は、NHK職員だった立花孝志代表が立ち上げた。党規約の内容から、2013年から活動していると読み取れる。

 立花氏が主に活動を展開してきたのは、YouTubeだ。YouTube上のチャンネルは19万人以上が登録していて、立花氏本人が出演する動画は、ほとんどがNHKを批判する内容だ。

 選挙戦で立花氏が展開した主張は「NHKをぶっ壊す!」だった。NHKをスクランブル化して、受信料を支払っている人だけが視聴できるようにするというのが、主要政策だ。

 4月の統一地方選では、26人が市町村議に当選している。

 NHKのまとめによれば、N国は参院選の比例代表で、約98万票を獲得。立花氏が議席を得ることになった。近年、凋落が著しい社民党の得票が約104万票だったことを考えれば、既存の政党に迫る支持を得たことがわかる。

●Twitterを埋めたれいわ新撰組

 2議席を得たれいわは、俳優から政治家になった山本太郎氏が立ち上げた。政策の柱に掲げたのは、消費税の廃止だった。

 れいわは、Twitterを積極的に活用した選挙戦を展開した。

 同党は、Twitterのトレンド世界一を目指すとして、「Twitterを埋めつくせ!!」とのキャンペーンを繰り広げた。支持者らが、れいわや山本太郎氏に関連するツイートやリツイートを繰り返す手法だ。

 れいわは、山本氏が4月に立ち上げたばかりで、候補者の擁立も公示の直前だったが、急速に支持を広げ、約228万票を得た。

●ネット民に響く主張した山田太郎

 ネットの使い方については、自民党もノウハウを蓄積しているようだ。同党の山田太郎氏は、ネットを中心に選挙戦を展開した。

 主張も、コスプレ、同人誌などを著作権法で合法化するなど、ネット民に響くものが多い。

 結果、山田氏は自民党の比例候補の中でも2番目にあたる約53万票を得た。

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